ジュゴンは、「海牛」または船員が勘違いした「人魚」として知られる大型の海洋哺乳類だ。浅海でゆっくり動き海草を食べるこの動物は、インド洋から西太平洋沿岸に広く分布しているが、世界的な絶滅危惧種だ。海南島を中心に中国南部に分布していたジュゴンが事実上絶滅したことを、専門家らが明らかにした。
ロンドン動物学会(ZSL)と中国科学院の研究者らは24日、科学ジャーナル「王立学会公開科学(Royal Society Open Science)」に掲載した論文で、「中国に生息するジュゴンは機能的に絶滅した」と明らかにした。機能的絶滅は、たとえ完全には絶滅していなくても、個体数があまりにも少なく持続可能な集団として生き残ることは難しいという意味だ。
ジュゴンは、中国の広西チワン族自治区と海南島の海岸を中心に分布していたが、2008年以降は観察された記録がない。中国当局は1988年にジュゴンをジャイアントパンダと同様に1級保護種に指定し保護措置を取った。
研究に参加した英国のロンドン動物学会動物研究所のサミュエル・ターベイ教授は、「今回の研究は、中国でまたもう1種類のカリスマ的な海洋哺乳類が地域的に絶種したという強力な証拠を提示している」とし、「悲しいが、その原因は今もなお持続可能ではない人間の活動だ」と英国メディア「ガーディアン」で述べた。中国では2007年に揚子江イルカが絶滅している。
研究者らは、中国でジュゴンに関するすべての歴史的な資料を検討したが、2000年以降、科学者が確認した報告はなかった。そこで研究者らは、中国の海南・広西・広東・福建省の66の漁村で住民788人を対象にアンケート調査をした。
その結果、回答者が平均してジュゴンを最後に目撃したのは23年前だった。過去5年間にジュゴンを見たという人は3人だけだった。研究者らはこのような調査結果をもとに「中国に生息するジュゴンは機能的に絶滅した」という結論を下した。
研究者らは、中国でジュゴンが絶滅に至った最も重要な理由として、生息地の破壊と漁業活動を挙げた。ジュゴンは海岸に広がる海草藻場の海草だけを食べて暮らしている。しかし、湾やマングローブなどの沿岸の海草藻場が激減したうえ、漁具に絡まり窒息死したり漁船と衝突する事故がこの大型動物を脅かした。研究者らは「富栄養化により海の透明度が落ちて海面に届く太陽光が減少し、海草藻場が激減したことが致命的だった」と明らかにした。
ジュゴンは国際自然保護連合のレッドリストで「危急種」に分類されている。しかし、研究者らは今回の研究をもとに、この鐘の絶滅危険等級を「危機」に上げるよう勧告した。
ジュゴンはマナティーとともに代表的な大型海哺乳類で、遺伝的に最も近いステラーカイギュウはベーリング海に生息していたが、18世紀の乱獲で絶滅した。ジュゴンも数千年間、肉と油を得るための狩りの対象だった。
おっとりしておとなしく、人間を避けるこの動物は、3メートルまで育ち70年以上生き、繁殖力は非常に低い。通常、水深10メートル以下の海草藻場に6分まで潜水し海草をとり、しっぽを海底につけて座り、水の外に顔を出して休んだりする。東アジアでは一時、黄海南部と台湾に生息していたが絶滅し、沖縄に3頭が生息していることが知られている。
引用論文:Royal Society Open Science, DOI:10.1098/rsos.211994