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夜明けのカンヌに鳴り響いた韓国映画への拍手

登録:2017-05-24 04:23 修正:2017-05-24 08:15
ネットフリックスで同時公開される『Okja』 
映画祭の保守性破る象徴として話題に 
『その後』で5年ぶりにカンヌで歓声を受けたホン・サンス監督 
「パルムドール期待できる」との評価 
非コンペティション部門の『悪女』は110カ国以上に販売
第70回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に進出した『Okja』のポン・ジュノ監督(左から5番目)と出演陣がレッドカーペットでポーズを取っている=ネットフリックス提供//ハンギョレ新聞社

 17日開幕した第70回カンヌ国際映画祭が中盤に入った。祭りの真っ盛りだが、今年はテロの脅威で以前よりも厳重な雰囲気が漂う。メイン上映館のリュミエール劇場があるクルワゼット通りには、至るところに警察官が配置されており、劇場への出入統制も強化され、一時間以上列に並ぶことも多かった。厳しいセキュリティチェックに対する不満を口にしたとして、映画祭の出入り用のカードを奪われるケースまで発生している。

 多少落ち着いた雰囲気の中でも、前半部には依然として多彩な作品が並んだ。アジア映画が全体的に低調な反面、韓国映画に集まった関心は、例年よりも高かった。作品の国籍は米国だが、韓国のポン・ジュノ監督が参加した『Okja(オクジャ)』は、文字通り映画祭初期の関心をブームアップさせた今年の“事件”だった。世界最大のストリーミングサービス大手の米ネットフリックスが制作した作品で、同じネットフリックス作品であるノア・バームバック監督の『The Meyerowitz Stories(メイロウィッツ・ストーリー) 』と共にコンペティション部門に選ばれた。ストリーミング基盤の作品が映画館での観覧を最優先にする70年伝統の国際映画祭で上映されたのは、保守的な映画祭が変化を模索する象徴的な事件だ。映画祭初期の記者会見で「大型スクリーンで見られない映画には、バルムドールを与えない」という審査委員長のペドロ・アルモドバル監督の発言が話題を集め、初上映での映写事故でもう一度ニュースになった。

 総額600億ウォン(約59億4千万円)の制作費が投入された『Okja』は、遺伝子操作で生まれた巨大動物のオクジャと江原道の山奥の少女ミジャ(アン・ソヒョン)の友情を描いた作品。動物虐待をマーケティングで包装する多国籍企業の姿を全面的に批判しているが、重いテーマに比べて、人物たちが繰り広げる騒ぎやユーモア、軽快なアクションなどが加味され、家族で楽しめるジャンルとして作られた。英国の日刊紙「ガーディアン」は「愛らしい家族用のアクション・アドベンチャー映画」だと紹介したうえで、「ダリウス・コンジ監督が撮影したワイドスクリーン画面の中で、誰もオクジャが本物の動物ではないとは想像できない」として、コンピューターグラフィックで作ったキャラクターが目立つオクジャの技術力を高く評価した。映画以外の話題性に比べると、映画祭デイリーニュースの「スクリーンデイリー」の評点は2.3点(4点満点)で、低い方だ。

第70回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に選ばれたホン・サンス監督の『その後』のスチールカット=チョンウォン社提供//ハンギョレ新聞社

 22日にはコンペティション部門に選ばれた別の韓国映画であるホン・サンス監督の『その後(The Day After)』が公開され、好評を博した。出版社で働くアルム(キム・ミニ)が、既婚者の上司であるポンワン(クォン・ヘヒョ)と不倫関係にあると誤解されたことで展開される話だ。『次の朝は他人(The Day He Arrives)』(2011)以来の白黒映画だ。ポンワンを中心に妻やアルム、内縁の妻チャンスク(キム・セビョク)の関係に基づいて出勤初日にアルムに起きた騒ぎを追っていく。小さな事務所を背景にピンポンのように行き来する無数のセリフと反応をとらえていくカメラの動きが、ユーモラスに展開される。フランスの日刊紙「リベラシオン」は「芸術は何かに対する謙虚な定義、この映画にパルムドールの受賞を期待できる理由だ」と絶賛した。ホン監督は公式上映後、観客たちのスタンディングオベーションを受けながら目頭を赤くした。『3人のアンヌ(In Another Country)』以来、5年ぶりにカンヌで歓声を浴びた心境が加わったようだった。ホン・サンス監督はコンペティション部門ほかにも、今年、特別上映部門に『クレアのカメラ(Claire's Camera)』も一緒に招待され、これまで合わせて10本の作品がカンヌで上映された。

 ミッドナイト・スクリーニング部門に招待されたチョン・ビョンギル監督の『悪女(The Villainess)』も21日未明(現地時間)に公開された。幼いころからキラーとして育てられた延辺族女性のスクヒ(キム・オクビン)の波乱万丈な人生を描いた作品で、映画の前半部を女性中心のアクション・シーンで構成した大胆さが目を引く。ミッドナイト・スクリーニング部門は昨年ヨン・サンホ監督の『新感染 ファイナルエクスプレス』が招待されたセクションで、主にホラーやアクションなどジャンル映画が上映される。芸術性中心の作品が主に上映される12日間の多忙なフェスティバル日程の中で、肩の力を抜いて見られるセクションで、歓呼と反応が高い部門だ。『悪女』も上映が終わった夜明け3時過ぎまで観客たちの拍手が絶えなかった。この雰囲気がカンヌのマーケットに直結するという点で、『悪女』の国外輸出効果は期待できるかもしれない。実際、これまで110カ国以上が販売実績を上げ、好成績を収めている。この部門にはピョン・ソンヒョン監督の『不汗党:悪いやつらの世の中(The Merciless)』も招待され、上映を控えている。

 今年のカンヌ映画祭は28日、リュミエール劇場でパルムドールをはじめとする主要部門、授賞式で幕を閉じる。ホン・サンス監督とポン・ジュノ監督が共にコンペティション部門に並んで進出しただけに、受賞への期待も一層高まっている。

カンヌ/イ・ファジョン「シネ21」記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/culture/movie/795890.html 韓国語原文入力:2017-05-23 20:13
訳H.J(2658字)

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