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上場株式の譲渡益課税、サムスン電子のイ副会長の便法的な相続が発端だった

登録:2020-07-09 04:15 修正:2020-07-09 12:04
1990年代に非上場株式を取得し、上場後に売却して大きな利益得る 
取引税だけ負担して所得税は一銭も払わず 
税金回避後に課税のための関連法令を改正 
その後、次第に財閥オーナー一家の課税範囲を拡大 
2023年から2千万ウォン以上の収益を上げた全員が対象に
サムスン電子のイ・ジェヨン副会長が昨年12月6日、ソウル瑞草区のソウル高等裁判所で開かれた国政壟断破棄差し戻し審の第3回公判に出席するため、裁判所に入ろうとしている=カン・チャングァン先任記者//ハンギョレ新聞社

 韓国政府が2023年から上場株式譲渡益に対する課税計画を発表し、株式を売って稼いだ利益に対する課税の歴史に関心が集まっている。「所得のあるところに税金がある」という租税普遍主義が株式取引には適用されていなかったからだ。

 ソウル大学のイ・チャンヒ法科大学院教授が出版した『税法講義』によると、株式譲渡益課税のための法律は「サムスン電子のイ・ジェヨン副会長の便法的な相続」から生まれた。イ教授は同書で「Sグループ大株主の息子Aさんは、父親から現金60億ウォン(約5億4千万円)を贈与され、贈与税16億ウォン(約1億4千万円)を納付した後、この金で同じグループ内の非上場株式を手に入れた。(中略)3年後に同社は株式を上場し、Aさんは上場後、株式を約600億ウォンで売却することで、527億ウォン(47億4千万円)の相場差益を得た」と記した。さらに「当時の所得税法は、上場株式の譲渡益は課税の対象にしていなかったため、Aさんは譲渡所得税も納めなかった。こうした事態を受け、国会と行政府は1999年から上場株式でも大株主の大量売買には譲渡所得税を課すよう所得税法令を改正した」と述べている。

 Sグループはサムスンで、Aさんはサムスン電子のイ・ジェヨン副会長だ。イ副会長が便法的に富を相続され、税金を回避した後になってようやく関連法令が変わったわけだ。当時、イ副会長は父親のイ・ゴンヒ会長から61億4千万ウォン(約5億5千万円)を受け継いだ後、上場直前のエスワンなどサムスン系列会社の株式や転換社債などを買い入れ、上場後に売ることで莫大な収益を得た。

 具体的にエスワンの場合は、1994年にサムスンエバーランドなどの他の系列会社から株式を買い入れるなどの方法で78億7700万ウォン(約7億円)相当の株式を手に入れ、1996年1月の上場後、2年かけて355億9300万ウォン(約32億円)で売却した。差益は277億1600万ウォン(約25億円)に達した。サムスンエンジニアリングの場合、1994年ごろ新株引受権を手に入れ、すぐに行使して18億6000万ウォン(約1億7000万円)分の株式を手に入れた後、上場(1996年12月)直後に280億9900万ウォン(約25億3千万円)で売却し、262億3900万ウォン(約23億6千万円)の差益を得た。第一企画も似たようなやり方だった。1996年に発行された転換社債をイ・ジェヨン副会長が買収し、株式に転換したことで、第一企画の株式を保有するようになった。有償増資にも参加し、計20億1600万ウォン(約1億8千万円)をつぎ込んで半分以上の株式を所有することになった。1998年3月、第一企画が上場すると、保有していた株式を161億1600万ウォン(約14億5千万円)で売却し、141億ウォン(約12億7千万円)の差益を得た。

 この過程で、イ副会長が負担した税金は、株式を売る時に納める取引税0.3%だけだった。非上場株式を保有していたが、上場後、株式を売りさばき、元金の3、4倍の利益を得たにもかかわらず、利益による税金は一銭も納めなかった。これに対する市民団体の持続的な批判があってから、ようやく財閥オーナー一家の便法的な相続に対する課税のために法が作られた。当時の事情に詳しい企財部の関係者は「サムスングループが法の網を潜り抜けて相続を進め、税金を回避した後になって、ようやく関連法令を設けた」とし「巧妙に税負担を避けており、これを防ぐために法を改正したため、一般の人は理解するのが難しく、関連法が複雑になった側面がある」と述べた。

 1999年から始まった上場株式の譲渡益課税は、株式の5%以上を保有する者が対象で、ほとんど財閥オーナー一家だった。2000年に3%保有もしくは100億ウォン(約9億円)以上の株式保有者に(対象が)広げられ、2013年に2%もしくは50億ウォン(約4億5千万円)以上、2016年に1%もしくは25億ウォン(約2億2500万円)以上、2018年に1%もしくは15億ウォン(約1億3500億円)以上、2020年には1%もしくは10億ウォン(9千万円)以上と拡大を続けた。来年には1%もしくは3億ウォン(約2700万円)以上に拡大し、2023年にすべての投資家を譲渡所得税の対象とし、大株主の基準をなくす見通しだ。その代わり、基本控除2千万ウォン(約180万円)が適用され、一年間株式を売って2千万ウォンを超過して利益を出した時に税が課される。取引税は今より0.1%下げて0.15%(22年0.23%)になる。

 これについて東国大学のオ・ジョンムン教授(経営学)は「米国やドイツ、英国、フランスなどの主な経済協力開発機構(OECD)加盟国が上場株式の譲渡益課税を実施しており、租税公平性の観点からもすべての投資家を対象にした譲渡所得課税が望ましい」と述べた。

イ・ジョンフン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/952795.html韓国語原文入力:2020-07-08 16:26
訳H.J

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