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決済手数料0ウォン…ソウル市「やさしいペイ」実験は成功するか

登録:2018-07-26 09:16 修正:2018-07-26 09:44
ソウルペイ、年内導入を公式発表 
消費者→販売者へと口座振替の方式 
小商工人の手数料負担が減る見込み 
 
所得控除40%、チェックカードより高いが 
消費者の利用拡大する誘引策がさらに必要
25日、決済サービスの導入に向けた業務協約式に参加した朴元淳ソウル市長とホン・ジョンハク中小ベンチャー企業部長官=ソウル市提供//ハンギョレ新聞社

 2019年のある日、金決済さんが夕食を終えてスマートフォンを取り出し、食堂のQRコード(情報の模様)を撮った。決済金額を入力してくださいという言葉が現れる。8千ウォンを入力して決済要請を押すと、決済確認メッセージが表示される。口座から8千ウォンが飲食店の店主の銀行口座に即時に振り込まれた。クレジットカードやチェックカード(デビットカード)に似た決済方式だが、大きな違いが一つある。この飲食店の店主がカードや決済プラットフォームに払わなければならない手数料が0ウォンという点だ。

 「ソウルペイ」が導入されれば予想される風景だ。カード決済手数料の負担で苦しんでいる自営業者のための「決済手数料0ウォン」の実験が始まった。ソウル市は小商工人らのカード決済手数料負担を引き下げる代替決済手段である、いわゆる「ソウルペイ」の導入を25日、公式に宣言した。釜山、仁川、全羅南道、慶尚南道などの地方政府も導入の意思を明らかにしており、中央政府も2020年までにソウルペイシステムを全国に拡散させることにした。「やさしい決済」がクレジットカードに代表される既存の決済慣行に変化を起こすか、期待を集めている。

 ソウル市はこの日、中区(チュング)の大韓商工会議所で、中小ベンチャー企業部をはじめ、釜山、仁川、全羅南道、慶尚南道など地方自治体や新韓・国民・ハナ銀行など11の都市銀行、カカオペイなど5つの民間決済プラットフォーム事業者と業務協約を結び、「小商工人の手数料負担ゼロ決済サービス」を今年中に導入することにした。ソウル市が第一歩を踏み出し、釜山など4つの地方自治体も年内に各地域ペイのテスト運用に乗り出す。これは朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長が6・13地方選挙の過程で出した公約だ。

 ソウルペイはフィンテック(金融と技術を結合したサービス)を活用してスマートフォンで販売者のQRコードを認識すれば、消費者の口座から販売者の口座にお金が振り込まれる直取引決済方式だ。つまり、消費者がスマートフォンで自分の銀行口座から店主の銀行口座に直接入金する仕組みだ。

 ただ、口座振込みは銀行のアプリケーションに接続して送金を受ける側の口座番号を入力し、通帳の暗証番号、セキュリティカード番号などを入力する手間を経なければならないが、ソウルペイは消費者が販売者のQRコードを撮って金額を入力した後、決済要請だけをすればよい。逆にギフティコン(モバイル商品券)などを使うときのように、販売者が売り場内の決済端末機(POS)にあるQRリーダー(認識機)で消費者のスマートフォンアプリのQRコードを撮り、決済する方法も可能だ。ソウルペイのための別途のアプリはない。消費者はカカオペイやネイバーペイなど、既に広く使われている簡単決済アプリをそのまま利用すればよい。

 消費者の口座から販売者の口座へ直接お金が振り込まれるため、「クレジットカード決済過程で小商工人らが支払わなければならなかったカード手数料は消え、0%台の手数料が可能だ」というのがソウル市の説明だ。もちろん、この過程でも民間決済プラットフォームの決済手数料と銀行口座振り替えの手数料は発生するが、この日の協約で民間決済プラットフォーム事業者と銀行は小商工人の加盟店決済と関連した使用料と口座振り替え手数料を取らないことにした。

 このようなソウルペイが定着すれば、小商工人らがカード手数料のくびきから抜け出せるようになる見通しだ。今のような決済の構造では、小商工人らのカード手数料は営業利益の相当部分を占めることになる。

 ソウル市が4月に発表した「小商工人のクレジットカード手数料実態調査」によると、自営業者らが負担しているカード手数料は営業利益において、少なくとも3%から多い場合には50%も占めていることが分かった。身の周りでよく見られるコンビニの場合、平均年間売上高は6億7900万ウォン(約6700万円)、営業利益は2900万ウォン(約286万円)だが、カード手数料が900万ウォン(89万円)にのぼった。カード手数料が営業利益の30%に達するほどだ。

 ソウルペイの成功モデルは、中国のモバイル簡単決済サービスであるアリペイ(Alipay)だ。アリペイは中国最高の簡単決済サービスとして知られている。ソウル市の資料によると、昨年末基準で中国のアリペイ使用者は5億2千万人、決済サービスのシェアは54%に達するという。昨年の中国内のアリペイ使用金額も1京6700兆ウォン(約1650兆円)に達した。キム・テヒ・ソウル市経済企画官は「韓国は世界最高水準のスマートフォン普及率を記録しているため、ソウルペイが国内市場に広がる潜在力は十分だ」と話した。

 ソウル市はソウルペイに交通カード機能を入れ、さまざまな公共文化体育施設での割引特典などインセンティブを提供する案を推進中だ。市が支給するオンヌリ商品券、公務員の福祉ポイントなどもソウルペイで使用するよう誘導する計画だ。既存のクレジットカード使用に慣れた市民をソウルペイに引き込むための誘引策が必要だからだ。

 政府は、ソウルペイのような小商工人専用の決済システムが全国で互換性を持てるようにする方針だ。中小ベンチャー企業部はそのために「全ての銀行・簡単決済アプリの使用可能」、「共通QRコード活用」、「決済手数料ゼロに近接」という三つの導入原則を確定し、この日発表した。

 中小ベンチャー企業部はこのような原則による決済システムの導入のため、金融委員会と行政安全部、地方自治体、韓国銀行、金融決済院、民間の専門家らが参加する官民合同タスクフォース(TF)を構成し、法・制度的な障壁や不合理な規制の解決策を模索する計画だ。これに先立ち、政府は小商工人専用の決済システムの使用代金について40%の所得控除の恩恵を与える案を確定している。

キム・ギョンウク、パク・スンビン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/area/854915.html韓国語原文入力:2018-07-26 07:20
訳M.C