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雇用・病院なく、空き家、廃畜舎…このままでは日本のように「地方消滅ドミノ」の懸念

登録:2021-05-18 02:23 修正:2021-05-18 08:59
「農山漁村ユートピア特別委員会」発足、「住宅プラットフォーム拡大」急務 
「住宅・雇用を確保できなければ地方大学や農村の消滅の拡大は明らか」 

高齢化と地方消滅、「人口デッドクロス」 
学齢人口が減り、地方大学の90%が定員割れ 

30年以上の家屋、放置された空き家と畜舎 
劣悪な生活インフラなどの課題が山積 

日本の増田レポート「列島消滅」警告 
韓国の自治体、46%が人口消滅の危険警報
慶尚南道咸陽郡では今年初め、「小さな学校再生運動」が結実し、農村再生の奇跡を生み出した。西下小学校の前に建てられた児童家族住宅団地は今年2月に完成し、12世帯が入居を済ませている=咸陽/チェ・サンウォン記者//ハンギョレ新聞社

■「地方大学の消滅は地方消滅の前奏曲か」

 今年に入って「人口絶壁」や「地方消滅」、「桜エンディング」(桜の咲く順に地方大学が消滅するという意味の新造語)など、高齢化や人口減少などを懸念する用語がインターネット検索語ランキングの上位を占めるようになった。1月初めに行政安全部が「2020年住民登録人口統計」を発表して以降、検索回数が大幅に増えた。同統計の骨子は、韓国は死者数が出生者数を上回る「人口デッドクロス」に本格的に転換したというもの。さらに、今年の全国の地方大学の90%ほどが、学齢人口の減少により新入生の定員割れを起こしたというニュースまで重なったことで、「人口絶壁」が肌で感じられるようになっているためだ。

 少子高齢化と首都圏の過密化を解消するためには、まず首都圏に居住する第1世代ベビーブーマー(1955~1963年生まれ)と若い都市民の農山漁村への移住が切実に求められる、というのが専門家の大方の診断だ。しかし肝心の農山漁村向けの福祉や生活インフラの拡充には、大きな進展がないのが現状だ。最近では、古い農家や増えた空き家、廃畜舎などは、就農や地方移住を念頭に置いていたかなりの数の都市民の間に否定的イメージを拡散させる要因となりつつある。

 最近「農山漁村ユートピア特別委員会」を設置し、地方消滅などに対する対策作りに着手した国家バランス発展委員会(キム・サヨル委員長)は4月6日、政府ソウル庁舎で同特別委員会の第1回会議を開き、「住居プラットフォーム造成事業」を今年の主要案件として採択した。

 賃貸住宅と福祉・雇用政策などがつながる就農・地方移住プランを政府レベルで本格的に推進するということだ。

 就農のほか、コミュニティーや生態(エコロジー)の価値などを追求するというトレンドが反映され、ここのところ就農・地方移住人口は毎年40万人以上増えているものの、第1世代ベビーブーマーと若い都市民の地方移住の動きが期待より遅いことによる措置だ。安くて快適な賃貸住宅の確保が進んでいないうえ、教育・医療・文化面のサービスが依然として劣悪だという各界の診断も相次いでいる。

■「都市民の半数以上は就農を望んでいない」

 特に農村の古い住宅や放置された空き家などの、いわゆる「立ち遅れた定住環境」は、若年層の就農・地方移住意欲を削ぐ最大の障害と指摘される。

 韓国農村経済研究院が2019年8月に全国の都市民2291人にアンケートを行った「国民生活の満足・希望(バケットリスト)および農村需要調査」の結果を見ると、最近の若い都市民が農山漁村の状況をどう見ているかが一目でうかがえる。

 調査結果を見ると、アンケート対象者の54.1%にのぼる1222人が「農村でバケットリストを実行することは望まない」と回答している。

 特に、20代(71.3%)と30代(61.4%)の否定的な意見が圧倒的に多かった。60代でも半数以上(50.7%)が、40~50代では45~48.8%ほどが就農の意思なしと答えている。

 就農・地方移住を阻害する要因としては、農村現地の「劣悪な生活環境」(29.5%)が第一に挙がり、次に「不十分な文化環境」(17.9%)や「医療環境の不在」(14.2%)などが挙がった。

 一方、「5年以内に農村でバケットリストを実現したい」と答えた都市民は、対象者の37%の850人にとどまった。

 彼らも、農村移住のための最も重要な要件は「快適で便利な住居および生活環境」(51%)と答えている。「多様な雇用の創出」(47%)や「医療および教育の質の向上」(32.9%)などがこれに続く。

