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原油価格の暴落にドル高…「同時多発的な景気低迷」目前

登録:2022-07-07 03:09 修正:2022-07-07 08:16
世界の金融、通貨、商品市場「景気低迷」を反映 
WTI、8.2%の大幅下落の1バレル=99.50ドルで取り引き終え 
米国債市場、長・短期金利逆転で「景気低迷」に警鐘 
「安全なのはドルのみ」商品市場と投資家を支配 
ドル相場1306.3ウォン…KOSPIは2300下回る
6日、対ドルウォン相場が前日終値より6.0ウォン安い1306.3ウォンで取引を終えた中、同日午前、ソウル中区明洞のある両替所にドル相場などが表示された案内板が置かれている/聯合ニュース

 国際原材料市場では国際原油価格、金属や穀物の価格が暴落し、外国為替市場では安全資産であるドルが超強気を維持していることで、ユーロの価値がここ20年の最低値にまで下落した。

 金融市場では、景気低迷の兆候といわれる米国債の長・短期金利の逆転現象まで起きている。米国、ユーロ圏、韓国、中国など世界経済の随所で今年上半期を席巻した「インフレ」局面が、今や下半期の始まる7月に入るやいなや、一瞬にして「景気後退および低迷」へと突入するのではないかとの懸念へと急速に転じている。全世界の金融、通貨、商品市場に同時多発的に「景気低迷」の懸念が広がっていることで、6日の韓国の金融市場ではドル相場が前日より6.0ウォン上昇の1ドル=1306.3ウォンで取り引きを終え、KOSIP(韓国総合株価指数)は1年8カ月ぶりに2300を下回った(2292.01)。

 5日(現地時間)の米ニューヨーク商品取引所においてウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI、8月引き渡し分)は前営業日より8.2%(8.93ドル)下落の1バレル=99.50ドルで取り引きを終えた。WTIが100ドルを下回ったのは5月11日以来。同日のロンドン先物取引所において北海ブレント原油(9月先物)も前営業日に比べて9.5%(10.73ドル)下落の102.77ドルで取り引きを終えた。突発的な原油供給ショックのニュースはなかっただけに、世界経済の収縮に対する懸念が原油市場を直撃したと分析される。この日の大幅な原油価格の下落を、グローバルなインフレの手綱が徐々に引き締められるだろうという「良いシグナル」だと受け止める経済アナリストの論評は見当たらない。むしろ、グローバルな景気低迷が目前に迫っていることを示すシグナルとして受け止めている。

 原油価格のほかにも、産業用の金属や金などのその他の国際原材料価格も同日、軒並み暴落した。産業生産全般に使われるため、銅と共に「景気の風向計」と呼ばれるニッケル、アルミニウム、スズの3カ月先物価格は、同日のロンドン金属取引所(LME)で直前の最高値に比べ35~50%下落した。「ウォール・ストリート・ジャーナル」は同日「コバルトなどの金属をはじめとする各種原材料と、小麦やトウモロコシなどの穀物価格が軒並み4%以上の急落を示した」と報道した。銅価格はすでに先月から急落しており、現在はトン当たり8000ドルを割り込んでいる。8月引き渡し分の金の価格は前取引日より2.1%(37.60ドル)下落の1オンス=1763.90ドルで取り引きを終え、終値は今年の最安値を記録した。このようなあらゆる原材料価格の急落は、金融市場にとどまらず、グローバル実体経済が急速に萎縮しつつあることで、「景気低迷」の恐怖が強くなっていることを劇的に示している。各国の経済当局が近く発表することになる6月および上半期の諸経済指標が消費、雇用、生産、投資などの経済活動全般にわたる景気後退のシグナルを発信するだろうと市場は予想している。

