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"資本主義が民主主義と離婚しようとしていることが今日の危機"

原文入力:2012/06/25 22:23(3659字)

←‘世界で最も危険な哲学者’と呼ばれるスラヴォイ・ジジェク(左)が25日午前ソウル、漢南洞(ハンナムドン)のあるホテルの庭園でホン・セファ進歩新党再党創立準備委常任代表と会って話を交わしている。 ジジェクは 「左派は深刻な危機に陥っている」と診断した。 シン・ソヨン記者 viator@hani.co.kr



ソウルに来た‘危険な哲学者’ジジェク
ホン・セファ進歩新党代表と対談

ギリシャ危機以後
市民の左派政党支持 肯定的
西欧もこれ以上は発展が難しい

全世界 左派の危機
システム内の改善を探すのは限界
ユートピアよりは実質的変化を

再会した韓国
希望のバス、根本的社会倫理
独特な北韓体制 関心多い

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スラヴォイ・ジジェクは誰?

 1949年、旧ユーゴ連邦スロベニアで生まれた。 スロベニア、リュブリャナ大社会学研究所専任研究員だ。フランス、パリ8大学で精神分析学博士学位を受けた。 2000年代以来、映画など大衆文化と現実政治などを文化批評的に再解釈した著作を出して‘ジジェク突風’を起こした。 ラカンの精神分析学を土台としてヘーゲルの観念論、マルクスの変革思想を接合させ世界化時代の二者択一展望を提示したと評価される。 現実参加にも積極的で、1990年スロベニア大統領選挙候補として出たし、昨年米国、ニューヨークの‘オキュパイ’デモ現場で演説もした。 国内では<イデオロギーの崇高な対象>(2002) <厄介なる主体>(2005) <大義を忘れるな>(2009)等、30冊余りの著作が翻訳された。
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 現実政治と大衆文化を行き来する急進的な思惟を展開し‘世界で最も危険な哲学者’と呼ばれるスラヴォイ・ジジェクが韓国を訪れた。 2003年韓国哲学者大会に参加するために訪韓して以来9年ぶりだ。 今回ジジェクは文化評論家であるイ・テククァン慶煕(キョンヒ)大教授(英文学)と人文学コンテンツ事業体‘アート アンド スタディ’の招請で24日に入国した。

 2000年代以来、急進的な態度で資本主義を批判し‘革命’の必要性を力説してきたジジェクはこの頃、世界知性界の‘スーパースター’に挙げられる哲学者だ。 最近数年間、全世界が米国発金融危機、‘占拠’(オキュパイ)運動、アラブの民主化運動など資本主義体制の危機を示す多様な兆候的事件を相次いで体験しながら、彼の思想はより一層注目を浴びてきた。 特に現実を適切な線で改革していくことを拒否し、問題の根源にまで食い込んで新しい理論と展望を作り出す必要性を提起するという点でジジェクの思惟は独創的だと認められている。

 ジジェクは韓国での最初の日程としてホン・セファ進歩新党再党創立準備委常任代表と会って対話した。 偶然にも韓国戦争勃発62周年をむかえた25日、ソウル、漢南洞(ハンナムドン)のあるホテルでホン代表と会い、ジジェクは資本主義体制の危機が現在どのように進行しているのか、この状況で‘進歩’または‘左派’が何を追求しなければならないのかなどを語る一方で、韓国の分断状況などに対しても2時間にわたり自身の考えを述べた。

 先にホン代表が現在のヨーロッパ財政危機の去就を占えるギリシャ2次総選挙結果に関する話から対話を始めた。 ギリシャ総選挙の結果を見る時、ヨーロッパの一部の国々の財政破綻から始まった世界資本主義体制の危機が、どのように流れると見るかという質問だった。 これに対してジジェクは「ヨーロッパの最も発達した国家とも緊密に繋がっているギリシャ事態は、西欧国家も現在の資本主義危機ではさらに発展したり福祉国家を維持できないという事実をよく示している」と分析した。

 ギリシャ総選挙で緊縮政策を支持した保守新民党が結局は勝利したことについて、民主主義の後退が来るのではないかという憂慮も表わした。 彼は「資本主義の危機で私が危険だと考える部分は互いに結婚した仲だった民主主義と資本主義が今や離婚しようとしている点」とし「これまでは資本主義が民主主義を後押してきたが、今や(新自由主義以後)資本主義の新しいモデルはこれ以上民主主義を必要としないだろう」と見通した。ロシア、イタリア、ギリシャなどに見るように民主的に承認されていない‘テクノクラート’らがすべての決定を下す現資本主義の世界的流れとその問題点を指摘したのだ。

