三星(サムスン)ディスプレイが最も重要な子会社である三星コーニング精密素材(三星コーニング)の株式持分をまるごと米国コーニングに譲渡し、代わりに米国コーニング本社の株式を大量に買いとる内容の包括的事業協力契約を結んだ。 三星側は40年に及ぶ三星ディスプレイとコーニングの協力関係を格上げするためのものと説明した。
財界内外からはこのような公式説明の他に、別の背景があるのではという分析が出てきている。 イ・ゴンヒ 三星会長の義理兄弟であるホン・ソッヒョン中央日報会長が持っていた三星コーニング持分7.3%も売却対象に含まれ、三星と中央日報一家間に残っている株式所有次元の唯一の連結リングが切れるためだ。
三星ディスプレイは23日、計23億ドルを投資してコーニングの転換優先株式を取得する予定だと明らかにした。 7年後に転換優先株が普通株に転換されれば、三星ディスプレイはコーニングの持分7.4%を保有した最大株主となる。 三星側はコーニングの経営には直接参加しないと明らかにした。 代わりに三星ディスプレイが持つ三星コーニング持分42.6%は全量コーニングに譲渡することにした。 コーニングは三星コーニングのその他持分まで全量買い取り、三星コーニングを100%子会社化すると発表された。 ホン会長の三星コーニング持分もコーニングへ譲渡されるという話だ。 会社名からも三星が外れる展望だ。
三星ディスプレイは株式代金(19億ドル)と会社所有の現金性資産などの処分を通じて、コーニング本社株式購入資金を除いても、1兆ウォン以上の現金を確保するものと見られる。 ホン会長は6300億ウォン程度を手にするものと推定される。
三星ディスプレイは今回の契約で液晶表示装置(LCD)用ガラス基盤の生産に限定され、同時に韓国内だけで営業することになっている三星コーニングの事業領域が広がり、次世代ディスプレイ開発のための協力が強化されると説明した。 パク・ウォンギュ 三星コーニング社長はこの日、役職員に送ったEメールを通じて「今回の決定はLCD産業が成熟期に入り込み、販売価格が下落して需要が停滞するなど2010年から会社が逆成長しているためだ。 今後LCD基板ガラスを追加生産し、コーニングの強化ガラスであるゴリラガラスの生産を通じて設備稼動率と人材活用度を高めることができる」と明らかにした。
持分関係が整理されても、三星コーニングと三星の関係は当分続くものと見られる。 すでにLCD用ガラス基盤の長期供給契約が結ばれているためだ。 三星とコーニングが5対5で出資した有機発光ダイオード(OLED)ガラス基盤会社である三星コーニングアドバンスドグラスもそのまま維持される。
三星側の説明をそのまま受け入れるとしても、首をかしげざるを得ない部分が少なくない。 まず三星コーニングは昨年3兆2100億ウォンの売上に1兆6700億ウォンの営業利益を出した最も重要な会社だ。 また、利益をほとんど100%配当に割り当てるので三星ディスプレイに来る配当金額が侮れない。 昨年三星コーニングの配当額は1兆3300億ウォンであり、この内5660億ウォンを三星ディスプレイが受け取った。 ホン会長は970億ウォンを手にした。
配当祭りを行った2011年には、ホン・ソッヒョン会長一人で2462億ウォンを受け取り、その年の配当1位を記録しもした。 現在LCD市況が良くなくて、売上と営業利益が急減してはいるが、今後も数年間は‘キャッシュカウ’(資金源)の役割を果たせる所だ。 LCDやOLED用ガラス基盤は、よく似た製品だという点を考慮すれば、昨年あえて三星コーニングアドバンスドグラスを別に構えたことも疑問点として残る。
一部では今回の契約で、三星と中央日報一家の持分関係が完全に切れることに注目している。 三星の創業者であるイ・ビョンチョル会長が1965年に創刊した中央日報は、1999年に三星と完全分離したが、依然として汎三星一家と見なされており、ホン会長の三星コーニング持分はその象徴だった。 これに対して三星関係者は「他のグローバル企業と持分をやりとりする重要な契約に、事業以外の他の考慮事項が入る筈がないではないか。 未来ディスプレイ戦略のための事業調整であるだけ」と話した。 イ・ヒョンソプ記者 sublee@hani.co.kr