新型コロナウイルスの大流行で直撃を受けた格安航空会社(LCC)が、先を争って「ポストコロナ」市場を狙った差別化した戦略を打ち出している。大きな航空機を導入し、大手航空会社専用とみなされてきた中距離市場に挑戦したり、効率性を引き上げて価格競争力の強化に力を入れているところもある。航空旅客商品が多彩になっている。
5日の航空業界の話を総合すると、韓国最大のLCCである済州航空のキム・イベ代表は「最近の会社の問題に関する考察」をテーマにしたビデオ・ブリーフィングを通じて「低コスト航空事業モデルは単一機種で短距離路線に集中し、効率性と低コストを極大化する」とし、「大型航空機の導入は機種多様化による初期投資、複雑化による費用(Complexitycost)などを克服できる力を備えてから考えるべき課題」だと述べた。
キム代表はさらに「燃料効率性と運航距離が強化された次世代小型航空機ボーイング737 MAXの導入の準備に万全を期してほしい」と付け加えた。ボーイング737 MAXは済州航空が運航している「ボーイング737ネクストジェネレーション」のアップグレード機種だ。従来の航空機と同じ機種なので、操縦士の訓練や整備教育への負担は増えず、効率性は高い。大きな費用が伴う果敢な投資より、費用の効率性を高め、財務的安定を図るための戦略とみられる。
キム代表の発言は、ライバル会社各社が大型航空機と中距離路線に目を向ける戦略を打ち出していることへの対応と言える。ティーウェイ航空は先月、「大型飛行機を導入し、中長距離の国外路線の運航に挑戦する」として、中大型機種(A330-300)3機を来年2月から順次導入する賃貸借契約をエアバスと結んだことを発表した。同社が導入を決めた機種は乗客300人以上を乗せて最大1万1750キロメートルまで飛行できる。現在、同社は最大189人まで搭乗できる小型航空機27台のみ運航している。ティーウェイ航空側は「新たに導入する航空機はシンガポール、ハワイ、ホノルル、クロアチア、オーストラリア、シドニーまで運航できる」とし、「新型コロナの防疫状況によって中長距離に路線を拡大していく予定」と明らかにした。
同社の関係者は、ハンギョレとの電話インタビューで、機種の多様化と複雑化によるコスト上昇について、「10年以上にわたり航空機を運航してきた。2機種を運航しても費用は大きくかからない。むしろ中長距離路線を追加して営業戦略を多様化できるメリットが大きい」とし、「攻撃的な路線と営業の差別化に乗り出したものとして捉えてほしい」と述べた。
早ければ6月末ごろに初運航する新生航空会社エアプレミアは、さらに「脱LCC」を前面に掲げている。自らを「ハイブリッド航空会社」と呼び、フルサービス航空会社(FSC、大韓航空とアシアナ航空など)と格安航空会社(ジンエアー、済州航空、ティーウェイ、エアソウル、エア釜山など)で形成された航空市場の隙間を攻略する。同社は「航空機はすべて通路が2つある中大型だ。座席もビジネスクラス(PE級)56席とエコノミークラス250席で構成される。エコノミークラスは大手航空会社の航空機よりも広い」とし、「3時間以上の飛行時には機内食を提供し、手荷物も大手航空会社並みに提供される」という。同社はボーイング社の中大型航空機「ドリームライナー787-9」3機を導入する契約を結び、先月2日に1号機を仁川国際空港に導入し、試験飛行を行った。
航空会社各社のこのような戦略は、顧客にとっては旅客商品の多様化や値下げにつながる可能性がある。中長距離路線の航空機をこれまでより安い値段で利用し、既存の短距離路線もさらに安く利用できる道が開かれるという意味だ。大手航空会社がLCCの“挑戦”に対抗し、既存の商品価格をさらに引き下げることも考えられる。
問題は新型コロナの大流行がいつ頃終息し、空の道が開かれるかだ。この時期が遅れると、攻撃的な変身を図る航空会社各社が、新しい戦略の推進を遅らせたり、ややもすれば構造調整の嵐に巻き込まれかねない。エアプレミアの場合、新型コロナ大流行が長引くことを念頭に置き、当面は国内短距離路線に集中する方向で事業モデルを見直したり、貨物運送に集中するなどの非常用のシナリオを設けている。