最近2周年をむかえたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の主要な目標の一つは、太陽系外惑星の物理的・化学的性質を把握し、生命体の存在の可能性を調べることだ。
ジェイムズ・ウェッブがこのために最初の探査対象にした太陽系外惑星は、地球から700光年の距離にあるWASP-39bだ。
別名「熱い木星(ホット・ジュピター)」と呼ばれるこの惑星は、2011年に地上の天体望遠鏡を通じて初めて発見された。発見当時、かなりの量の水を含有していると推定され、大きな注目を集めた。
大きさは木星の1.3倍(9万1000キロメートル)だが、質量は木星の4分の1に過ぎないガス惑星だ。物質の密度は1立方センチメートルあたり0.18グラムで、綿菓子の惑星と呼ばれるWASP-17bと大きな差はない。このように物質の密度が低いのは、中心星との距離が700万キロメートルと近く、温度が非常に高いためだ。太陽より若干小さい中心星(WASP-39)を4日に1回ずつ回る。
科学者らはジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を利用し、2022年7月に惑星の大気中に二酸化炭素を見つけ出した。地球の生命体の活動と深い関連がある二酸化炭素は、重元素含有量(metalicity)の指標の役割を果たす物質で、惑星の起源と進化の過程を追跡するうえで重要だ。重元素含有量とは、ヘリウムより重い元素の割合を指す。重元素含有量は天体の年齢を計る尺度のうちの一つだ。太陽系外惑星の大気から二酸化炭素を確認したのは初めてのことだ。
さらに11月には、大気から光化学反応の産物である二酸化硫黄を捉えた。二酸化硫黄は大気中の水分子が光を受けて酸素と水素に分離した後、硫化水素と反応して生成されたとみられる。太陽系外惑星で二酸化硫黄を発見したことも、やはり初めてのことだ。
■地球の月のように星の前面に固定したまま公転
今回科学者らは、この惑星の昼と夜の温度差を測定することに成功したと、国際学術誌「ネイチャー」に発表した。
中心星との距離が非常に近いこの惑星は、片面が星に向けて固定されている潮汐固定の惑星だ。したがって、前面は常に昼間、裏面は常に夜だ。
科学者は2~5マイクロメートルの波長の透過スペクトルを通じて、昼と夜を分ける境界地域の温度を分析した。惑星が星の前を通過するときに惑星の大気を通じてろ過された星の光と、星の近くにあるときに感知されたろ過されていない星の光を比較することで、温度を測定する手法だ。
境界地域の大気を分析した結果、星が沈む側(夕方)は800度、星が昇る側(朝)は600度と測定された。研究チームはさらに、惑星の朝の地域が夕方の地域より雲が多いことを発見した。
■大気の循環が作る温度差
なぜ同じ昼と夜の境界線なのに、朝の地域が夕方の地域より温度が低いのだろうか。
近い距離で星を公転する太陽系外惑星では、前面で加熱されたガスが強いジェット気流に乗って裏面に移動する。2つの地域の激しい温度差によって気圧差が大きくなり、風も強まる。
研究チームが地球の天気予測に使うのと同じモデルを利用して調べた結果、この惑星では風が裏面(夜)で始まり、朝の境界線を越えた後、前面に回って夕方の境界線を越え、ふたたび裏面に移動する可能性が高いことを発見した。
この場合、朝の境界線地域は夕方の境界線地域に比べ温度が低下することになる。言い換えると、朝の地域には裏面で冷たくなった空気の風が吹き、夕方の地域には前面で熱くなった空気の風が吹く。研究チームは、この惑星の風速は時速数千キロメートルに達するとみている。
研究チームは「今回の研究は、以前にはなかった惑星の立体的な情報を得たという点で、非常に興味深い」と述べた。たとえば、夕方の境界地域の方が熱いということは、この地域が少し膨らんでいることを意味する。研究チームはこのような手法を利用し、前面と裏面が固定されている別の「熱い木星」の大気も研究する計画だ。
*論文情報
doi.org/10.1038/s41586-024-07768-4
Inhomogeneous terminators on the exoplanet WASP-39 b.