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温暖化で暖かくなった都市、「街のネズミ」には天国

登録:2025-02-04 07:34 修正:2025-02-04 08:20
アニマルピープル 
ワシントンDCなど16都市でネズミの個体数を分析 
気温上昇と個体数増加の関連性が最も強い
気候変動によって都市のネズミの個体数が増加しているとする研究結果が公開された。写真はパリの飲食店街に住むネズミを主人公にしたアニメーション『レミーのおいしいレストラン』のワンシーン=ディズニー・コリア提供//ハンギョレ新聞社

 全地球的な温暖化で「街のネズミ」が急増しているとする研究結果が公開された。ワシントンD.C.、ニューヨーク、トロント、アムステルダムなど世界16都市を分析した結果、70%の都市でネズミが大幅に増加する傾向を示し、このような傾向は続くだろうとする見通しだ。

 米国リッチモンド大学のジョナサン・リチャードソン准教授らによる研究チームは先月31日、学術誌「サイエンス・アドバンシス」に公開した論文で、「世界16都市の過去10年ほどの公共データを調べたところ、気温の上昇幅が大きく人口密度が高い都市で、ネズミの個体数がより多く増加した」ことを明らかにした。

 研究チームは「ネズミは都市のインフラを損傷するだけでなく、人間に感染する可能性のある50種類ほどの動物性病原体・寄生虫を媒介し、公衆衛生に悪影響を及ぼしている」とし、「環境変化によるネズミの個体数の変化と生態を理解することは非常に重要だ」と説明した。

米国のニューヨーク市は、増加するネズミの個体数を減らすために、昨年から「ネズミとの戦争」を宣言し、げっ歯類駆除専門の担当部署の設置と「市げっ歯類減少監督官」を任命するなど努力している=ウィキメディア・コモンズ//ハンギョレ新聞社

 論文によると、建築物の破壊や農作物の被害などネズミがもたらす被害は、米国だけでも毎年約270億ドルに達する。世界の主要都市が毎年ネズミの増加を防ぐために投じる費用も、平均約5億ドルに達する。

 過去10年間でネズミの個体数は、ワシントンD.C.では390%、サンフランシスコでは300%、トロントでは186%、ニューヨークでは162%増加したとする研究結果もある。英国ガーディアンが報じた。米国ニューヨーク市は、増加するネズミの個体数を減らすために昨年、「ネズミとの戦争」を宣言し、げっ歯類駆除の専門担当部署の設置と「市のげっ歯類減少監督官」を任命するなどで努力している。

 研究チームは、温暖化と都市のヒートアイランド現象による気温上昇が、ネズミの狩猟・繁殖期間を延長させ、個体数増加を促進している可能性があるとみた。研究チームは、人口密度が高く▽冬季の気温が暖かく▽気温の上昇幅が大きく▽森が少なく都市化がより大幅に進み▽国内総生産(GDP)が相対的に低い都市で、ネズミの個体数がより速く増加するという仮説を立てた。このような仮説をもとに、米国のワシントンD.C.、サンフランシスコ、ニューヨーク、カナダのトロント、オランダのアムステルダム、日本の東京など16都市のネズミの捕獲(目撃)や通報のデータなどを利用し、過去7~17年間(平均12.2年間)のネズミ個体数を評価した。

サイエンス・アドバンシス提供//ハンギョレ新聞社

 分析の結果、16都市のうち11都市(69%)でネズミの個体数が大幅に増加したことがわかった。最も多く増えたのはワシントンD.C.で、続いて、サンフランシスコ、トロント、ニューヨークシティ、アムステルダム、オークランド、バッファロー、シカゴ、ボストンの順だった。ワシントンD.C.のネズミの個体数の推移は、ボストンの3倍、ニューヨーク市の1.5倍に達した。これらとは反対に、東京、ルイビル、ニューオリンズは減少傾向を示した。

 これに先立ち研究チームは、環境と社会の変数がネズミの個体数に及ぼす影響として選んだ5つの要因を分析した結果、気温上昇はネズミの増加に最大の影響(40.7%)を及ぼすことが判明した。その次は、都市内の植生被覆率(特定エリアの地表面が木・草・潅木で覆われている割合)の関連性が34.3%、人口密度が19.4%を占めることが調査でわかった。GDPは3.4%、年平均の最低気温の変動は2.3%で、ネズミの増減とはさほど関連はなかった。

 リチャードソン准教授は「冬が暖かくなれば、ネズミが地中から出てきてエサを探し、繁殖に必要な資源を確保する時間が、1年に2~4週間ほど増えることになる」と米ブルームバーグに説明した。小型哺乳類であるネズミは、体温恒常性のために冬季の低温のときには動きを減らすが、気候が暖かくなったため、活動時間が増えたということだ。東京とニューオリンズでのネズミの減少傾向については、「衛生基準が高い東京は、ネズミが出てくるとすぐに報告する傾向があり、ニューオリンズはネズミの侵入防止方法についての教育が行われた」とし、「これらの都市の事例から(ネズミの個体数の調整に関する)重要な教訓を得ることができる」とガーディアンに述べた。

 研究チームは、殺鼠剤の使用はネズミの個体数の調整にはそれほど効果的ではないと考えている。数十年にわたり殺鼠剤が用いられてきたが、環境や野生動物に悪影響を及ぼすだけでなく、長期的な成功事例もなかったということだ。研究チームが推奨する戦略は、現代的な食品廃棄物の管理、げっ歯類流入を防止できる建築物の規定、公共教育や監視人員の投入などだった。

キム・ジスク記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/animalpeople/human_animal/1180493.html韓国語原文入力:2025-02-03 15:00
訳M.S

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