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"原子力発電所 擁護する人が選挙で選ばれない雰囲気を作れば良い"

原文入力:2011//11/22 20:33(3749字)
ナム・ジョンヨン記者


東北アジアの脱核 安斎育郎 教授-チ・ヨンソン環境運動連合代表 対談


←安斎育郎(70・写真左側)立命館大学名誉教授とチ・ヨンソン(右側)環境運動連合共同代表


安斎育郎 教授 核廃棄物 10万年以上残り
未来世代の自由を制限する暴力の一つがまさに原発
チ・ヨンソン環境運動連合代表
北アジアは原発の火薬庫
韓・中・日 脱核連帯 必要
市民社会が政府追求をすべき


我が国西海(ソヘ)と接した中国の東海岸で原発事故がおきればどうなるだろうか? 放射性物質は偏西風に乗って西海を渡り韓半島に上陸し、まもなく日本列島にも渡っていく。放射能に直接露出している中国、東海岸と韓国、日本の人口だけで2億人を越える。福島原子力発電所事故直後にも韓国と中国で‘原子力ルネサンス’の火は簡単に消える様子が見えない。ハンギョレ統一文化財団と釜山市が去る21~22日、釜山市、海雲台(ヘウンデ)のヌリマルAPECハウスで開いた‘2011ハンギョレ-釜山国際シンポジウム’は福島原子力発電所事故以後の東北アジアを省察した。 特に安斎育郎(70・写真左側)立命館大学名誉教授は基調演説で韓・中・日の脱核連帯を促した。 21日チ・ヨンソン(右側)環境運動連合共同代表が安斎教授に会い東北アジア脱核の可能性を討論した。

チ・ヨンソン環境運動連合共同代表(以下チ・ヨンソン)福島原子力発電所事故がおきて8ヶ月が過ぎた。事故の経過はどうなのか?


安斎育郎立命館大学教授(以下、安斎)まだ原発の内部状況を正確にわかっていない。原子力発電所内に入ることができないためだ。 私は1970年代から原発反対運動をしながら「隠さずに、嘘をつかず、意図的に過小評価するな」と訴えてきた。福島の住民たちがいた所の放射線濃度は時間当り10マイクロシーベルトで東京より100倍以上高かった。 それでも病院に行ってX線を一回撮るより少ない量だとし過小評価する印象を与えた。


チ・ヨンソン 現在の福島の放射能汚染状態はどの程度か?


安斎 原子力発電所周辺地域は数十年間、人が入ることができないほどだ。去る3月11日の事故後、放射性物質が風に飛ばされ地面に落ちたのでそれを除去しなくてはならない。放射能は化学薬品や微生物でも除去できない。


チ・ヨンソン 放射能に汚染された土をどのように処理するのか気になる。
安斎 まず人が集まる学校の運動場と公園から放射能を除去しなければならない。 近いところにある汚染された土を埋めてビニールで覆うことが今できる最善策だ。東京都で福島放射能廃棄物50万tを引き受けることにしたが良くない考えだ。危険は分散するより集中管理する方が安全だ。福島原子力発電所周辺に放射能廃棄物を集中させて管理し、今後浄化方法が開発されれば処理すれば良いことだ。


チ・ヨンソン 福島事故を体験した日本が脱核に向かっていると見るか?


安斎 少なくとも市民たちの意識は変わった。イタリアのように国民投票をすれば約80%が脱原発を選択すると見る。だが、政府と産業界はそうではない。事故初期に政府が脱核で行くのではないかと思ったが、ますます元々のままに戻っている。


チ・ヨンソン 福島市議会は地域内原発10基を全面撤収しろと政府に要求したと聞いた。自民党議員らも参加したが、脱核に反対したらまもなくある選挙で敗北すると思って心配したからだろう。そのような形で政府の政策が変わる可能性を示すのはでないか?


安斎 福島の原発10基のおかげで福島県は補助金100億円を受け取っている。原子力発電所をなくせば補助金が飛んで行く。だが、福島事故は100億円では解決しないのではないか。住民たちがそのことを悟った。カギは国民が支持するエネルギー政策を行うことができる政府を作れるかだ。


チ・ヨンソン 韓国の原子力発電所推進派たちも原子力発電所反対を封じ込めようと攻勢を取っている。現在、原子力の電力比重は34%だが、2030年までには59%まで引き上げる計画だ。さらに深刻な問題は十分な世論収斂なしで韓半島、東海岸に核再処理施設と高速増殖炉、韓国型スマート原子炉開発のための大規模‘原子炉クラスター’を準備中だという点だ。


