イ・ヨンフン元ソウル大学教授(李承晩学堂学長)などが書いた『反日種族主義』が年内に日本でも出版される予定だ。日本語版の版権を確保するために日本の出版社と韓国内のエージェンシーなど多数が関心を示したことが確認された。
李承晩学堂関係者は23日、ハンギョレとのインタビューで「日本の文藝春秋と出版についての議論を進行中だ。文藝春秋から具体的な事項が記載された契約書が届いたら検討し契約するだろう」と話した。文藝春秋は、文学や芸術関連の書籍を主に出版する日本の中堅出版社として知られている。韓国で7月に開かれた出版記念ブックコンサートには、小田慶郎文藝春秋出版部長も参加した。『反日種族主義』の出版社である未来社のコ・ヨンレ代表は、「日本での出版に関連する連絡が多数あった。日本の出版社2〜3社、韓国のエージェンシー3〜4社から著作権の問い合わせが来た。しかし、この本は著作権が著者にあるので、著者に連絡するように言った」と話した。
この本は韓国での出版前から日本語版の出版が計画されていた。この本は李承晩学堂で行われたオンライン映像講義を本にまとめたものだが、映像を製作した時から日本語字幕を付けており、日本語翻訳も間もなく仕上がると見られる。出版社と契約する際に、日本語版の著作権は著者にあるという点を契約書に明示した。李承晩学堂関係者は「講義映像は韓国の視聴者より日本の視聴者の反応が熱かった。それで本も韓国語版の出版前から日本語版を出そうとしていた。韓国人と日本人の翻訳者が分担して翻訳し、日本語が分かるイ・ヨンフン教授がすべてを監修した。年内に出版しようとしている」と話した。続いて「慰安婦(の支援)活動をする人々が日本で友好勢力を確保したように、私たちも両国の友好協力を支持する市民勢力を作ろうとしている」と説明した。
『反日種族主義』は「強制徴用はなかった」「日本軍『慰安婦』は性奴隷ではなかった」「挺対協は全体主義的権力だ」などの主張により、大きな論議を引き起こした。チョ・グク法務部長官候補者が今月5日、自身のフェイスブックでこの本の著者について「附逆(反民族的)・売国親日派という呼称以外に何と呼ぶべきか、私には分からない」と批判した。これに対し『反日種族主義』の著者6人は今月20日、ソウル中央地検にチョ・グク候補者を侮辱の疑いで告訴した。李承晩学堂の関係者は「数十年間の研究を盛り込んだ本には、根拠を持って批判しなくてはならない、むやみに『著者が国を売った』と言うのは明らかな侮辱だ」と話した。
こうした論議を背景に『反日種族主義』は販売部数が増え、教保文庫で8月2週から2週連続で総合ベストセラー1位を占めるなど、勢いを持続している。コ代表は「近いうちに10万部を超えると見られる」と話した。ある出版評論家は「日本の出版社から本が出版されたら大々的なマーケティングをしようと準備しているという噂が出版業界に出回っている。この本の日本語版出版で日本人の誤った歴史認識がより深刻になり、事実に基づいた韓日関係正常化がさらに難しくならないかと心配になる」と話した。
ハン・チョルホ東国大学歴史教育科教授(近代史)は「日本の右翼はいまだに『近代化されていなかった韓国を近代化させ、西欧帝国主義の脅威からも保護してあげた」という論理を展開しており、そうした論理に同調する韓国の学者がいるのはこの上なく嬉しいだろう。しかし、日本が近代の文物を持ちこんだのは、朝鮮人のためではなく、より効率的に収奪するためだった。このように根本的原因ではなく表面的現象だけを見ると、歴史的評価を間違って下すことになる」と指摘した。