本文に移動
全体  > 経済

トランプ大統領のFTA圧迫に対抗する“文在寅流の通商戦略”を練るべき

登録:2017-10-10 04:10 修正:2017-10-10 17:56
米国、開放経済に依存する韓国を第1ターゲットに 
ダンピングでないにも関わらず自国の被害を口実に 
洗濯機などにセーフガードを圧迫 
 
中国のTHAAD報復の裏には貿易赤字への不満が 
ベトナムも「韓国は農産物市場を開放せよ」 
 
政府の「所得主導成長」に合わせ 
中小企業・農漁民重視に切り替えるべき
グラフィック=キム・スンミ//ハンギョレ新聞社

 ドナルド・トランプ米大統領が貿易赤字を理由に「トランプ流の自由貿易協定(FTA)」で韓米自由貿易協定の再編を強要する中、韓国も「文在寅(ムン・ジェイン)流の自由貿易協定」戦略と枠組みを用意して対抗すべきという声が高まっている。特に、改定の局面に陥った状況をきっかけに“激しい保護貿易主義の波”が押し寄せる変化した通商環境に合わせ、自由貿易協定をめぐる戦略を全般的に再検討しなければならないという指摘だ。

 9日、関税庁によると、韓国が自由貿易協定を結んだ52カ国(15の協定)との貿易(輸出入)規模は今年上半期3504億ドルで、上半期の総貿易(5135億ドル)の68.2%を占める。しかし、最近、韓米自由貿易協定をめぐる波紋が示すように、2008年の金融危機以来、低成長に陥った各国は自国優先主義や保護貿易主義などを掲げ、生き残るための道に突き進んでいる。トランプ大統領が韓米自由貿易協定に対する不満を噴出させたのは、小規模開放経済の韓国経済が変化した通商環境で真っ先にターゲットになっていることを示している。

韓米FTA両国商品(農産物を含む)の譲許結果//ハンギョレ新聞社

 自由貿易協定は保護貿易と輸入規制の“盾”の役割もほとんど果たしていない。米国は今年に入って韓国製洗濯機・鉄鋼・太陽光パネルなどについて16年ぶりにセーフガード(緊急輸入制限)カードを取り出し、全面的な通商圧力を展開している。市場価格より安価で売る「ダンピング」ではないにもかかわらず、自国産業の被害を理由に圧迫を加えている。

 中国の“THAAD(高高度防衛ミサイル)報復”に対しても、2015年12月に発効された韓中自由貿易協定の枠組みでは解決策が見当たらない状況だ。産業研究院のチョ・チョル研究委員(中国産業研究部長)は「中国の通商官僚は韓国を自国のほぼ唯一の貿易赤字国と見なし、不満を隠せない」とし、「THAAD報復の裏には産業政策レベルで自国産業を保護しようとする意図がある」と話した。ベトナムとの自由貿易協定(2015年12月に発効)をめぐっても、貿易赤字攻勢で摩擦が生じている。産業通商資源部の関係者は「ベトナムの通商官僚らが昨年200億ドルに増加した対韓貿易赤字に抗議し、農産物市場の開放を求めている」と話した。

韓国のFTA締結の現況//ハンギョレ新聞社

 通商当局は、間近に迫った韓米自由貿易協定の改定戦略として、両国間の相互利益をさらに拡大するいわゆる「拡大利益の再均衡」を設定したとされる。しかし、米国が「貿易赤字の解消」を改正目標に掲げているだけに、相互利益の拡大及び再均衡を図ることは極めて困難な状況となった。これに伴い、韓米自由貿易協定だけでなく、すべての自由貿易協定の戦略目標を大幅に修正すべきという声が高まっている。2000年代に入ってこれまで維持されてきた開放・投資・輸出主導の自由貿易協定体制への依存性を減らす前面的な変化が必要ということだ。大邱大学のキム・ヤンヒ教授(経済学)は「従来の自由貿易協定は輸出を増やし、外国企業に市場を開放することで国内サービス分野の競争力を高めると共に、外国人投資をさらに誘致することを目標にしていたが、これが社会経済的弱者にも恩恵をもたらしたのかを冷徹に再評価し、検討してみる必要がある」と話した。

 具体的には文在寅(ムン・ジェイン)政権が掲げた「所得主導の成長」に歩調を合わせ、自由貿易協定も輸出大企業を中心としたものから離れ、中小企業・自営業者・農漁民などを重視する方向に切り替えるべきという指摘もある。キム教授は「文在寅政権が所得主導成長というパラダイムを提示したが、これには国内部門だけでなく、対内外を統合した政策・制度設計が必要である。韓米自由貿易協定の改定交渉にもこのような観点で臨むべきだ」と付け加えた。一字一句も変えられないという現状維持の目標から離れ、所得主導成長のパラダイムに合わせて自由貿易協定の追求戦略を新たに組まなければならないということだ。そうしてこそ、今後改定交渉で必ず守らなければならないマジノ線も「二極化と不平等の解消」という新政府の政策課題に合わせて設けることができる。ソン・ギホ弁護士(民主社会のための弁護士会通商委員長)は「『経済領土大国』という根拠のない論理で推進してきた自由貿易協定政策を根本的に見直し、経済民主化を支える通商モデルを築かなければ、韓国内部的にトランプ流の不合理な自由貿易協定に立ち向かえない」と話した。

チョ・ゲワン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/813778.html 韓国語原文入力:2017-10-09 22:06
訳H.J(2185字)

関連記事