安斎 ヨーロッパは高速増殖炉の開発を止めたが日本は相変らず推進中だ。福井県にあるもんじゅ高速増殖炉は1995年の流出事故で稼動が中断された。 15年間、直して昨年稼動したが、また冷却装置に問題が発生した。現在まで建設と復旧だけで2兆4000億円かかった。この程度のお金があれば再生エネルギー開発に使うべきであった。もう一つ話をしてみよう。 10万年前にネアンデルタール人が暮らしていた。 高速増殖炉から出る核廃棄物は10万年以上なくならずに残る。何百世代にわたり子孫たちに「後は頼む」と押し付けることだ。 こういう高速増殖炉を韓国がやろうとしているとは…。


チ・ヨンソン 去る9月、東京で6万人が脱核デモを行った。日本の市民団体はどのように活動しているか?


安斎 各地域の草の根団体が脱核運動を行っている。地域の声が合わさって政府と産業界に問題提起をし、原子力発電所を擁護する人が選挙で選ばれない雰囲気を作れば良い。


チ・ヨンソン 韓国も同じだ。 最近ではソウル、蘆原区(ノウォング)、月渓洞(ウォルゲドン)で放射性物質が含まれたアスファルトが発見されたが、注目すべき点は主に主婦たちが集まった‘チャイルドセーブ’という団体が初めて問題を提起したことだ。 最近では教授90人が‘脱核エネルギー教授会’を作った。 カトリック教会の正義平和委員会も原子力発電所反対を明らかにした。


安斎 住民たちが自ら切り開いている点が大変重要だ。知識人は原子力発電所の構造的問題を明らかにして他のエネルギー体制への転換を要求しなければならない。


チ・ヨンソン 両国が似た状況と課題を抱えている。脱核のための前提条件がある。最初に、1%のために99%の国民と未来世代の安全を担保にする原子力発電所政策の非民主性を知らせなければならない。 二番目、過度な電力消費を減らさなければならない。 三番目は再生エネルギーを拡大しなければならず、四番目は脱核を標ぼうする政党が必要だ。 市民団体が来年4月の総選挙と12月の大統領選挙でエネルギー問題がイシューになるべく動かなければならない。


安斎 ‘欲望という名前の電車’に乗った現代人は便利な側にばかり行こうとする。 政府と企業は電車の速度を向上させることだけに熱中している。


チ・ヨンソン 東北アジアは原子力発電所の火薬庫だ。脱核のためには韓・中・日市民社会の連帯が必要だ。不幸な事故が起こった時、国家間協力も必要だが、三ヶ国の連帯の可能性をどのように見るか?


安斎 自民党や民主党など日本の政党らは過去の歴史認識がとても遅れている。 国家が互いに連帯しないなら市民社会が先に協力しなければならない。


チ・ヨンソン 共感する。‘東北アジア脱原発自然エネルギーネットワーク’という知識人らのネットワークが作られている。


安斎 中国も積極的に参加すれば良いのだが…まだ中国は個人がアイデンティティを発揮するのが難しい条件にある。 来年3月、福島事故1周年になれば放射能流出問題は解決されるだろうという話が出るだろう。それに対応して真実を知らせなければならない。


釜山/整理 ナム・ジョンヨン記者 fandg@hani.co.kr


写真キム・ジョンヒョ記者hyopd@hani.co.kr


安斎育郎教授は誰?


安斎育郎 立命館大学名誉教授(放射線防護学・写真)は日本の著名な平和学者であり平和運動家だ。日本の過去の歴史を反省している代表的な良心的知識人に選ばれる。韓国には尹東柱詩人の詩碑建設委員会設立を主導して広く紹介されもした。


安斎は東京大学工学部原子力工学科の1期卒業生だ。原子力が未来エネルギーの寵児に浮上した時期の夢多き科学者であった彼はすぐに原子力の災難的な裏面を悟り批判的な科学者としての生活を送ることになった。日本科学者会議原子力発電問題研究委員会委員長として反原発運動を科学的に支援し、福島・新潟・愛媛地域の原子力発電所を巡る行政訴訟にも関与した。だが、日本が原子力発電所55基を作る間に安斎は政府と原子力産業界と学界から異端児の烙印を捺された。彼自身は「学界で集団除け者にあった」と言う。


彼にとって脱核と平和は不可分の関係だ。安斎は「原発も未来世代の自由を制限する暴力の一つ」と主張する。去る3月福島事故直後にも<福島原発事故どうすべきか-日本の原発政策>、<家族と話す、放射能で汚された食卓>などを書き活発な活動を継続している。 ナム・ジョンヨン記者


原文: https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/506646.html 訳J.S