中堅企業に通っていたキム・某(53)氏は2010年8月退職後ソウル道峰区(トボング)にピザ店を構えた。 2008年世界金融危機の余波で危なくなった会社が定年を数年先に控えたキム氏に希望退職を要請したためだ。 キム氏にはまだ高等学校に通う末娘のことを考えて‘もう少し金を稼がなければならない’と決心し、退職金を全てはたいて開業した。 しかし近隣にフランチャイズのピザ店をはじめ、小規模チキン・ピザ配達業者が雨後の筍のように増えた。 2012年だけでキム氏の店がある双門洞(サンムンドン)一帯に3~4ヶ所の店が開いた。
‘レギュラーピザ’一枚 1万ウォン~1万2000ウォン台に価格を合わせようとすれば味をまともに出せなかった。 需要が増えない以上、最低価格競争を行って、我慢くらべをせざるを得なかった。 結局、キム氏は昨年11月に店を整理した。 キム氏は去る2月、知り合いの手助けで、月給制の給食施設納品代行を始めた。 食材料納品用の有蓋トラックを購入するのに、店を整理して残った3000万ウォンもそっくり消えた。 キム氏は 「1億ウォンを越える資金を投資したのに、こんなにあっさりと数年でなくなるとは思いもしなかった。 それでも赤字にさえならなければ良しとせざるを得ない店をこれ以上維持することはできなかった」と話した。
企画財政部は7日‘最近の自営業者動向と示唆点’資料で、去る1月に自営業者数が前月より2万1000人減った569万7000人となり、18ヶ月ぶりに減少傾向を記録したと明らかにした。 2011年7月以後続いた自営業者急増傾向が調整期を経て減少傾向に反転した。 キム氏のような境遇に陥る自営業者がますます増えるという話だ。
この指標を専門家たちは憂慮をもって眺めている。 景気鈍化で自営業に追い込まれた庶民らが、自営業競争からも脱落して廃業に至るのではないかということだ。 実際、自営業者の増加・減少パターンは景気循環に遅れて追随する傾向を見せてきた。 1997年国際通貨基金危機を体験した後、自営業者は大幅に増えて2000年代中盤に入り調整期を経た。 2008年世界金融危機前後まで下降傾向を維持した自営業者数は2010年に551万人で10年間の最低値を記録した後、急増に転じ2012年12月には571万8000人まで増え、今また調整期に入ったという意だ。 財政部関係者は「雇用と自営業比率は特に時差を置いて景気循環に追随する姿を見せる」として「自営業に追い込まれた人口が調整期を経る可能性が高い」と話した。
問題は自営業者の生存率だ。 国税庁資料によれば、2011年に廃業した自営業者は自営業者全体の16%に達した。 5人が営業している間に1人は廃業した計算だ。 長期生存率も低水準だった。 昨年KB国民カードの調査結果を見れば、10年間に創業した自営業者100人の中で75人が廃業した。 特に創業後3年以内に廃業する自営業者が47%に上り、半数程度が3年も耐えられなかったことが明らかになった。
これについて亜洲(アジュ)大チェ・ヒガプ教授(経済学)は「2010~2011年以後に自営業に追い込まれた人口がぞろぞろと廃業し脆弱階層に転落する可能性が高い。 雇用市場から追い出された家長たちが低熟練状態で安易に飲食店、小売店などを創業した後、2~3年で失業者に転落する悪循環が現れるということ」と診断した。 実際、この日財政部資料を見れば、自営業者は飲食店、宿泊業、卸小売業などで大きく減少したことが分かった。 去る1月、飲食・宿泊業と卸小売業の自営業者は2012年12月に比べてそれぞれ2万8000人が減ったと推算された。 代表的な庶民型創業業種が過密現象を示し、結局廃業率まで高く現れたのだ。
また、このような現象は50代以上のベビーブーム世代の引退年齢とも密接な関係を持つことが明らかになった。 財政部は「ベビーブーム世代(1955~1963年)が50代に進入して引退した後、自営業者創業に乗り出したことも大きな影響を及ぼしたと見られる」として「人口構造とも密接な影響を持つと見られるだけに、持続的なモニタリングが必要だと見る」と明らかにした。
ノ・ヒョンウン記者 goloke@hani.co.kr