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[レビュー]北朝鮮で「最も低い序列」である女性たちの生き方

登録:2023-02-03 09:58 修正:2023-02-03 11:29
『生き残った女たちは世界をつくる 
―分断の国で女性として生きるということ』 
キム・ソンギョン著、創批刊、1万8000ウォン
『生き残った女たちは世界をつくる―分断の国で女性として生きるということ』キム・ソンギョン著、創批刊//ハンギョレ新聞社

 朝鮮戦争の休戦協定から70年。私たちは北朝鮮について、正確には北朝鮮の人々について、どれだけ知っているだろうか。演説のように力を込めて発する声、列をそろえて歩く歩き方、貧困に疲れた姿は、個人ではなく国家の姿だ。では北朝鮮の人々、その中でも「最も低い序列」の女性たちの姿はどうだろうか。

 『生き残った女たちは世界をつくる―分断の国で女性として生きるということ』は、植民、戦争と分断という歴史的脈絡から、境界を越えた北朝鮮の女性の人生を取り上げている。本に登場する北朝鮮の女性の姿は多面的だ。経済難を経て国境を越えて主体としての人生を送りもし、家父長制に全身でぶつかりもする。北朝鮮の150人あまりの人々を深層インタビューした著者のキム・ソンギョン教授(北韓大学院大学)は、個人の人生の羅列ではなく、散文・小説・手紙などの形で北朝鮮の女性たちの人生の軌跡を躍動的に見せてくれる。

 第1部の「北朝鮮の生き残った女たち」では、北朝鮮で「人民の典型」とされた女性たちが、実際に北朝鮮で暮らしていたら経験したであろう状況をエピソードとして綴った。戦後の時期に突然労働の現場に送られた「キル・ゴンシル」や、夫の職業を利用して卸売業をしていたが、貨幣改革後に財産を失い脱北した「ヘウォン」など、北朝鮮の女性たちの素顔がリアルに描かれる。第2部の「境界で出会った女たち」では、国境地帯である中国の延吉で会った女性たちのつくる世界を描いた。ほとんどが「母親」としての顔だ。第3部は、北朝鮮の女性たちへのインタビューを通じて分断が自身に及ぼしている影響を知った著者の告白を書いた。

 「北朝鮮に対する無関心は、韓国社会の歴史的重層性に対する無知につながる」。ジェンダー論争のたびに「女も軍隊に行くべきだ」との言葉が欠かさず登場する韓国社会も分断から自由ではないということを、改めて省察してみる。

チャン・スギョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/1078138.html韓国語原文入力:2023-02-03 09:16
訳C.M

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