炭素を吸収して保存する能力があり、「ブルーカーボン」とも呼ばれる海洋植物である海草を見つけるためには、人工衛星よりウミガメのほうが有効だとする研究結果が公開された。海草を主食とするウミガメを通じて新たに確認された紅海(Red Sea)内の海草群落は、乗用車90万台が1年間に排出する量の炭素を保存していると推定された。
海中の海草群落は魚や甲殻類に生息地を提供し、水質を改善して二酸化炭素を吸収する吸収源の役割も果たす「豊かな憩い場」だ。海草が海中に占める面積は0.2%に過ぎないが、海で生じる炭素捕集活動において海草が占める割合は10%に達するという研究結果もある。しかし、他の水中生態系と同様に、現在の海草群落も沿岸開発、農業による流出水、底引き網漁船などによって脅かされている。したがって、海草生息地を見つけて保存・復元することは、気候変動の緩和と適応のためにきわめて重要とされる。
ただし、海中で海草群落がどこにあるのか発見することは容易ではなかった。今では、海草を食べるウミガメを通じて、これまでの衛星を活用した方法よりはるかに高い信頼度で海草群落を発見できる方法が確立された。ウミガメは海草や大型海草類を主食としており、研究者らはウミガメの広範囲な移動範囲と一部地域で増加する個体数をもとに、海草群落の位置を識別できる主要な指標にしている。サウジアラビアのアブドラ王立科学技術大学(KAUST)の研究チームは先日、海草を主なエサとするウミガメに位置情報システム(GPS)とダイビングの記録装置を付着してこれらの移動データを分析することで、海草群落の分布を精密に確認できるという研究結果を英国王立学会に発表した。
これまで研究者らは、衛星や遠隔探査を通じて海草の生息地を地図化してきたが、水中の生息地は光が透過しない深い水面下までは衛星で見られず、限界があった。最近までの航空・衛星を活用した研究結果では、全世界的に検証された海草群落の規模は16万387平方キロメートルで、最大26万6562平方キロメートルまで達しうると推定された。しかし研究チームは、ウミガメを活用した探知活動によって、海草が生息可能な海洋空間は現在の地図で表示されたものよりはるかに広く確認できるとみている。研究チームは、紅海に生息するウミガメ53匹を1年間追跡し、38個の新たな採食地(エサの提供場所)を発見したが、これはこれまでに人工衛星で追跡した紅海内の海草群落よりさらに深く多様な場所に広がっていることを明らかにした。発見された38カ所中34カ所、全体の89.47%が既存の方法では探知できなかった新たな海域だった。ウミガメによる探知によって、紅海内で確認された海草群落の規模が12.93%増えたということだ。
また、研究チームは、ウミガメ53匹によって発見された海草群落の堆積物を研究し、これらは最大4テラグラムの炭素を含んでいるという事実を明らかにした。これは90万台の乗用車が1年間に排出する炭素分に匹敵する値だ。
研究チームは「海草群落の存在を確認できれば、規定を作って保存でき、環境と社会に重要な貢献ができるよう保護することができる」と明らかにした。また、これは「海洋空間の30%を保護して海洋生態系の30%を復元するという目標達成にも必須」だと指摘した。国際社会は2022年「昆明・モントリオール生物多様性枠組」を採択し、2030年までに全世界の陸上と海上の30%を保護地域として保全・管理し、傷ついた生物多様性の30%を復元するという目標で合意している。
KAUSTの海洋生態学者のヒューゴ・マン氏は「世界のどこかでウミガメに標識を付ければ、ウミガメはまったく別の場所でわれわれに採食地を示してくれる」として、この「ウミガメ探知」はより広く拡大できると、科学誌「サイエンス」で明らかにした。