北太平洋に生息するシャチの群れが別の生態集団である「定住型シャチ」を攻撃して捕食した可能性が指摘された。定住型シャチが生涯を通じて家族のそばを離れず、巨大な血縁集団を維持する独自の社会構造を持つようになった理由は、このような同種の捕食者による影響だとする仮説が提起された。
南デンマーク大学のオルガ・フィラトバ教授らによる研究チームは、「2022年8月と2024年7月にロシアのベーリング島で、2頭の定住型シャチの死骸から明確なシャチの歯の痕跡を発見した」として、「定住型シャチが同じ地域に分布する『ビッグスシャチ』の餌になった可能性を示唆している」と主張した。そして、「定住型シャチが捕食者を回避するために、戦略的に血縁を中心とする大規模集団を形成した可能性がある」と指摘した。研究結果は24日(現地時間)、国際学術誌「海洋哺乳類科学」(Marine Mammal Science)に掲載された。
世界中の海に生息するシャチは、大きく3つの生態型に分類される。北太平洋の沿岸海域に主に生息し、血縁で結ばれた大規模な社会集団を形成する「定住型シャチ」(Resident Killer Whales)、それより小さく流動的な集団を維持する「ビッグスシャチ」(Bigg's Killer Whales)、そして、北太平洋・北大西洋・南極などに生息する多種多様なシャチだ。
これらは、現時点ではいずれも1つの種(Orcinus orca)に分類されているが、個体群ごとに食性・社会構造・意思疎通の方法が異なるため、亜種として区別すべきだとする声が上がっている。たとえば、定住型シャチは主に魚類を主食としてイルカを攻撃しないが、ビッグスシャチはイルカだけでなくアザラシやアシカなどの海洋哺乳類を狩猟する。「海の暴君」と呼ばれる最上位の捕食者であるシャチのなかでも、ビッグスシャチはさらに攻撃的な傾向を示している。
研究チームは、ベーリング島で発見した2つの標本のDNA検査を通じて、死骸が定住型シャチであることを確認した。フィラトバ教授は「母系中心の大家族を形成する定住型シャチの社会構造は非常に独特で、これに類似するシステムを有する種は多くない」としたうえで、「定住型シャチが大きな集団を維持する理由は、捕食者であるビッグスシャチに対する防衛システムである可能性がある」と、科学誌「ニュー・サイエンティスト」に述べた。