 ジジェクはただし今回のギリシャ総選挙で‘緊縮受け入れか救済金融再協議か’という断固たる選択肢を提示して支持度を引き上げた急進左派連合(シリザ)に対しては肯定的な評価を下した。 「わかりにくいギリシャ政局に秩序を持たらし、シリザが勝利したとすれば恐らく新しい市民性の可能性が開かれただろう」という見解だった。 彼は「シリザは‘執権すればスターリン主義が到来するだろう’という低水準の政治扇動のために執権はできなかったが、‘ユーロゾーン内での生存’を模索し、既存の4%台の支持率を25~28%台まで引き上げたことは韓国の新しい‘左派政党’再構築にも参照すべき事例」と話した。

 ホン代表は 「韓国では87年6月抗争で軍事独裁を終息させたが、その後に続いた改革的自由主義政権の10年間の執権は強力な構造調整等を通して労働階級内部の分化と資本の強化に帰結された」とし「世界的に左派が体験している困難に関する意見を訊いた。 これに対しジジェクは「左派は資本主義を批判してきたが、危機が迫っても何も出来なかったし、今深い危機に陥っている」として、悲観的な展望を出した。 昔、左派は‘何が起きるのかを知っていて、それに同意する人々を集めさえすればよい’と話してきたが、今は何が起きているのかに対して全く分からない状況なのに左派がそれに対して‘大きな質問’を投げかけていないという批判だった。

 また、ジジェクは 「現在、左派はシステム内で何かをより良くさせることに関心を持つなど、暗黙的に民主主義と資本主義を受け入れているが、それがまさに限界」と指摘した。 彼は「左派はある種の解答のようなユートピアとドグマを掲げる勢力ではなく、人々を‘抱き込みと排除’で分けるシステム(ジジェクはこれを‘新たなアパルトヘイト’と呼ぶ)を問題とする観点を持って、このような現実の中で‘人々に何を提示するべきか’質問を投じる存在にならなければならない」と強調した。 「重要なことは答を与えるのではなく正確な質問を提起すること」という主張だった。

 こういう‘左派の再構築’のための実質的な課題は何だろうか。ジジェクは 「どれほど多くの人々が集まって同じ主張をしたのかより、人々が実質的に何を本当に変化だと感じるかなどがさらに重要だ」として「実用主義と理想主義が結びついている複雑な現実を直視することが左派の課題」と助言した。

 対話は国内労働運動の現実に対する話に進んだ。ホン代表は昨年の韓進重工業整理解雇に対抗したキム・ジンスク民主労総釜山本部指導委員の巨人クレーン籠城とこれを支持した‘希望のバス運動’、そして大量解雇事態の余波で労組員22人が亡くなったが市民社会から希望のバスのような強力な連帯を得られていない双龍(サンヨン)車解雇労働者の実情を知らせた。 これに対してジジェクは「基本的な社会的体系が正常に回れない時、これを助けるのは哲学の問題ではない」として「路上に血を流して倒れた人がいれば、行って助けなければならないように、彼らを助けるのは‘新自由主義’等に対する議論を離れて根本的な社会的倫理に属する」と言い切った。

 ジジェクは南北分断と北韓体制に対しても強い関心を示した。 彼は「官僚が支配する体制を整えた他の共産主義国家とは違い、北韓は超自然的な現象まで動員しながら家族世襲に進んだ」として「いったい何が今日このように独特な北韓体制を作ったかに関心が強い」と話した。 ジジェクはその間‘孤立’を選んだという北韓が実質的には外部の食糧支援と米国・日本との修交にこだわるなど、はるかに(外部)依存的だと指摘することもした。

 今回のジジェクの訪韓は彼が自ら望んで先に訪韓を提案したという点で注目を引く。 ジジェクは27,28日午後7時に慶煕大平和の殿堂と建国(コングク)大新千年館でそれぞれ講演会を行い、国内大衆と会うなど一週間韓国に留まり30日に出国する予定だ。 チェ・ウォンヒョン記者 circle@hani.co.kr

原文: https://www.hani.co.kr/arti/culture/religion/539552.html 訳J.S