先月27日、現代自動車・起亜の南陽技術研究所の「バッテリー分析室」では、研究員たちが密閉された空間でバッテリーセルを注意深く解体していた。電気自動車(EV)の核であるバッテリーの中身があらわになる瞬間だ。解体されたバッテリーセルから採取された試料は、ただちに精密解析がなされた。材質と化学構造を調べるためだ。水分と酸素に敏感なバッテリーの特性上、過程は各段階で慎重に進められた。温度と湿度が一定のドライルームで分析が進められ、試料を切断する際ににはグローブボックスを利用した。南陽技術研究所の材料分析チーム・パート長のチョン・イドゥン氏は「2023年に研究所で初めてバッテリーセル解体の専用空間を構築した」と述べた。
現代自動車グループは、バッテリー研究に力を入れている。これまではメーカーから納品されたバッテリーを搭載するだけだったが、ついに、研究・開発に乗りだしたのだ。自社のEVに最適化されたバッテリーを作り、長期的には次世代のバッテリーも自社で生産するという戦略だ。
現代自動車グループがバッテリーに関心を向けるのは、バッテリーがEVの価格と性能を左右するためだ。EVの価格の30~40%はバッテリーが占めており、最大走行距離などもバッテリーの技術にかかっている。特に、低価格のEVでクロ―バル市場を掌握している中国をけん制するためには、バッテリーが重要だ。中国のBYDは、バッテリーを自社製造してからEVを製造する垂直系列化によって、価格競争力を確保している。
先週訪問した南陽技術研究所では、EVのバッテリーに対する性能、耐久、安定性の評価がなされていた。現代・起亜のEVに適しているかどうか品質を点検する。バッテリーは「セル解体室→前処理室→メイン分析室」などの順に移動した。セルとは陽極、陰極、分離膜、電解液を四角形のアルミニウムケースに入れて作ったバッテリーのユニットだ。このセルを解体し試料を採取して分析を進める。南陽技術研究所は1995年に建てられた総合技術研究所で、現在はEVの中心的な研究基地の役割を果たしている。
さらに一歩進んで、次世代バッテリーについての研究も進めている。現代自動車グループ側はこの日、「南陽技術研究所では、自社で研究している次世代バッテリーに用いられる新規素材に関する分析もなされている」と説明した。現代自動車グループは、次世代バッテリーである「全固体バッテリー」を開発した後、それを搭載したEVを2030年から本格的に量産するという目標を掲げている。全個体バッテリーは火災の危険性が少なく走行距離が長いため、「夢のバッテリー」と呼ばれている。同グループは昨年、今後10年間にバッテリー分野に9兆5000億ウォン(約1兆円)を投資する計画を明らかにしている。
バッテリーの研究・開発には、他のグローバル完成車企業なども相次いで参入している。ドイツのフォルクスワーゲンは、バッテリー生産の子会社である「PowerCo」を設立した。日本のトヨタや米国のGMやフォードなども、2025~2028年を目標にバッテリーの開発を推進している。
現代自動車グループ側は「バッテリーの素材技術を集中的に研究しているのは、次世代バッテリーの開発の出発点であるためだ」として、「EVのイノベーションを先導するためには、素材単位の研究が必要だ」と明らかにした。