「原子力発電がどのくらい高いかを議論すること以上に重要なのは、原発事故費用の支払い責任が誰にあるのかを予め決めておくことです」
先月28日、ソウル中区(チュング)のプレスセンターで会った龍谷大学の大島堅一教授はこう語った。エネルギー転換フォーラム主催のセミナーに招請されて訪韓した大島教授は、2011年の福島原発事故の時から8年間にわたり事故処理の費用を追跡・研究してきた経済学者だ。福島事故は全世界に原発事故の破壊力を知らしめただけでなく、「実際の原発コスト」が私たちが知っていたものとは全く異なるという教訓も教えてくれた。日本政府が2011年に5兆8千万円と発表した事故処理費用は、その後、時間が経つにつれ4倍近く増えた。最近、新たに集計された福島事故処理費用は損害賠償額だけで7兆9千億円、廃炉費用が8兆円、除染費用が4兆2千億円など、合わせて23兆5千億円に達する。これも除染廃棄物の最終処理費用や事故周辺地域の「帰還困難区域」の除染費用などは抜けており、これからさらに増える見込みだ。
大島教授は「原発が事故が起きず、無事に40~60年後に稼動が終了されても、廃炉と核燃料および廃棄物の処理費用は長期的に発生する」とし、「にもかかわらず、原発が安いと勘違いするのは、このような『バックエンド』(後処理)の費用が隠されており、当該費用を誰が負担するのかが不明であるため」だと指摘した。目に見える建設費や燃料費、運転・補修費だけでなく、事故処理費用や廃炉後の費用を負担する主体について議論してこそ、その過程で実際の原発コストが明らかに計算され、実感できるということだ。
責任所在が不明であるため、実際に数兆円の事故処理費用が発生した日本でも、実感と現実の間には大きな隔たりがある。形式的には東京電力が事故被害者に損害賠償を行っているが、財源は政府が支援する。2011年の事故直後、日本内閣は、認可法人の形で「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」を発足させ、「上限を設けず、必要なら何度でも援助し、事業者を債務超過状態にしない」と決定した。
大島教授は「その結果、日本政府は金融機関から莫大な金額を借りざるを得なくなった」とし、「借入による利子まで国民が税金で負担している」と説明した。さらに、「このように実際には東京電力が費用を負担しないため、電力会社は原子力発電所が安いと勘違いしており、またそう主張するようになる」とし、「全般的な費用支給システムがあまりにも複雑で、日本国民も自分たちが税金と電気料金で福島事故費用を負担していることをあまり知らない」と説明した。
韓国でも最近、原発事故処理費用について再び議論が始まった。カン・ジョンミン原子力安全委員長は今年初め、原発事業者である韓国水力原子力の損害賠償責任の上限をなくす原子力損害賠償法の改正を推進すると明らかにした。現在は敷地あたり約5千億ウォン(約500億円)の上限が設けられており、これを超過した損害については責任の主体が不透明だ。原子力安全委員会の法改正の試みに対して、原子力界は「不要な規制強化」だと主張する。これに対して大島教授は「事故処理費用などを負担する意思もなく、原発が安いと言うのは間違っている」とし、「韓国では原発事故処理費用を適切に計算し、その費用負担の主体を明確にすべきだ」と助言した。