韓国の地図データを国外に出せるようにしてほしいというグーグルの要請に、韓国政府が悩みが深まっている。聞き入れれば「国家安保に穴をあけ、国内企業を逆差別してまでグーグルに特典を与えた」と指摘されるおそれがあり、拒否すれば「技術発展の流れに逆行し、外国人観光客誘致および冬季オリンピック活性化努力に冷水を浴びせる」という批判を受けかねないためだ。米国政府側の水面下の圧迫の動きも負担になる。
20日、韓国政府および業界の話を総合すると、国土交通部は22日、外交部、統一部、未来創造科学部、国防部、行政自治部、産業通商資源部、国家情報院と非公開の実務会議を開き、グーグルの地図データ国外搬出申請の件について協議する。各部署がグーグルの申請に対して自らの意見を明らかにし協議する予定だ。政府関係者は「グーグルが直接地図データ搬出申請をしてきたのは初めてだ。国家安保、産業に及ぼす影響、税金問題などを総合的に検討するものと見られる」と明らかにした。
これに先立ちグーグルは2日、地図データの国外搬出を認めてほしいと政府に申請した。グーグルコリアは申請理由として、「外国人観光客が不便を被り、韓国の多くの企業や起業家がグーグルと手を握って開発中の自動運転車などが韓国では無用の長物になる状況を、これ以上は放置できないという判断に従った」と説明した。地図データはマイクロソフト(MS)、アップル、アマゾンはもちろん、中国のグローバル・インターネット・サービス事業者も狙っている。これに対する韓国政府の決定に耳目が集中している。
地図データは、住所、建物、地域名など地図を構成するデータをいう。これを衛星地図と結合すれば、詳細で立体的な地図が完成する。暮らしを便利にするサービスが多様に登場する反面、セキュリティー施設まで露出させ安保に悪影響を与える問題もある。「空間情報の構築、および管理等に関する法律」は、国家安保を理由に詳細地図データの国外搬出を禁止している。国内の地図道路案内サービス事業者は、大統領府と軍の主要施設など安保と直結する部分については削除したり隠している。この間グーグルは、韓国国内ではSKテレコムと提携し地図サービスを提供してきた。
政府部内でも意見は交錯している。国防部と国家情報院は安保に及ぼす影響を挙げて反対する。地図データの収集・製作・管理を担当する国土地理情報院も否定的だ。反面、外交部、産業部、文化体育観光部は米国政府の要求、外国人観光客の便宜、平昌(ピョンチャン)冬季オリンピックなどを理由に反対しないことにしたという。未来部はインターネットサービス産業の活性化と技術発展のために、自由な利用を許容することが必要だと判断しつつも、安保関連事項という理由で公式立場を出していない。
韓国国内の関連業界は、国内業者への逆差別、およびグーグルの「租税回避」問題などを挙げて反対する。ある業界関係者は「国内事業者は関連法により国家安保関連の部分は削除したり隠してサービスしているが、グーグルは(全世界に同じサービスを提供するという)いわゆる『グーグルの原則』によりそうしない可能性が高い。その場合、国内のサービスが逆差別を受けることになる」と話した。別の業界関係者は「グーグルは外国人観光客の便宜のためというが、実際には位置基盤広告や自動運転車のような新事業を韓国でも政府の規制や審査を受けずに推進するという目的が大きいものと見られる」と指摘した。
専門家らは「グーグルが韓国に別途のサーバー(コンピュータ)を設置して地図データを管理すれば、すべての問題はきれいに解決できる」と指摘する。この場合には、グーグルが韓国の国内法と政策に従って、韓国に税金を払うようにさせるメリットもある。グーグルはこれまで韓国には事業場がないという理由で、政府の政策と法適用対象から外れ、納税義務も避けてきた。グーグルは韓国国内に別途サーバーを設置して問題を解決する方案について「クラウド時代にはデータが全て分散保存され、韓国にデータセンター(サーバー)を置いても搬出許可が必要だ。国内にサーバーを置くことは解決策にならない」と明らかにした。