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「無理してでも買うべきだったと後悔」…ソウルの不動産、“不敗神話”続く高騰

登録:2020-07-06 10:53 修正:2020-07-06 12:04
[不動産政策が誤作動、民心おさまらず] 
6・17不動産対策後も高止まり続く 
2、3カ月で2億ウォン以上跳ね上がり 
「今買えなければ一生後悔する」 
新都市の請約を待つかどうかの悩みには 
「無理してでもすぐ買え」との助言が大半 
半年間実取引が1件もないのに 
呼び値下がらず、「不敗神話」は堅固
5日、ソウル麻浦区の不動産の壁に「麻浦レミアンプルジオ」の売り物件の案内が貼られている。昨年12月に政府が15億ウォンローン規制を発表した後止まっていたマンション売買価格は、江南3区のマンション価格が上昇し始めると15億ウォンを再び上回った=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社

 韓国政府が6月17日に打ち出した「6・17不動産対策」(住宅市場安定のための管理法案)の後遺症が激しくなる中、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が追加の対策を指示し、与党代表も「非常に申し訳ない」と謝罪した。不動産対策に対する総体的な再点検が必要な時点ということだ。ハンギョレは過去3年間、3545人のサラリーマンがソウルの住宅価格の暴騰期を経てどのように「ソウル不動産不敗神話」を学習するようになったのかを調べた。住宅購買力があり、購買欲求も最も強いこの階層の不動産市場認識は、今後政府が発表する追加の対策の成否を分けるからだ。

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(1)住宅価格が下がる?信じる人はいない

 「ソウルで家を買ったなんて、昔むかしの話になると思います。あの頃はソウルで家を買えたよなって。そうなると思いませんか?」

 2年前に結婚したAさん(41)は、「住宅価格が下がる」という期待が崩れたという。結婚後、出産を考える過程で、2年ごとにやってくる再契約とどれだけ跳ね上がるか分からない伝貰(チョンセ。家主に一定のまとまった保証金を預けて住宅を借りる制度で別途家賃は発生しない)の保証金に対する負担から解放されたかったAさんは、家を買うことにした。来年1月の再契約の満了時点でマンションを買うことに決めた後は、落胆の連続だった。「火曜日に検索して調べて土曜日に不動産屋に行くと、2千万ウォン(約180万円)から3千万ウォン(約270万円)も上がっているんです」。価格上昇の勢いは、6・17対策が始まってからも収まらなかった。Aさんが目をつけていた麻浦区(マポグ)、恩坪区(ウンピョング)、西大門区(ソデムング)の境界の築20年のマンション(専有面積85平方メートル)は、5億ウォン台から2、3カ月で7億ウォン台を超えた。7億ウォンはAさんが住宅ローンなどを利用して負担できるぎりぎりのラインを越える。新築マンションもあきらめ、主要な駅近くもあきらめたが、Aさんはソウルで住宅を購入するのだけはあきらめられないと話した。「ソウルの住宅価格は香港の住宅価格のようになると思います。今買えなければ一生買えないと思うから、買わなきゃ」。Aさんは依然として7億ウォン台未満のマンションを調べている。この2年間、住宅価格暴騰の時期を経験したAさんには、まだ請約日程も出ていない第3期新都市や龍山(ヨンサン)のミニ新都市8千戸などの文在寅政府の供給対策は、余りにも遠い話だ。

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(2)伝貰で入居の時は5億ウォンだった麻浦の中古マンション、2年で10億ウォンに

 30代のBさんは、6・17対策が打ち出されるとされた6月初め、麻浦のある中古マンション(専有面積50平方メートル)を8億8千万ウォンで購入した。Bさんは家を買うまでに二度の「学習」があったという。1つ目は、2018年に賃貸人が2億4千万ウォン(約2150万円)だった伝貰の保証金を5千万ウォン(約450万円)引き上げたいと言った時だ。「伝貰で暮らすと保証金がどのくらい上がるか分からないので、住居費用として常にお金を貯めておきました。その時も2千万ウォンは貯めていたので値上げに応じる余力はあったけれど、5千万ウォンなどととんでもないことを言うので腹が立ちました」。ソウルのサラリーマン3545人がマイホームの購入を急いだ“引き金”となったのは、伝貰金高騰の不安だ。西欧では普遍化している家賃契約更新請求権などの賃借人保護措置がまったくない韓国の状況で、伝貰の保証金急騰は「常套の手」のようなものだ。賃貸借の制度に関する国際統計(global property guide、 2018)によると、韓国は英国、中国、香港、日本などと並んで「賃貸人に有利な」国だ。家賃の申告制(不動産取引申告法)、家賃上限制、家賃契約更新請求権(住宅賃貸借保護法)を指す「賃貸借保護3法」は、文在寅政府の国政課題だったが、この3年間国会で十分に議論もされなかった。

