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[経済と人] 作戦名‘ネマキ(生涯最後のキーボード)’スマートフォンのタイプミスを減らせ!

登録:2014-06-29 19:06 修正:2014-06-30 06:45
LG G3キーボードを変えた人々
LG電子が先月発売した新型スマートフォンG3は‘シンプルがスマート’というコンセプトで企画された。 左からLG電子MC商品企画グループ パク・ヒョンチョル部長、パク・サンウク社員とMC研究所ホン・ジヨン責任研究員、チョン・ホジェ専任研究員. LG電子提供//ハンギョレ新聞社

 2011年にLG電子に入社したパク・サンウク(30)氏は一貫してスマートフォンのキーボードを担当してきた。 世界各国の顧客から寄せられたキーボードと関連する小さな不満を反映し補完することが彼の主な仕事だった。 文字表にこんな記号があったらうれしい、というのが彼がよく接する不満だった。 たかがキーボード、誰も別に重要だとは考えないことだった。

 そんなパク氏が突然に新型戦略スマートフォン企画の中心人物になった。 G3の準備が始まってからだ。 ‘シンプルがスマート’というコンセプトが決められて、華麗な新技術よりは最も基本的な機能に集中しようという方向が決まった。 その結果、自然にキーボードが浮上した。 パク氏は「私たちが調査したところ、スマートフォン ユーザーは5分に1回ずつスマートフォンのキーボードでタイピングをしています。 通話は一日に1・2回しかしない人も携帯メールやソーシャルネットワークサービス(SNS)を使うのに一日数十回もキーボードを使うのです。 スマートフォン ユーザーが最も多くする行動がタイピングです。」と話した。

 社内プロジェクト名は‘ネマキ’に決まった。 ‘私の(ネ)生涯最後の(マジマク)キーボード’の頭文字を取った。 既存キーボードの問題点は何か。 最初に取り上げた問題は、問題が何かが分かり難いということだった。 多くの人々はすでに使っているキーボードを当然のこととして受け入れている。 不満も言わなかった。 アプリケーション マーケットに上がっている20余りのキーボード アプリを全てダウンロードしてみた。 ユーザーの感想を見れば、キーボードが高すぎる、または低すぎるという評価があった。 人により手の大きさが違い、特に男性と女性の手は大きさが違うのに、今まで同じキーボードを使い続けていたわけだ。

 論文もくまなく調べた。 スマートフォンでタイプミスが多く出る理由は、指でタッチするキーボードの部分と、入力した文字が表示される画面が遠く離れているため、視線の移動距離が長いためだという分析があった。 実際に視線移動を記録する‘アイ トラッキング(eye-tracking)’装置を使って実験してみると、タイピング時に瞳が画面最下部のキーボード部分と画面最上部の入力ウィンドウの間をこまめに往復していた。

 タッチ領域の分析も行った。 多くの人々のタイピングを分析してみると‘スペースバー’をタッチする時、目標地点より右下をタッチする傾向があるという事実を発見した。 従って、スペースバーを押そうとしたのに、右にある終止符を押すタイプミスが頻繁に起こっていた。 スペースバーはキーボードで最も頻繁に使われるボタンだ。

 言語によって、また社会的地位によって、多く使う文字に違いがあった。 韓国語は終止符がなくとも文章が終わったことを知ることが出来るが、英語ではそうでない場合が多い。 若い女性たちはハートマークを多用するが、部下の職員に確認することが多い会社幹部はクエスチョンマークを最も多く使っていた。 LG電子モバイルコミュニケーション(MC)研究所UX(使用者経験)室のホン・ジヨン責任研究員は、「スペースバーの右側ボタンに終止符を配置すべきか、クエスチョンマークを配置すべきかを巡って深刻な論争があった」と話した。

 こうした非常に小さな分析を経てG3の‘スマート キーボード’が誕生した。 ユーザーが自分の手の大きさに合わせてキーボードの高さを自由に調節できるようにした。 視線移動を最小化するために、キーボードの真上に入力中の文字を表示する小さな窓(ウィンドウ)を作った。昔のタイプライターから得たアイディアだった。 生まれたのが遅くて、タイプライターと同じ時代を過ごせなかったパク氏は、ソウル黄鶴洞(ファンハクトン)古物市場を訪ねて行き、骨董品のタイプライターを見物した。 スペースバーを既存のキーボードよりはるかに長くした。 スペースバーの隣の終止符の場所を巡って、クエスチョンマーク、終止符、ハートマークが行った戦争に終止符を打ち、ユーザーの望む文字を選択できるようにした。 タッチ領域分析技術を発展させてユーザーが習慣的に起こすタイプミスを分析し、タッチ領域を自動補正しながらタイプミスを最小化できるようにした。

 結果は満足のゆくものだった。 パク氏がLG電子の前作スマートフォンであるG2で、愛国歌の1節をタイプミスせずにタイピングするのには1分かかったが、G3では練習するたびに速くなり、発売前には15秒を切った。 G3の商品企画を総括したパク・ヒョンチョル部長は「2007年にスマートフォン時代を切り拓いたアップル iPhoneのキーボードが今まで標準のように使われてきた。 画面の大きさが3.5インチしかない小さなスマートフォンで使うために作ったものなのに、今の画面が5インチを越えるスマートフォンでも何も考えずにそのキーボードを使い続けた。 G3が初めてアップルの作ったキーボードの規則を打破した」と話した。

 成功したUX(使用者経験)とは何だろうか。 G3のUX全般の責任を負ったチョン・ホジェ専任研究員は「習慣」だと答えた。 「LGスマートフォンのユーザーは他社製品を見ても消えている画面を指でノックします。 LGスマートフォンだけで可能な‘ノックオン’(別にボタンを押さずに画面を二回連続でノックすれば画面が点灯する機能)が習慣になったということでしょう。 周囲にいるG3ユーザーを見れば、皆キーボードの高さを好きに設定していました。 スマートキーボードが新たな習慣になりそうです。」ホン・ジヨン責任研究員は「今までスマートフォンは新しい機能、不思議な機能がいくつあるかを巡って競争してきた。 CMで見ればもっともらしいが、実際にはユーザーはほとんど使わない機能だった。 今後はユーザーの使用実態を注意深く分析して、実際に使い必要な機能をベストを尽くして匠の精神で作る方向に製品哲学が変わるだろう」と話した。

ユ・シンジェ記者 ohora@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/644575.html 韓国語原文入力:2014/06/29 16:49
訳J.S(2843字)

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