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4500億円の会計詐欺を行ったサムスンバイオの上場維持決定に「見逃し」議論

登録:2018-12-11 10:08 修正:2018-12-11 13:53
取引所、11日に株式取引再開を決定 
「経営透明性が一部不十分だが 
企業の継続性・財務安定性を考慮」 
投資家保護の名分の下 
また大企業を“大目に見る”判定 
 
専門家「粉飾会計という判定そのままなのに 
取引再開の決定は理解できない」
サムスンバイオロジクスのキム・テハン代表が10日、ソウル汝矣島の韓国取引所で開かれた企業審査委員会に入場している/聯合ニュース

 故意の粉飾会計で検察に告発され、株式の売買取引が停止されていたサムスンバイオロジクス(サムスンバイオ)が、KOSPI上場を維持し、11日から株式取引が再開される。取引所の上場を控え4兆5千億ウォン(約4500億円)にのぼる大規模な粉飾会計を行ったにもかかわらず、「投資家保護」を名分に上場廃止を免れたことをめぐり、見逃し決定ではないかとの指摘が出ている。

 韓国取引所は10日、サムスンバイオの上場適格性を審査する企業審査委員会の審議を経て、サムスンバイオに対して上場維持を決定したと発表した。サムスンバイオ株の売買取引停止は、11日午前9時に解除される予定だ。企業審査委は、改善期間を与える措置も取らなかった。企業審査委は外部の法律・会計・学界など分野別の専門家6人と取引所役員1人の計7人で構成されている。

 韓国取引所は「企業の継続性、財務安定性、経営の透明性について総合的に検討した結果、一部不十分な点はあるものの、企業の継続性、財務安定性などを考慮し、上場を維持することにした」と明らかにした。取引所はサムスンバイオの企業継続性について「売上・収益性の改善が確認された中、事業展望および受注残高・受注計画などを考慮すると、深刻な懸念はないと判断した」と説明した。財務安定性については「2016年11月の公募増資および2018年11月のバイオジェンのコールオプション行使などで、相当期間内に債務不履行などが現実化する恐れは大きくない」と判断した。

サムスンバイオロジックスの本社=ハンギョレ資料写真//ハンギョレ新聞社

 取引所は、サムスンバイオの経営の透明性に対してのみ一部不十分な点があると指摘した。サムスンバイオは、現在進行中の行政訴訟の結果と関係なく、監査機能および内部会計管理制度の強化などを内容とする改善計画を提出したと取引所は明らかにした。取引所は、経営透明性改善計画の履行について、今後3年間点検する予定だと付け加えた。

 企業会計問題に詳しいある専門家は、取引所が投資家保護のために早い決定を下したが、サムスンバイオの粉飾会計に対して免罪符を与えたわけではないと説明した。彼は「サムスンバイオ株の取引停止が長期化すれば、財産権保護問題などで国内の株式市場に対する不信につながりかねない状況だった」とし、「こうした点を懸念し、企業審査委が再会議を行わず、迅速に結論を下した」と述べた。サムスンバイオの時価総額は20兆ウォン(約2兆円)を超え、小口株主は8万人にのぼる。しかし彼は「上場維持の決定が粉飾会計に対する本質的な判断を扱ったものではない」と指摘した。

 また別の専門家もこうした決定が出た背景について「上場実質審査基準が証券先物委員会の判断基準とは異なるため」と説明した。彼は「上場企業の粉飾会計が明らかになれば上場実質審査の対象になるが、上場実質審査の際には現在の会社の状態だけを見て判断する」とし、「上場廃止をした後、もし2~3年後にサムスンバイオが行政訴訟で勝ったとすれば、回復できない被害の可能性がある」と述べた。実際、取引所の上場実質審査要件によれば、企業の継続性、経営の透明性、財務安定性によって審議することになっている。

 しかし、サムスンバイオの上場維持決定をめぐり、粉飾会計を行った企業に対する「見逃し」という批判も強い。会計の透明性が足りないことが国内企業の株価を下げるいわゆる「コリアディスカウント」の原因なのに、これを改める機会を逃したという批判も出ている。参与連帯のキム・ギョンユル経済金融センター所長(会計士)は「証券先物委の粉飾会計判定には変わりがなく、サムスンバイオも証券先物委の判定による修正公示をしないなど何も変わっていないのに、株式取引を再開するのは理解できない」と批判した。

 今後サムスンバイオの粉飾会計問題は「上場廃止」を超え、法的攻防に進むことになった。サムスンバイオは先月14日、証券先物委が故意の粉飾会計決定を下し、検察告発とともに課徴金80億ウォン(約8億円)、財務諸表修正、代表取締役解任勧告をすると、行政訴訟および執行停止申立てをソウル行政裁判所に提出している。ソウル行政裁判所は19日、サムスンバイオの執行停止申立てに関する審問期日を開く。サムスンバイオ会計問題に詳しい関係者は「サムスンバイオが執行停止の審問期日には上場廃止のリスクに触れ、執行停止の容認を主張できたが、今回の上場維持決定によりサムスンバイオが主張するカードが1つ消えた」と語った。

 これに先立って、サムスンバイオはサムスン物産と第一毛織の合併後、子会社の帳簿を合わせる過程で、合弁会社バイオジェンのコールオプションが明らかになると、2015年に財務諸表会計で子会社のサムスンバイオエピスを従属会社から関連会社に変え、4兆5千億ウォン(約4500億円)の会計上の利益を得ている。金融監督院は2017年、サムスンバイオに対する監理に入り、証券先物委は先月14日、「会社の財務諸表上の資本蚕食になることを懸念し、これを解決しようと支配力の変更を含む非正常な代案を積極的に模索したことが明らかになった」とし、サムスンバイオが故意に粉飾会計を行ったと結論を下した。

イ・ワン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/finance/873866.html韓国語原文入力:2018-12-10 22:40
訳M.C

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