本文に移動
全体  > 文化

ヘビにもクリトリスがあるという事実、なぜこれほど遅くに発見されたのか

登録:2022-12-16 06:19 修正:2022-12-16 14:50
[アニマルピープル] 
メスの生殖器の研究に目を向けない学界の慣行が、無知と遅れを生んだ
ヘビの絡みあいと交尾は、オスの強圧ではなくメスの刺激と誘惑のために行われる可能性が高くなった=ピクサベイ提供//ハンギョレ新聞社

 メスのヘビも哺乳類と同様に生殖器にクリトリス(陰核)があるという事実が、詳細な解剖学的研究によって明らかになった。このように発見が遅れたのは、生物の種を問わず、男性に比べ女性の生殖器官について私たちがいかに無知なのかを端的に示していると、研究者らは主張した。

 オーストラリアのアデレード大学の博士課程学生であるメーガン・フォルウェル氏らによる国際研究チームは15日、科学ジャーナル「王立学会報B(Proceedings of the Royal Society B)」に掲載した論文で、「ヘビのクリトリスについての解剖学的な初めての証拠を提示する」と明らかにした。

 クリトリスは、すべての哺乳類とトカゲ、一部の鳥で確認されていた。しかし、ヘビの該当の器官は、これまで臭腺や未発達のペニス、あるいは間性のペニスとみなされていた。フォルウェル氏は大学の報道資料で「今回の研究は、ヘビのクリトリスはない、あるいは機能しないという学界の長きにわたる仮説を破るもの」だと述べた。

オーストラリア固有種のマムシのなかで最も毒性が強いヘビの一つであるコモンデスアダー。今回クリトリスが発見された種だ=CSIRO、ウィキメディア・コモンズ提供//ハンギョレ新聞社

 研究者らは、オーストラリア固有種のマムシであるコモンデスアダーをはじめ、ヘビ、ニシキヘビ、コブラ、マムシなど4つの科の9種類のヘビを解剖し、クリトリスの存在を確認した。尻尾の下の皮膚の中に隠されたこの器官は、二股に分かれた三角形の構造だが、種により0.2センチメートル~3センチメートルの大きさで、形態は多様だった。研究者らは「このように多様に進化したということは、役に立つ器官だということを示している」と論文で明らかにした。

 研究に参加した同大学のケイト・サンダース教授は「ヘビのクリトリスは心臓の形だが、神経束とともに勃起組織にふさわしく赤血球細胞が入っている」とし、「交尾の最中に(血液によって)膨張すれば、刺激が生じるとみられる」と述べた。

コモンデスアダー(a)とクリトリスの姿(b)。HCがクリトリス、SGは臭腺を示す。メーガン・フォルウェルほか(2022) =王立学会報B提供//ハンギョレ新聞社

 このような事実は、ヘビの交尾において重要な意味を持つ。サンダース教授は「これまで、ヘビはオスが強圧的に交尾するものと知られていたが、メスの刺激と誘惑が重要だとも考えられる」と述べた。

 研究者らは「ヘビのクリトリスは、絡みあいと交尾の間にメスに刺激を与え、より長く頻繁に交尾をするよう導き、これは繁殖の成功率の向上につながるだろう」と論文に書いた。多くのヘビで、絡みあう時に尻尾で互いに巻きあいこすりつける行動が観察されることも、クリトリスへの刺激に関連があるものだと研究者らは明らかにした。

クリトリスが確認されたアフリカマムシ=ウィキメディア・コモンズ提供//ハンギョレ新聞社

 このような基本的な生殖器官がなぜ今になって発見されたのだろうか。フォルウェル氏は「すべての生物種でメスの生殖器に関する研究は、残念ながら今もなおタブーとして扱われている」と述べた。

 メスの解剖構造に目を向けようとしない文化的態度は、「トカゲのクリトリスはメスではなくオスに刺激を与えるための器官だとするある研究に、端的に現れている」と研究者らは明らかにした。人間のクリトリスの解剖学的な全貌が明らかになったのも、人間の月面着陸から30年も後の1998年だった。

引用論文:Proceedings of the Royal Society B, DOI:10.1098/rspb.2022.1702

チョ・ホンソプ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/animalpeople/ecology_evolution/1071712.html韓国語原文入力:2022-12-15 17:49
訳M.S

関連記事