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つらさを抑えて書いた「110通の手紙」…セウォル号の真相究明の返事がほしい

登録:2018-04-12 07:10 修正:2018-04-12 09:04
イ・ジソン4・16記憶貯蔵所所長、パク・ジュミン議員インタビュー 
 
セウォル号の親たちが自ら企画して書いた初めての本 
手紙110通をまとめた『恋しいあなたへ』 
 
手紙ごとに「きっとまた会おうね」 
悲しみを超えて記憶し行動を
4・16家族協議会と記憶貯蔵所が受け取ったセウォル号の親たちの手紙110通=フマニタス提供//ハンギョレ新聞社

 「わが子よ…とても会いたい。触りたい。抱きしめたい」

 「もう少したったら会って母さん、父さんが思う存分抱きしめてあげる。また愛してあげる」

 「忘れないで覚えているよね?母さんが必ず訪ねていくからね」(手紙より)

 セウォル号遺族110人が自ら書いた手紙をまとめた『恋しいあなたへ』(フマニタス)が9日発刊された。11日現在、教保文庫が集計した結果、セウォル号惨事を素材にした単行本は計78冊にのぼる。『恋しい…』は被害者の親が自ら企画し共に書いた初めての本だ。被害者家族の会である「社団法人4・16セウォル号惨事真相究明および安全社会建設のための被害者家族協議会」傘下の「4・16記憶貯蔵所」のイ・ジソン所長(檀園高校キム・ドオンさんの母親)は「惨事自体を記録した本とは違う『心の記録』として真相究明の呼び水になることを願う」と話した。イ所長と、推薦の言葉を書いた「セウォル号弁護士」と呼ばれる共に民主党のパク・ジュミン議員にこの日午後、ソウル汝矣島(ヨイド)国会議員会館で会った。

セウォル号記憶貯蔵所のイ・ジソン所長(檀園高キム・ドオンさんの母)とパク・ジュミン共に民主党議員が9日午後、セウォル号4周年を迎え遺族110人の肉筆の手紙をまとめた『恋しいあなたへ』(フマニタス)について語っている=カン・チャングァン記者//ハンギョレ新聞社

 パク議員は前日、「セウォル号の母たち」の演劇『隣りに住んで隣りに死んで』を見たと言った。子どもたちが去った春が来るといっそうつらくなる親たちに、彼は「手紙を書くその瞬間だけは悲しみを忘れて、今も子どもたちと繋がっていることを感じる時間だったことを願う」と話した。イ所長は娘のドオンさんと普段から手紙をよくやり取りしていたが、子どもたちに初めての手紙を書くことになった親もかなりいた。「愛する○○へ」で始まる手紙は、ほとんどが「またきっと会おうね」で締めくくられた。

 「人は生まれた順番に死ぬものと思っていました。私たちが先に死んで、子どもたちが私を見送って、そんなふうに生きるのだと思っていました。子どもを先に送ってしまったので、いつかまた会って、果たせなかった約束を守って、果たせなかった幸福をつないでいこうという気持ちが深いのです。それで『また会おう』という言葉が手紙に多く書かれたようです」(イ・ジソン)

 「子どもたちの犠牲が意味のある犠牲になるには、まずは真相究明がされなければならず、そうしてこそ安全な社会を作ることができます。ご家族のみなさんが…(しばしため息)そうしてこそ後に子どもたちに会いに行く時に顔を向けられる、そんな話を普段もよくしていました」(パクジュミン)

 金曜日に帰ってくることになっていた。竹林がさやさやとする音が好きだったスジョン、黄色いフリージアとEXOが好きだったジスク、家族の賢明な助言者だったアラ、ビューティーアーティストが夢だったヘギョン…。忙しい母の代わりに弟の面倒を見たテミンは夢で母を訪ね、先に旅立ってごめんと涙を流した。ダヨンの時計は海の中から戻ってきた今も一生懸命回りながら、娘の代わりに父に話しかける。ヨンソクの友達は軍隊に行ったり、ヨンソクのお母さんに彼氏ができたと言いながら泣き、先に行った友達に会いたくて自ら命を絶とうともした。子どもたちに安否を伝えながら、多くの母や父が子どもが初めてこの世に誕生した時のことを、「お母さん」と呼んだ時のことを思い返した。

