政権引き継ぎ委員会がまとめた尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の国政課題運営計画には、財閥関連の内容はほとんどない。経済民主化を強調した歴代の政権とは差があるとの指摘が出ている。
3日に引き継ぎ委が発表した国政課題は、財閥規制に関する内容が見当たらない。代わりに、大企業集団の制度を改善するとの観点から、同一人(「独占規制および公正取引に関する法律」が規定する企業集団の支配者)の親族の範囲を狭めるとともに、持株会社の企業型ベンチャーキャピタル(CVC)参加制度の市場定着を支援するなど財閥がこれまで要求してきた内容が盛り込まれている。かつて朴槿恵(パク・クネ)政権は「経済民主化」を前面に掲げ、経済的弱者の権益保護や大企業集団の支配株主の私益詐取行為の根絶などを約束し、文在寅(ムン・ジェイン)政権は「公正経済」を実現する方策として、財閥トップ一家の専横防止、所有・支配構造の改善、懲罰的損害賠償制の導入などを約束した。
新政権の国政課題では、これを「私益詐取や不当な内部取引などに対する厳正な法の執行」で代替している。不公正取引被害の迅速な回復のために紛争調停協議会の権限を強化し、同伴成長に向けて共生協議会を通じて共生策を樹立するなどの計画を示している。しかし拘束力はなく、実効性には疑問が提起されている。
過去の政権の時代と比べて財閥支配構造が大きく改善されているとも言えない。昨年アジア・コーポレートガバナンス協会が発表した「コーポレートガバナンス監視(CG Watch 2020)」によれば、オーストラリア、シンガポール、香港、台湾、マレーシア、日本、インドなどを含むアジア12カ国中、韓国は9位にとどまっている。買収や合併の際の小額株主保護や支配構造公示などが特に低い評価を受けている。
経済改革連帯のキム・ウチャン所長(高麗大学教授)は「私益詐取規制や株主代表訴訟の強化など、財閥改革の課題が依然として残っているうえ、オンラインプラットフォーム企業の独寡占という新たな課題が浮上しているのに、国政課題には具体的な方策がない。引き継ぎ委が十分に議論したのか疑問だ」と述べた。