 米国債市場で長・短期金利が逆転したことも、実物部門の景気低迷に警鐘を鳴らすものだ。同日、米国短期国債2年物の金利は一時年率2.792%、長期10年物は年率2.789%を記録した。通常、債権金利は満期までが長い長期物であるほど、より大きな不確実性リスクを反映して短期物より金利が高いものだが、この関係が逆転したのだ。このような「異常現象」は過去数十年間のほとんどのケースで、今後の景気低迷を予告するシグナルだったという事実が立証されてきた。短期金利は中央銀行の通貨政策の影響を直に受けるが、長期金利は今後の景気に関する展望に従って動くからだ。バンク・オブ・モントリオール(BMO)の米金利戦略部門のイアン・リンゼン代表は「米国債10年物の金利が3%を下回った状態で逆転したという点で、無視しがたい投資家のセンチメント(恐怖心)が確実にあるようだ」と語った。7月に入るなり市場では「緩やかな、あるいは急激な通貨緊縮と景気のソフトランディング」への期待があっという間に後退し、「急激な通貨緊縮とハードランディング」に対する懸念が台頭して、事態が一変する様相を呈している。この日のソウル債券市場でも、国庫債10年物の金利が年率3.295%(対前日比-0.084ポイント)、3年物が年率3.239%(-0.062ポイント)で取り引きを終えており、その差はわずか0.056ポイントに過ぎず、長・短期金利逆転の兆しがみえる。

 景気低迷の恐怖が商品市場と投資家を支配つつあることで、「安全なのはドルだけ」という安全資産選好心理が恐ろしい勢いで広がっている。この日、主要6通貨に対するドルの価値を示すドルインデックスは106.5で、前日より1.30%上昇し、2002年11月以降の最高水準に迫っている。米連邦準備制度理事会による攻撃的な通貨緊縮も作用しているが、グローバルな景気低迷の懸念がドル高の流れをさらに刺激している格好だ。ドル高は新興国の自国通貨表示の輸入価格を上昇させるため、輸入需要を抑制する。すなわち、全世界の交易を萎縮させるため、各国の輸出を鈍化させる。国際通貨基金は、ドルが他のすべての通貨に対して1.0%上がれば、世界の年間交易量が0.6%減少すると推定している。

イラクのバスラの原油生産現場の労働者が5日、無線機で話している=バスラ/ロイター・聯合ニュース

 米国だけでなくユーロ圏経済も深刻な低迷局面に突入しうるとの懸念が広がっていることで、ドルに対するユーロの相場はこの日、ここ20年の最安値を記録した。この日、一時ユーロ相場は前日より1.8%下落の1ユーロ=1.0235ドルとなった。2002年12月以降で最も低い水準で、「1ユーロ=1ドル」に達する劇的な通貨価値下落が目前に迫っている。野村証券の通貨ストラテジスト、ジョーダン・ロチェスター氏はロイターに対し「ユーロの価値は今後さらに下落するだろうし、市場はこれに注目し始めている」と語った。欧州中央銀行(ECB)が今月中に政策金利を引き上げれば、イタリアをはじめとする一部のユーロ加盟国で債務危機が再発する可能性もあるとも取りざたされている。

 各国のインフレが当初の予想より遅い第3四半期後半にピークを迎える可能性が高まっていることも、景気低迷の根拠となっている。エネルギーと穀物の価格が下落に転じたとしても、賃金、家賃、保険料などの硬直性の高い諸品目が急激な上昇を続けているため、物価がいつピークを迎えるかは予断を許さない。米国のアトランタ連邦準備銀行が発表する5月の粘着価格消費者物価指数は対前年同月比5.2%上昇で、1991年6月以降の最高水準を記録した。

 多少悲観的な経済展望を主に示す野村証券は4日、経済展望報告書で韓国、米国、ユーロゾーン、英国、日本、オーストラリア、カナダなどが12カ月以内に景気後退に突入するとする展望を発表している。野村証券は、韓国の第3四半期の経済成長率を-2.2%(年1.9%)としつつ、輸出などにおいてグローバルな景気低迷の衝撃が急速に発生する可能性があるとの見通しを示した。韓国銀行は今年5月の修正経済見通しで、今年の成長率は2.7%(下半期2.5%)となるとの見通しを示している。

チョ・ゲワン先任記者、ワシントン/イ・ボニョン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1049930.html韓国語原文入力:2022-07-06 18:27
訳D.K

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