「難民は単に経済的な支援が必要な人という認識を超えて、彼らの問題を通じて人間が地球上に作った不合理な政治的状況や暴力について一緒に考えることができると思います」
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の親善大使として活動中の俳優チョン・ウソンが、世界難民の日の20日午後、ソウル江南区(カンナムグ)のコエックスモールで開かれている「2019ソウル国際ブックフェア」のイベント会場を訪れた。彼は今回のブックフェアで、初めて公開したエッセイ「私が見たものをあなたも見られたら」(ワンダーボックス)の著者として、「難民、新しい隣人の出現」というテーマでアナウンサーのハン・ソクジュンと一時間以上対談した。この本はチョン・ウソンが2014年から世界の難民キャンプを訪ねて出会った経験と伝えたい話を書いたものだ。
500人余りの聴衆が集まったこの日の講演で、彼は5月に再び訪問したバングラデシュのロヒンギャ難民キャンプの話からはじめた。彼は「ロヒンギャ族は世界で一番不幸な民族」と言い、「多くの難民が戦争が終われば帰郷すると言うが、故国だと思っていた地で国民として認められなかったロヒンギャ族はどんな希望を誰と話せば良いのかさえわからない状況」と語った。
彼は「難民の多くが歴史的に帝国主義による侵略を経験し、冷戦体制を経た後に民主抗争をたどるケースが多いが、このような歴史は大韓民国が経験した現代史の痛みと似ている」と分析した。また「大韓民国はそのような困難を国民の力で乗り越えたため、難民にも良いナビゲーターになるのではないかとも考える」と付け加えた。
2018年5月、内戦を逃れて済州島を訪れたイエメン難民申請者500人余りのニュースに「難民の人権を考えなければならない」という趣旨の発言をした彼は、激しい反対世論にぶつかった。「(世論に)驚いたが、反対コメントをじっくり読みながら、落ち着こうと思いました。もちろん俳優としてのイメージ攻撃を心配する人はいましたが、私は親善大使をして難民がどのような苦痛を経験したのか理解している人間なので、知っている事例を共有しなければならないと思いました」
彼は「難民という地位は非常に厳正な審査を経てその国で得られるものであり、ただで与えられるものではない」と強調し、朝鮮戦争当時生じた韓国内の600万人の失郷民のために国連韓国再建団(UNKRA)が住宅、教育、医療など国家再建を助けるための活動をし、それが現在のUNHCRの活動でもあると説明した。「結局、難民は私たちと無縁だとは言えません」
チョン・ウソンは今回出版した本を紹介し、「本は思考を拡げられる良い手段」としながらも、「この本で私の経験を強要したり主張しないように努めた」と語った。
「淡々としていようとしました。感性的に映る部分を排除して、私が難民キャンプで出会った人々と読者をつなぐ疎通の窓口になることを願って書きました。関心を持って理解すれば実践につながると思います」。
この日、講演現場を訪れたフランク・レムスUNHCR韓国代表部代表は「私の良き友人で最も献身的な親善大使の一人であるチョン・ウソンさんの難民の話に、私はいつも大きな感銘を受ける」とし、「難民はこの世で最も大きな意志を持った人々だ。ウソンさんの話が皆さんにも大きな感動を与えることを願う」と述べた。