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[ルポ]マイナス13度でも暖房いらずの図書館の秘密

登録:2019-12-09 01:15 修正:2019-12-09 13:06
換気設備メーカーのヒムペル、ゼロエネルギーに挑戦 
キム・ジョンファン代表―イ・ミョンジュ教授が意気投合 
 
牙山中央図書館、高性能の断熱・機密 
外部の寒気を遮断し、暖房要らず 
2020年からゼロエネルギー義務化
5日に訪問した京畿道華城のヒムペル第3工場の全景。側面にソーラーパネルを貼り付けたのが特徴=国土交通部提供//ハンギョレ新聞社

 5日に訪れた京畿道華城(ファソン)のヒムペル(HIMPEL)第3工場。地上4階の外壁の側面を飾る太陽電池パネルが光っていた。竣工式を翌日に控えたこの日、「きれいな新築」という説明では足りないこの建物は、韓国初のゼロエネルギー工場だ。

 ゼロエネルギー建築物(ZEB)は、外部エネルギーの使用最小化を目指す。冷たい、または熱い外気を遮断する断熱・気密性能を高め(パッシブ)、換気装置・ボイラー・制御装置など高効率設備を適用し(アクティブ)、ソーラー・地熱など必要なエネルギーを生産して(新再生)エネルギー所要量を大幅に減らす方式だ。換気設備メーカーのヒムペルが国内で初めてゼロエネルギー工場を建設することになったのは、キム・ジョンファン代表と「ゼロエネルギー建築の伝道師」であるイ・ミョンジュ明智大学教授の特別な縁から始まった。

ヒムペル第3工場ショールームに展示中のエネルギーの現況=国土交通部提供//ハンギョレ新聞社

 イ教授は、国内初のゼロエネルギー共同住宅実証団地である「ノウォンイージーハウス」事業の総括団長だ。2017年12月に文在寅(ムン・ジェイン)大統領が訪問するほど注目を受けた共同住宅だったが、内部・外部の換気システムである電熱交換器のフィルター交代が難しすぎるという住民の苦情が提起された。イ教授はこの問題を解決しようと、今年4月に納品業者であるヒムペル本社を訪れ、キム代表と会った。

 苦情を聞いたキム代表は、15世帯に設置された既存の電熱交換器をフィルター交代がしやすい新しいものに全部交換すると快く約束した。面談が成功して終わったころ、代表取締役室にあったヒムペル第3工場の透視図がイ教授の目にとまった。

 イ教授は「ゼロエネルギー建築物の核心は電熱交換器だ。これを生産するヒムペルが工場もゼロエネルギー建物として建てるべきではないか」と提案した。すでに基礎工事が進んでおり、一部は床の断熱材の施工も終わった状態だったが、キム代表は「決断」を下した。ゼロエネルギー建築要素を加味した再設計に入ったのだ。断熱材を補強し、窓を取り替えた。熱回収型換気装置設備を追加し、ソーラーパネルを屋上と側面に取り付けた。最初の設計の時と比べると電力消費量を53%削減することができるようになった。当初の工事費(45億ウォン)よりは7億ウォンさらにかかった。ソーラー発電に適した建物の方向など、骨組の施工が最初からゼロエネルギー建築を念頭に置いて行われなかったため、政府・地方自治団体の支援は7670万ウォン(約700万円)に止まった。キム代表は、それでも国内初のゼロエネルギー工場を建てたという自負心を感じると話した。キム代表は「会社の使命が『私たちは空気エネルギー技術を通じて人間の健康に貢献する』であり、使命に沿ってエネルギーを削減し地球温暖化問題に対応できるようになって嬉しい」と語った。

5日に訪問した忠清南道牙山の峨山中央図書館//ハンギョレ新聞社

 同日訪問した牙山(アサン)中央図書館は、昨年「大韓民国グリーン建築大展」で最優秀賞を受賞した、国内の代表的なゼロエネルギー公共図書館だ。忠清南道牙山は中央図書館の他にも洞(町)役場、敬老堂、体育センターなど、多様なゼロエネルギー建築物を2014年から披露している。チョ・サンヒ牙山市役所公共施設課主務官は「グリーン建築という政府政策があり、2012年に前市長(ポク・キワン)がこのグリーン建築推進の意志があり、実務者たちがドイツに見学に行ってくるなど、地道に努力した末に多くの成果を出すことができた」と話した。

 牙山市のゼロエネルギー建築物の特徴は、ソーラー・地熱を活用するのは基本で、断熱と気密を極大化したパッシブ工法にある。この日は昼間でも氷点下で止まるほど、この冬最も寒い日だったが、説明会を行なった峨山中央図書館4階の多目的室は暖房が回っていなくても暖かだった。外部の冷たい空気の流入が遮断されているからだ。断熱・機密の性能は外壁温度でも確認できた。図書館の外に出て、熱画像カメラで図書館の外壁の温度を測定すると、マイナス13度を指した。向かい側のマンション外壁の温度はプラス3度だった。マンションからは内部の温気が外に流出しているが、牙山中央図書館では外部の寒気が内に入り込めず、建物の中の温もりが内部にとどまっている証拠だと市役所関係者は説明した。ただし、パッシブ建築物では夏の冷房には気を配らなければならない。出入過程と人体の体温が出す熱気が少なくないからだ。それでも昨年1月に竣工した峨山中央図書館は、一般図書館よりエネルギーを45%少なく使っている。

熱画像カメラで建物の外壁の温度を測定したもの。牙山中央図書館に比べて一般建築物とマンションの内部の温気の流出が明確だ=牙山市庁提供//ハンギョレ新聞社

 韓国のゼロエネルギー建築政策は、気候変動への対応に向けた世界的な流れと徐々に歩調を合わせている。昨年7月、建物部門の温室効果ガス削減率を18.1%から32.7%に上方修正し、来年からはゼロエネルギー建築義務化のロードマップが本格的に適用される。2020年からは新築される1千平方メートルの公共建築物は必ずゼロエネルギー建築物でなければならない。2025年からは500平方メートル以上の公共建築物や1千平方メートル以上の民間建築物および30世帯以上の共同住宅に拡大され、2030年には500平方メートル以上の民間・公共建築物がすべてゼロエネルギー建築物として作られるようになる。国土交通部グリーン建築課のパク・ドクチュン事務官は「研究開発を通じた技術支援、さまざまなインセンティブなど、ゼロエネルギー建築が拡散するよう努力する計画だ」と語った。

華城・峨山/キム・テギュ記者dokbul@hani.co.kr(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/property/919986.html韓国語原文入力:2019-12-08 20:37
訳C.M

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