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タコの華麗な変身術…きみ、本当にエイリアンじゃないの?

登録:2025-03-14 00:14 修正:2025-03-15 08:09
[アニマルピープル]
タコは無脊椎動物だが、驚くべき知覚力を見せる=ゲッティイメージバンク//ハンギョレ新聞社

Q. タコ、イカなどの頭足類は賢いだけでなく、体を自由自在に変える神秘的な動物として有名ですよね。でも、タコやイカは一体なぜこの「変身術」を使うようになったのでしょうか?

A. 親しい人を見分ける。水槽から脱出したり、いたずらしたり。他の動物を真似したり、狩りに特有の戦略を使ったり。悪夢を見ているかのように眠っている途中でスミを吐いたり。これまでにタコについて明らかになっているこのような研究結果は、タコが賢いだけでなく、痛みや快楽を感じる存在である可能性が高いことを示す根拠となってきました。実際に、2022年に英国はタコ、イカなどの頭足類が「知覚力を持つ存在」であることを認める改正動物福祉法を成立させています。

タコは無脊椎動物だが、驚くべき知覚力を見せる=シルカー・ロラク、ウィキメディア・コモンズ提供//ハンギョレ新聞社

 外見は哺乳類とは大きくかけ離れているが、このように賢いせいで、2019年には「タコの先祖は地球外からやって来た」という33人の科学者の主張をまとめた論文が学術誌に発表されてもいます。もちろん、この主張はタコのゲノムの解読よって、根拠がないということがすぐに明らかになっていますが。このように、タコの独特な生態は多くの科学者を魅了してきました。特に、あるドキュメンタリー監督が偶然にメスのタコと出会ったことで生まれた1年あまりの交流を描いたドキュメンタリー映画「オクトパスの神秘:海の賢者は語る」(2020年)は、タコの知覚力を大衆的に広く知らしめる契機にもなりました。

 このように「無脊椎動物には魂がないはず」という固定観念を痛快に覆した動物は、タコだけではありません。2019年に米国の海洋生物学者たちは、コウイカが眠っている時、周期的にレム(REM)睡眠と似た状態を示すことを発見したのです。脊椎動物は、レム睡眠の段階で眼球を素速く動かしながら夢を見ることが知られています。タコも、睡眠中にだいたい30分ごとに体の色を変え、これと似た状態を示しているのが観察されたことがあります。

 頭足類は体の色や質感を変える「華麗な擬態の達人」としても有名です。コウイカやタコなどの皮膚には筋肉とつながる数百万の色素胞があり、筋肉を収縮させたり弛緩させたりすることで、外見を自由に変えます。変身は本当にあっという間で、ある研究では、イカの変身にかかる時間は0.3秒でした。1998年にインドネシアのスラウェシ島で発見されたミミックオクトパスは、ウミヘビ、ミノカサゴ、ヒラメなどの海洋動物を真似る姿がとらえられ、人々を驚かせました。当時は3種の生物を真似している様子が明らかになりましたが、2010年には、ミミックオクトパスが真似する生物は実に40種あまりにのぼることが明らかになっています。

頭足類は体の色と質感を変える「華麗な擬態の達人」としても有名だ。コウイカやタコなどの皮膚には筋肉とつながる数百万の色素胞があり、筋肉を収縮させたり弛緩させたりすることで外見を自由に変える=レナ・バン・ギッセン提供//ハンギョレ新聞社

 彼らはなぜこのような「変身術」を使うのでしょうか。科学雑誌「ナショナルジオグラフィック」は昨年5月、「タコが形と色を変える驚くべき神秘的な理由」と題する記事で、これまでに発表されている様々な研究を総合して紹介していますが、研究者たちは、頭足類は周辺環境に自分を紛らわす擬態以外にも、捕食者を威嚇したり▽獲物を惑わしたり▽仲間同士のコミュニケーションに用いたり▽交尾相手を誘惑したり、といった目的でこのような行動を取ると推定しています。

 この記事によると、頭足類は捕食者を威嚇するために猛毒性の魚類に擬態したり(ミミックオクトパス)、体に青い輪を点滅させて「触ると危険だぞ」というシグナル(ヒョウモンダコ)を送ったりしました。その一方で、獲物に対しては脅威がないように見せかけ、他の生物のふりをしたりもしました。平凡なヤドカリのように変身して熱帯性のスズメダイを油断させるトラフコウイカや、草食性のブダイを「演じる」カリブ海のセピオテウスセピオイデアが代表的な例です。また、光がほとんど届かない太平洋の深海に住むダイオウイカは、特有の発光組織を用いて体を輝かせることで仲間と情報を共有します。ワモンダコのオスは体を青白くし、黒い縞模様を輝かせることでメスを誘惑します。

研究陣はコブシメの獲物となるカニの後ろにカメラを設置し、彼らの擬態を撮影。その結果、コブシメはカニに近づきながら葉(a)、縞模様(b)、サンゴ(c)、波(d)の、少なくとも4以上の擬態術を使った=マテオ・サントン/Journal of Ecology提供//ハンギョレ新聞社
研究陣はコブシメの獲物となるカニの後ろにカメラを設置し、彼らの擬態を撮影。その結果、コブシメはカニに近づきながら葉(a)、縞模様(b)、サンゴ(c)、波(d)の、少なくとも4以上の擬態術を使った=マテオ・サントン/Journal of Ecology提供//ハンギョレ新聞社

 英国のブリストル大学の研究チームは、このような頭足類の「変身術」を近くで撮影し、最近公開しました。この映像で、インドネシアのラジャ・アンパット諸島のコブシメは、少なくとも4つの擬態を使用していることが確認されました。撮影にあたったマテオ・サントン博士らの研究チームは昨年5月、ラジャ・アンパット諸島のサンゴ礁で98匹のコブシメの狩りの様子を234回にわたって撮影しました。その結果、コブシメが葉、縞模様、サンゴ、波に擬態しているのが観察されました。研究内容は先月18日、国際学術誌「Journal of Ecology」に発表されました。

 観察の結果、コブシメがよく使う擬態はサンゴ、縞模様、葉(22~29%)でした。波や様々な形態を混合したもの(11~13%)は相対的に少ないという結果でした。目立ったのは、防御力の強いマングローブのカニを狩る際には、より頻繁にサンゴに違いすることでした。研究者はこれを、狩猟の成功率を高めるためのコブシメ特有の戦略であると考えています。

 ただ、頭足類がこのような変身術をどのように獲得したのかは依然として謎です。米国ミネソタ大学の神経生物学者、トレバー・ウォーディル博士は「コウイカが擬態によって狩りに多くの時間を割けるのは確実だ」としつつも、「このような能力がどのように進化したのかは疑問」だと米国「ニューヨーク・タイムズ」に説明しています。「なぜなら(このような行動を学習する時間の少ない)若い個体もこのような能力を示すから」だと言います。すでに科学的反論が示されている主張ですが、本当に頭足類は遠い宇宙からやって来た存在なのではないでしょうか。

キム・ジスク記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/animalpeople/wild_animal/1185218.html韓国語原文入力:2025-03-04 14:44
訳D.K

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