原文入力:2009-11-11午後09:50:08
イ・ウォンジェ記者
←イ・ウォンジェ ハンギョレ経済研究所長
いわゆる‘江南3区’の一つに暮らしていた私たちの家族がソウル市内の他区に引越したのは去る7月だ。事実、その引越しで私たちが享受する公共サービスが大きく変わるとは夢にも思わなかった。引っ越したところで同じ大韓民国国民であり、同じソウル市民ではないのか? ところが引っ越すやいなや妊娠中の妻が享受する医療サービスが変わった。以前、保健所では妊産婦に無料で提供したいくつかのサービスが消えた。出産祝い金の金額も50万ウォンから10万ウォンに減った。
こういう差が出産だけに止まらない。生まれてくる子供は江南より財政が厳しい学校に通うことになるだろう。江南区の幼稚園および小・中・高校支援金予算は今年137億ウォンだ。ところが衿川区は15億ウォン,鍾路区は23億ウォン,西大門区は26億ウォンだ。成人が地域教育機関で学ぶことを継続しようとしても、より価格が高く質が低い教育を受けるほかはない。江南区の今年の生涯教育および職業教育支援金予算は200億ウォンだが、銅雀区は2億ウォンに止まる。道峰区は最初から0だ。
現代福祉国家で公共部門が提供する公共サービスは、住民生活の質に大きな影響を及ぼす。ところで現在、生活と密接な教育,医療などの公共サービスの相当部分は基礎地方自治体が提供している。予算の不均衡は生活の質も不均衡にさせる。生活の質のために住居価格と地価が変動し不均衡はより大きくなる。この不均衡は毎年累積するだろう。
こういう不均衡の最も重要な要因の一つが財産税だ。財産税は基本的に区で集めた分は該当区で使うようになっている。今年ソウルで賦課された財産税を見れば、最も多い江南区と最も少ない区の間に15倍程の違いが生じている。地価,住居価格が高い町内であるほど幼稚園も学校も保健所もより良くならざるをえない構造だ。
幸いソウル市は2008年から財産税共同課税制度を導入した。それで今年は区税である財産税のうち45%をソウル市で集め25ヶ区にまんべんなく配分する。従って区の間の財産税歳入格差は約5倍に緩和された。
財産税収入が多い区は不満が多いだろう。それで12日憲法裁判所では江南3区などが出した憲法訴訟公開弁論が開かれる。こういう措置が地方自治権限を侵害したことかを判断する内容だ。
ふと‘責任感ある富’という団体を思い出した。ジョージ・ブッシュ前米国大統領が相続税廃止を推進する時、最も強力に反対した団体の一つだ。団体の会員たちはまさにジョージ・ソロス,ビル・ゲイツ,ウォーレン・バフェットのような当代最高の金持ちだった。百万長者らが集まり‘私たちに恩恵を与える制度を作るな’と叫んだのだ。稼いだ金を良いことに寄付するのも重要だが、こうしたことがさらに根本的なnoblesse oblige(指導層が持つ道徳的義務)ではないだろうか?
‘私が出した税金は私の地域で使われなければならない’と考える人がいるならば心苦しいことだ。税金は料金とは根本的に違う。出しただけサービスを受けるという考えは当初から慎まなければならない。警察も道路も保健所も図書館も、税金を多く出した人だけが利用すべきものなのか?
江南住民たちが‘財産税を他の地域ともっとまんべんなく分けて使うようにしなさい’と区庁に建議する姿を想像してみる。ちょうどメン・ジョンジュ江南区庁長も‘尊敬を受ける江南’を目標に区政を展開しており相性が合う。どうせ払う税金だが、それが貧民街の新生児の粉ミルク代金として使われ、暮らしむきが苦しい妊産婦の病院費として使われると考えてみればどうだろうか? さらに長い目で見て住居価格が上がり財産税ばかりより多く出しても、自然に善行をしたことになり尊敬も受ける、そのような社会を作り出すのはどうだろうか?
イ・ウォンジェ ハンギョレ経済研究所長timelast@hani.co.kr
原文: https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/387237.html 訳J.S