セウォル号家族の手紙をまとめた本『恋しいあなたへ』(フマニタス)//ハンギョレ新聞社

 「会いたい子どもたちに手紙を書くとなると、あまりにもつらいことに思えました。最初は勇気が出なかったけれど、手紙を書きセウォル号の惨事を再び知らせることができると思って力を出しました。政権が変わったから全部解決したんじゃないかという方が多いですが、子どもたちを忘れてしまうのではないか、真相究明がされないんじゃないかと焦燥感が湧きます」(イ・ジソン)

 体と心が弱くなった親の多くが治療を先送りしている。イ所長は「私だって『わが子を救えず生かせなかったのに、何様のつもりで自分が治療を受けられるのか』という気がしてしまう」と話した。「真相究明が治癒につながり、その日がトラウマ治療の始まりになると思います」

 パク議員は「大学時代から撤去村や工場などの現場に多く通ったが、このようなショックは初めてだった」と話した。「実際に家族たちのそばに行くと、頭の上に雷が鳴り火がついているのが目に見えるような感じがするほどでした」。今回の本を通じて親たちは自分の安否よりも不正義な社会を正そうとする人たちに対する考え、罪悪感を子どもたちに告白したりもした。「惨事後、親たちが社会的弱者を保護することにとても敏感で強くなりました。時間がたつほど私がより多く学ぶような気持ちで、2年あまりを共にするようになったんです」

 その年の夏、家族らがセウォル号特別法制定国会請願書を提出しながら経験したことは、それこそ想像を超える非常識なものだった。「国会のトイレを使わせず、請願書を渡すのを妨げ、移動する時は警察バスの下を這っていくようにするなど、2010年代とは到底信じられないほど」で稚拙だった。「実際、家族たちも私も、朴槿恵(パク・クネ)前大統領は(事件当時)何もしなかったのだろうと考えてはいたんです。そして検察の捜査結果を見ると、本当にそうだった。11回報告を受けて指示したと主張したけれど、リアルタイムでの報告はなかったことが明らかになって…あきれました」(パク・ジュミン)

 多くの人々が「ろうそく革命」でセウォル号惨事と関連した問題が解決されたと考えているが、親たちは人々の関心が消えて子どもたちが忘れられ、真相解明がきちんと行われないのではないかと恐れている。京畿道安山市の花郎(ファラン)遊園地駐車場に建てられた政府合同焼香所が16日の4周忌行事の直後に撤去されるが、親たちの切実な願いの一つである「416生命安全公園」の造成は遅々として進展しない。住民傾聴会を5回、市民討論会を2回経た末に、2月末にようやく敷地が確定し発表されたが、遺骨安置施設が含まれるという理由で「納骨堂」と言い烙印を押す横断幕が街に一斉にかけられたりもした。

 朴議員は「最近、一部の野党議員らが(公園造成)反対の旗印を核心的なモットーとして地方選挙のプラカードに入れて広報している」と話した。「(与党の)党内のムードも、一部の地域住民が(公園造成反対を)応援しているように見えるから、萎縮する側面もあります。心配がないわけではありませんが、これが正しい道だと話をし続けなければ」(パク・ジュミン)

 イ所長は「焼香所の撤去の約束を私たちが履行しているので、安山市と政府もまた公園造成の約束を守らなければならない」と繰り返し述べた。「傾聴会や討論会に出席した人は、誤解が解けました。子どもたちが幼い時から遊んだり除夜の鐘の音を一緒に聞いたここは、安山と大韓民国の名所となるでしょう。この本を読んだ後、親の悲しみを感じるのに終わらず、記憶して行動してください。インターネット検索一回、大統領府への請願一回を行う行動が、真相究明の出発になるからです」(イ・ジソン)

 4・16記憶貯蔵所は12日、親たちが自ら書いた手紙を見られるホームページ(www.416letter.com)を開き、13日午後7時にソウル市NPO支援センター1階の大講堂で『恋しいあなたへ』のブックコンサートを開く。

文/イ・ユジン記者、写真/カン・チャングァン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/840170.html韓国語原文入力:2018-04-11 21:13
訳M.C

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