天文学者が原始惑星系円盤の間から、生まれたばかりの赤ちゃん惑星を発見した。
米国のアリゾナ大学とオランダのライデン大学が中心となった国際共同研究チームは、チリのアタカマ砂漠にある超大型望遠鏡(VLT)、マゼラン望遠鏡、アリゾナの大型双眼望遠鏡による観測を通じて、地球から430光年離れた宇宙にて、若い星々の周辺にある原始惑星系円盤の間で、物質を取り込みながら成長している惑星を発見し、国際学術誌「天体物理学ジャーナル・レターズ」(The Astrophysical Journal Letters)に2編の論文として発表した。
原始惑星系円盤は、若い恒星の周りを取り囲むガスと塵(ちり)で構成された回転する円盤状の構造を指す用語だ。恒星が誕生する過程で残った物質によって形成されているこの円盤は、惑星を含む様々な天体を形成するゆりかごだ。
「WISPIT 2b」と命名されたこの天体は、木星サイズの巨大なガス惑星で、年齢は約500万年と推定された。この惑星を誕生させた原始惑星系円盤は、幅が地球から太陽までの距離の約380倍ある。
原始惑星系円盤を形成しているリングの間で惑星の誕生の姿が捉えられたのは、今回が初めて。原始惑星系円盤を形成しているリングの間には隙間があるが、これは、原始惑星が周囲の物質を取り込んだ結果だ。あたかも除雪車が雪をかき分けながら道を作っていくかのようだ。45億年前の太陽系の惑星も、まさにこのようなかたちで形成された。しかし、これまで発見された若い原始惑星は、いずれも中心の恒星と原始惑星系円盤の内側のリングの間で形成されたものなどだった。
研究を率いたアリゾナ大学のレアード・クローズ教授は「円盤のリングの間の暗い隙間が、原始惑星によって形成されたという理論と論文は多数あったが、これまで確実な証拠を見つけられていなかった」と述べ、今回の発見の意義を強調した。
■赤ちゃん惑星、どのようにして発見したのか
研究チームは、初期の形成段階にある惑星系、すなわち原始惑星系円盤を対象に、円盤の隙間に隠れている惑星探しに取り組んだ。
研究チームはまず、隙間があるすべての円盤を調査し、「水素アルファ」という特定の可視光を調査した。クローズ教授は「生まれたばかりの惑星は周囲から水素ガスを吸い込むが、このガスは巨大な滝のように惑星の表面に流れ落ちて、きわめて高温のプラズマを生成し、このプラズマから赤色の水素アルファ線が放出される」と説明した。したがって、流れ落ちる熱い水素ガスを見つけることで、原始惑星を識別することができる。
データを分析した結果、円盤の2つのリングの間、恒星と円盤の内側の端の間に、それぞれ原始惑星が現れた。研究チームは「2時間分の写真を合成した瞬間、惑星が飛び出してきた」と述べた。中心の星である「WISPIT 2」は太陽と質量が同程度で、内側の惑星の候補である「CC1」は木星の質量の約9倍、外側の惑星の候補である「WISPIT 2b」は木星の質量の約5倍と推定された。
■45億年前の太陽系も同じ状況
研究チームは「WISPIT-2恒星系の惑星は、われわれの太陽系のガス惑星より約10倍大きく、より広く分散しているとみられる」としたうえで、「しかし、全体的な姿は、45億年前の太陽系の誕生直後の時期の写真でみられるであろう姿と大きくは変わらない可能性が高い」と述べた。
内側の惑星(CC1)から中心の恒星までの距離は15AU(1AU:地球から太陽までの距離)で、太陽系に当てはめると、土星と天王星の中間地点に相当する。リングの間にある惑星(WISPIT-2b)の位置は56AUで、太陽系の基準では海王星の軌道をはるかに超え、カイパーベルトの外縁部に相当する。研究チームは、この惑星系には中心の星を囲む惑星が2個、リングが4個、隙間が4個ある可能性が高いことを明らかにした。
*論文情報
Wide Separation Planets in Time (WISPIT): Discovery of a Gap Hα Protoplanet WISPIT 2b with MagAO-X.
DOI 10.3847/2041-8213/adf7a5
WIde Separation Planets In Time (WISPIT): A Gap-clearing Planet in a Multi-ringed Disk around the Young Solar-type Star WISPIT 2.
DOI 10.3847/2041-8213/adf721