「トリプルコーク1440」。スノーボードに乗って飛び上がり、斜めに縦に3回、横に4回転(1440度)する夢の技だ。五輪史上初めて、スノーボード・ハーフパイプでトリプルコーク1440を成功させた選手が現れた。その主人公は日本の平野歩夢(24)。平野はこの技を3回も成功させ、ショーン・ホワイトの「独壇場」だったハーフパイプの王座を手にした。
平野は11日、中国河北省張家口の雲頂スノーパークで行われた2022北京冬季五輪スノーボード男子ハーフパイプ決勝の3回目で96点を獲得し、金メダルの主人公になった。すでに2回目で完璧に近い技を披露したが、スコッティ・ジェームズ(28、オーストラリア)に0.75点届かない91.75点を記録した。元スノーボーダーで解説者のトッド・リチャーズが米NBCの放送中、「(平野の2回目は)僕がこれまで見てきた中で最高のルーティンだった。減点要素が一体どこにあるのか」と憤慨するほど、予想外の低い点数だった。3回目、表情のない顔で再びスタート台に立った平野は、完璧な技で最高点をマークした。
彼は新潟県村上市でサーフィンボード店を経営する父親の影響で、3歳からスノーボードを始めた。2014年ソチ冬季五輪、2018年平昌(ピョンチャン)冬季五輪で、2大会連続で銀メダルを取った。平昌五輪では2回目で95.25点を記録して1位になったが、3回目で97.25点をたたき出した「皇帝」ショーン・ホワイト(36、米国)に2点差をつけられ、金メダルを逃した。平野は14歳の時も冬季Xゲームでホワイトに届かず、銀メダルにとどまった。二人の年齢差は12歳。一回り上の帝王は色濃く、長い影を落としていた。
切歯腐心の末、平野はトリプルコーク1440でついにトップに立った。平野は「半年間、1日に60回練習した」と語った。2017年には肝臓が破裂し、膝の靭帯が損傷するケガをしてまで身につけた必殺技だった。同日、5回目で最後の五輪を4位で終えたホワイトは、競技後、平野に駆け寄り、抱き合って優勝を祝った。ホワイトは2回目で85点を記録しメダル圏に近づいたが、3回目で着地に失敗し、転倒した。転んだ後、パイプをゆっくり降りてくる帝王に現場の皆が拍手を送った。ホワイトはカメラの前で微笑みながら、目を潤ませた。
ホワイトは「この若い選手たちが私の遺産だ。一歩一歩私を追いかけてきた彼らが、ついに私を超えた。これこそが私が心から望んでいたことだ」と感想を述べた。五輪3大会連続金メダルに輝いた伝説が去った場所に、2大会連続の銀メダルの末、3度目の五輪で金メダルを手に入れた新時代の旗手が立った。歩夢という名前は「夢を歩く」という意味だ。彼は夢の技で夢を叶えた。