原文入力:2011-02-22午後08:05:59(2990字)
北極グマの権威者 アムストロプ‘生存シナリオ’注目
"温室ガス2020年水準維持…低減対策に希望"
各国 縮小計画合意さえできず現実化は未知数
ナム・ジョンヨン記者
←海氷は北極グマの生活基盤だ。地球温暖化で海氷が溶ければ北極グマの棲息地が縮小され絶滅の危機に立たされることになる。写真は北極グマ一頭が雪に覆われた北極を歩いている姿。<ハンギョレ>資料写真
地球温暖化は北極グマにどんな影響を及ぼすだろうか?
私たちは北極グマを救うことができるだろうか?
最近、地球温暖化で絶滅の危機に陥った北極グマは、ある程度は地球温暖化が持続するとしても生存可能だという研究結果が出た。これまでは北極グマが今世紀中に絶滅するという予想が支配的だった。
北極グマ研究の最高権威者に選ばれるスチーブン アムストロプ博士は米国地質調査局(USGS)研究チームと共に去る1月、科学専門紙<ネイチャー>に温室ガス低減努力が海氷と北極グマの生存期間に及ぼす影響を究明した論文を載せた。
これらは北極グマに希望のメッセージを送った。温室ガス排出量を減らし温室ガスの濃度を2020年水準に維持できれば北極グマの絶滅は避けられるだろうというものだ。研究チームは気候変化政府間パネル(IPCC)が出した気候変化シナリオ中で最も現実化の可能性が大きいA1Bシナリオなど温室ガス排出シナリオと海氷面積、そして北極グマ棲息地をモデリングし こういう結果を勝ち取った。
研究結果を見れば、人類が温室ガス濃度を2020年水準で維持する温室ガス低減対策を実行する場合、現在450万~500万平方kmの北極海氷が2030年代に200万平方kmまで半分以上が減り、2050年代から250万~300万平方kmに増え安定化されると推定した。このようになれば北極グマの生存率も高まる。今世紀末の北極グマ絶滅可能性は北極圏4ヶ圏域中 2ヶ圏域で30~50%と比較的高く現れたが2ヶ圏域では現在の水準と同等か、もしくは若干減ると予想された。
←年度別9月北極海氷面積予測量
反面、温室ガス低減対策が実行されない場合、北極の海氷は2020年代から急速に溶け、今世紀末に大部分が消える。北極グマの絶滅可能性も4ヶ圏域全てで50~80%に高まるという予想が出てきた。
今回の研究で注目に値する部分は海氷が完全消滅に至る臨界点である‘ティッピング ポイント’が観察されなかったという点だ。ティッピング ポイントは突然 北極の海氷が崩壊しながら復元不能なまでに溶ける時期をいう。湖に浮いているカヌーが弱い波では安定を取り戻そうとするが、波が特定水準より大きくなれば突然にひっくり返る様相と似ている。
科学者たちが北極でティッピング ポイントを予想する理由はいわゆる‘量のフィードバック’過程(グラフィック参照)がそれを支配しているためだ。地球が暖かくなれば海氷が溶ける。それに伴い日光を照り返す白い面積が減り海と地表面はさらに多くの太陽輻射エネルギーを吸収する。地球大気の温度は一層高まる。その結果、また海氷が溶ける。このようにして北極の熱力学が自己強化的に作用しながらある瞬間に温度の均衡が破綻し海氷が崩壊するということだ。
2007年アムストロプ博士と地質調査局研究チームは悲観的な展望を出した経緯がある。世界の北極グマ2万2000頭の内、3分の2が2050年までに消え、残りの北極グマも絶滅にいたるというのが当初の予想だった。これは米国連邦政府が翌年5月に北極グマを‘絶滅危機保護法’の危機種に選定する根拠となった。アムストロプ博士は「2007年の研究は当時の排出展望値(BAU)シナリオで仮定したもので、温室ガス排出量増加傾向の減少可能性を想定しなかった」とし「今回の結果はまだ北極グマを救うのに遅くないということを示す」と話した。
もちろん今回の結果が楽観的というわけではない。2020年までに温度上昇を産業化以前にくらべ2度以内に抑えるという2009年コペンハーゲン気候変化首脳会議の合意文さえ各国の縮小計画を導きだせずに宣伝的な規定に留まっているためだ。
極地研究所のキム・ソンジュン極地気候研究部長は「2050年以前に北極の海氷がティッピング ポイントを越えるというのが関連学者たちの大まかな意見」としながら「だが、気候モデルはモデル設計により結果が変わりうるため正解はない」と話した。
ナム・ジョンヨン記者 fandg@hani.co.kr
北極グマ、そこが気になる
冬眠? 夏眠! 純種だけ? 雑種も!
■北極グマも冬眠をするんですか? 智異山の半月熊を研究した国立公園管理公団生態復元チームのヤン・トゥハ博士は「一般的に熊は餌の少ない時期に活動を最小化する」とし「半月熊が冬を控えドングリを食べ体脂肪を増やした後に冬ごもりに入るのとは反対に、北極グマは冬にアザラシなどをハンティングし体重を増やした後、夏になれば活動を最小化する」と話した。もちろん北極グマが半月熊のように洞穴を掘って寝たりはしない。内陸の海岸で活動を最小化しながらエネルギーを節約する。一種の‘夏眠’というわけだ。
■北極グマはアザラシしか食べないんですか? 夏に活動を最小化する北極グマはその頃に内陸の海岸で野イチゴ、動物の死体などを漁る。本来、夏の海岸は凍らず高緯度の北極海氷までは接近不可能なためだ。地球温暖化のためにアザラシを食べられずに植物を食べるわけではない。
■動物園があるならば北極グマは絶滅しないでしょう?
北極グマは動物園で繁殖することが難しい。北極とは異なる気温と閉じ込められた環境から受けるストレスのためだ。したがって動物園で北極グマが繁殖すればニュースとなる。2006年ドイツのベルリン動物園で生まれたクヌートはそういう理由で有名になった。ソウル陵洞のオリニ大公園のノ・ジョンオク飼育係りは「2009年に雌北極グマのオルミの腹がやや高く突き出ていて飼育係りたちが妊娠と感じ分娩室を作ったりもしたが間違いだったと発表された」と話した。北極グマをはじめとする熊類は交尾後に受精卵がすぐに着床せず出産2月前にからだの状態と餌の条件を見て着床する。体もあまりにも大きく着床を経て妊娠をしても、肉眼で見分けるのが難しく、妊娠検査も麻酔剤を使わなければならず難しい。
■北極グマの雑種がいるというが
2006年カナダ北極圏バンクス島では頭が北極グマのように小さく、背中はグリズリーのようにこぶがついている熊が発見された。DNA検査の結果、その熊は北極グマとグリズリーの雑種であることが明らかになった。 科学者たちは地球温暖化で新種が誕生したと断定しはしない。北極グマ棲息地の南方限界線とグリズリー棲息地の北方境界線が一部重なるためだ。だが、気候変化が深刻になるほど重なる棲息地が広くなり雑種が増えることはありうる。
ナム・ジョンヨン記者
原文: https://www.hani.co.kr/arti/society/environment/464721.html 訳J.S