4日午後、ソウル明洞(ミョンドン)の新世界百貨店本店。いつもなら中国人観光客で賑わっていた本館1階のブランド品売場が閑散としていた。ルイ・ヴィトンやシャネルなど約10店舗のうち、客がいるのは数カ所だけだった。一般衣類売り場も似たような状況だった。あるアパレルショップの店員は「一部の有名ブランド売場は平日の昼にも中国人観光客が列をなしていた」とし、「一般売り場も最近はお客さんがほとんど来ない。セール中なのに新型コロナウイルス感染症のため、客足が遠のいた」と話した。これに先立ち、昼休みに訪れた梨花女子大学近くのあるタッカルビ店には、客が一人もいなかった。中国人観光客の間では「美味しい」と評判の店だ。店内には中国語の案内板があちこちに張られていた。同店の店主は「普段は一日に100人程度のお客さんがいた。大半が中国や香港、台湾からの観光客だった。新型コロナ問題が浮き彫りになって以来、ここ数日は一日にお客さんが10人以下に減った。売り上げが見る見るうちに落ち込み、夜も眠れない」と話した。列車の乗客も大幅に減っている。先週末、列車利用客は昨年同期に比べて26.1%(KTX4万6千人、一般列車4万4千人)も減少した。ソン・ビョンソク韓国鉄道公社社長は同日記者懇談会で「先週末だけで、普段より売上げが20億ウォン(約1億8千万円)も減少した。新型コロナ事態が3カ月間続いた場合、1千億ウォン(約92億円)の赤字が予想される」と述べた。
新型コロナ事態を受け、消費者らが早くも財布の紐を締めている。多重利用施設を避ける人が増えたことを受け、デパート各社が同時休業に入る一方、中国人観光客による売上の割合が全体の80%ほどを占めている免税店も短縮営業を始める。昨年下半期から回復し始めた消費(小売販売)の流れが「新型コロナ」事態以降、急速に冷え込んでいる。ここに、外国人観光客の増加などに支えられて緩やかな消費拡大を期待して今年2.4%成長を予測した韓国政府の経済展望も修正される可能性が一層高まった。
百貨店各社は防疫を理由に10日、一斉に休業に入る。ロッテ百貨店と新世界百貨店の全店と現代百貨店では2店を除いた13店が対象だ。百貨店が顧客不安を理由に一斉休業に入ったのは初めてのことだ。2015年のMERS(中東呼吸器症候群)事態や2002年のSARS(重症急性呼吸器症候群)事態の際も、休業はなかった。百貨店の売り上げはすでに落ち込んでいる。先週末(1~2日)基準のロッテ百貨店の売上げは、昨年の旧正月連休明けの週末(2019年2月9~10日)に比べ11%減少しており、同期間中の新世界百貨店と現代百貨店の売上高はそれぞれ12.6%と8.5%減少した。
中国人観光客の比重の高い免税店も短縮営業に入る。夕方8~9時まで運営していたロッテ免税店と新世界免税店の一部店舗は、営業終了時間を夕方6時半に調整した。中国人客が減って、昼間に比べて売上の貢献度が低い夜に営業をしないという意味だ。法務部の「出入国現況資料」によると、新型コロナ事態が本格化する前には1日平均1万5千人だった入国者数は3日現在、8900人まで急速に減少した。免税店は昨年12月の販売額が前年同月に比べて43.2%急増し、景気回復の象徴のように見なされていた。
ハ・ジュンギョン漢陽大学経済学部教授は、「直ちに外食業や観光、宿泊業などを中心に需要不振が現れ、これが自営業の方にかなり影響を及ぼすものとみられる。心理的な衝撃が相当反映されたとみるべきであり、今後も感染者がどれだけ増えるか、死亡者が出るかなどによって、影響が続く可能性がある」と予想した。チュ・ウォン現代経済研究院経済研究室長も「(新型コロナで)主な懸念材料は中国内需市場の萎縮と中国人観光客の減少による内需市場の萎縮の二つ」だとしたうえで、「国内消費心理は少なくとも2月まで、長くは3月まで低迷が続くだろう」と見通した。ただし、消費への打撃を一定部分相殺できる消費行動も現れている。人々が外出を控えたことで、オンラインを通じた消費が増えているからだ。動画ストリーミングサービス会社の「ワッチャ」は先月28日には視聴が前週に比べて14.1%増え、平日の視聴基準で歴代最高だったと発表した。オンラインショッピングサイト「11番街」の資料によると、先月27日から1日まで生活必需品の販売量は前年同月より2倍近く増えた。
企画財政部の主要当局者は「様々なデータを収集しているが、何よりも現在、人々は外出そのものを控えている。こうした状況で消費の萎縮は避けられない」とし、「今後、中国の感染者数の増加推移がどう変わるかによって、消費萎縮の範囲と持続性も変わるだろう」と述べた。