 2つ目は、2018年に伝貰で入居した中古マンションの売買価格が2年間で5億ウォンから約10億ウォンへと2倍に暴騰したのを見た時だった。「当時はローンが負担だったので現在住んでいる中古マンションを伝貰で借りました。あの時に買わなかったことをものすごく後悔しています」。再建築問題が浮上しているマンションは、Bさんが買った後も1億ウォン以上値上がりした。

 文在寅政府になって最初の総合対策である2017年の8・2不動産対策として、ソウル25区全体が投機過熱地区に指定された。ローンで住宅を購入する実需要階層は、当時住宅担保ローンの比率が70%から40%に縮小したことにより、直接的な影響を受けた。住宅担保ローンの比率が減った部分は「信用貸付」と「親頼り」が埋めた。Bさんも伝貰の保証金や住宅担保ローンの40%に信用貸付で10%を加えて調達してもまかなえない部分は、親から借り受けた。政府によるローン規制以降、親の財力が十分あるか(金のスプーン)そうでないか(土のスプーン)のいわゆる「スプーン階級議論」が持ち上がった背景がここにある。特にマンション価格の上昇を主導している一部の新築マンションの場合、分譲価格が8億~9億ウォン(約7200万~8100万円)にのぼるため、住宅担保ローンの割合を40%に規制した場合、サラリーマンは自力では購入できない。ソウルのマンションの分譲価格(1坪/3.3平方メートル)は、2015年の1948万ウォン(約175万円)から2018年には2804万ウォン(約252万円)へと大幅に上昇した。

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(3)”無理なローン”をしても住宅価格はもっと上がる…呼び値も落ちない奇現象

 「ローンの比率を増やして5億から6億ウォンのローンを受けられるようにしたら、その大金を返済できる能力があるのか」という常識的な質問は、住宅価格の暴騰時期を経験した実需要者たちには通じない。ローン金額を相殺しても余るほど住宅価格が高騰したためだ。オンラインコミュニティでは、比率の減った住宅担保ローンの分だけ信用貸付を使い、「魂までかき集めるほど」あらゆる手段を使う人々の事例が少なからず上がる。

 30代後半のCさんが2016年11月に8億5千万ウォン(約7600万円)で分譲を受けた麻浦区の新築マンション(専有面積85平方メートル)は、入居する前の2019年11月に16億5千万ウォン(約1億4800万円)で取り引きされた。住宅担保ローンを70%まで受け、5億ウォン以上を借りたが、3年間で住宅価格の上昇幅が借りた金額を上回ったのだ。30年間月200万ウォン(約18万円)ずつ返済しなければならないが、30年間返済するとは思っていない。Cさんは「子どもたちが育ったら売るつもり。30年間これを全部返済すると考えてローンをする夫婦はいない」と語った。

 過去3年間に住宅価格の暴騰を経験した人たちは、Cさんの「成功事例」を聞けば政府の供給対策を待てなくなる。不動産関連のオンラインコミュニティに「第3期新都市の請約を待つか、今買うか悩んでいる」という書き込みが掲載されるたびに、「無理に住宅を買うより請約を待て」という反応よりも「さらに跳ね上がる前に6億ウォン以下の低価格マンションを買っておいた方が良い」という反応の方が多くの共感を得る理由は、「暴騰の経験」にある。

 そのうえ、Cさんが分譲を受けたソウル梨大(イデ)駅近くの新築マンションは、取引がほとんどないのに呼び値が下がらないという奇現象を見せている。ここは昨年11月に16億5千万ウォンで取引された後、6カ月間実際の取引件数が「0件」だった。昨年の12・16対策で15億ウォンを超える高価住宅に対する住宅担保ローンが禁止された影響だが、売り物件の呼び値は15億ウォンを下回らなかった。6月初め、6カ月ぶりに行われた取引の代金は15億7千万ウォンで、やはり15億ウォンのハードルは崩れなかった。需要があまりなくても、住宅を所有している人たちが価格が落ちないようにしているからだ。今月3日に訪れたこのマンション近くの不動産仲介業者には、同じマンションの呼び値を19億ウォン(約1億7000万円)と記した掲示物が貼ってあった。

チン・ミョンソン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/property/952347.html韓国語原文入力:2020-07-06 07:49
訳C.M

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