 同特委がこの日「農山漁村住居プラットフォーム推進案」を中心議題とした理由を探ってみた。

 まず、国土面積の11.8%に過ぎない首都圏の人口の割合は、昨年初めて50.1%に達したのに続き、2021年3月には50.28%とさらに増加している。いわゆる一つの地域にばかりあらゆる部門が集中する「極点社会」の弊害と「地方消滅」の状況が同時に起きているというのが専門家の分析だ。首都圏が国中の人口を吸い取ることで、結局は再生産機能も麻痺させる「人口のブラックホール現象」が起きていると警告する。

京畿道抱川市加山面のある農家と仮小屋。家主夫婦は20年あまりにわたって断熱と暖房が不十分なこの家で生活している=抱川/キム・ミョンジン記者//ハンギョレ新聞社

■「このままでは日本のような地方消滅ドミノの懸念」

 韓国より早く少子高齢化社会となっている日本では、当時の人口減少の趨勢からみて2040年には全国の1727の自治体のうち半数を超える896自治体が消滅すると述べた「増田レポート」が2014年8月に発表され、日本列島を震撼させた。日本政府は人口絶壁の加速化に伴う「列島消滅」の恐怖を世論化して正面突破を図った。当時の安倍内閣はこのレポートが出るやいなや、地方消滅と首都圏などの大都市の肥大化問題を根本的に解消するための「地方創生戦略」を国民に提示した。首相直属で地方創生本部を立ち上げ、「まち・ひと・しごとの創生と好循環」をモットーとする農村再生事業に今も政府を挙げて注力している。

 雇用で人を呼び寄せ、人が再び雇用を創出するという好循環構造が実現する農村再生事業が基本の枠組みだ。

 「増田レポート」の韓国版ともいえる韓国雇用情報院の「地方消滅指数」の最新の状況を見ると、2020年5月現在で全国の228市・郡・区の46%を超える105自治体が「人口消滅危険地域」に分類されている。このうち92%にのぼる97自治体が非首都圏だ。「人口消滅危険地域」とは、65歳以上の人口が20~39歳の女性の数より2倍以上多い地域をいう。そして、妊娠可能な女性の人口が高齢者の半数に満たず、これといって対策が実施されなければ、今後の人口減少によってその自治体が消滅する可能性が高いということを意味する。

 これらの地域の「定住環境」を調べてみると、現状はさらに悲惨だ。住宅を見ると、2019年現在、邑・面地域に占める30年以上の老朽住宅の割合は27%で、洞地域(11%)の2倍以上。郡地域の人口に対する公共賃貸住宅の割合は、市地域(2.97%)の半分ほどの1.76%に過ぎない。

 韓国農村経済研究院が3月15日に発刊した政策集『農村の空き家の実態と政策課題』によると、2019年末現在の全国の農村の空き家は、2010年以降の10年で約26万件増加している。全国の空き家の39.9%は農村にあり、空き家の割合は都市より約1.9倍高かった。

 特委は、これまでの政府の農村政策は住宅と福祉、雇用政策などが相互に結びついていなかったため、実効を上げることができなかったと分析した。

 農村地域を地域再生のための拠点空間にするという「住宅プラットフォーム」政策を最重要案件として採択したのも、まさにこうした苦悩が積極的に反映された結果だ。

 住宅プラットフォームのロールモデルの中には、英国の保護住宅(Sheltered Housing)、スウェーデンのサービスハウス(Service House)をはじめ、高齢者や障害者などの住居脆弱階層に対する介護サービスを強化した日本の事例なども含まれている。

 農山漁村ユートピア特別委員会が遅まきながら政府機構として発足したのは、「西下(ソハ)アイトピア(子どもを意味するアイとユートピアの合成語)」事業として評価される慶尚南道咸陽郡(ハミャングン)の地域再生の成功例が大きな刺激となっている。

 「小さな学校再生運動」が全国的に反響を呼び、小学校の閉校が間近に迫っていた農村に都市の児童と保護者たちが集まるという「小さな奇跡」が起きたのだ。西下小学校への転入を希望する問い合わせが全国から殺到し、審査の末にひとまず選抜された17人の転校生とその家族が住む12戸の賃貸住宅団地が造成された。

 同特委のソン・ギョンリュン共同委員長は「60年代から推進されてきた集中成長政策の結果、首都圏は極点社会に至り、農山漁村は数十年ものあいだ福祉の死角地帯として放置されてきた」とし「住宅と雇用創出を通じて農村再生事業を急がなければ、地方大学と農村の消滅はドミノのように拡散する可能性が高い」と述べた。

チェ・インニム|ハンギョレ経済社会研究院先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/995452.html韓国語原文入力:2021-05-17 09:53
訳D.K

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