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[インタビュー]国境で挨拶するグリーティングマンを南北平和の象徴にさせたい

グリーティングマンの作家ユ・ヨンホ氏
インスタレーション芸術の作家ユ・ヨンホ氏=パク・ギョンマン記者//ハンギョレ新聞社

 「頭を下げて挨拶するのは、自ら一歩引きさがり、相手を尊重して心を開くことを意味します。漣川(ヨンチョン)にグリーティングマンを立てたのは、南北が疎通し、和解と平和の道に進もうという気持ちが込められています」

 臨津江(イムジンガン)の対岸にある北朝鮮とわずか4キロしか離れていない京畿道漣川郡郡南面の玉女峰の頂に、巨大な彫刻像「グリーティングマン(Greeting Man)」が建てられた。青みがかった光(スカイブルー)を帯びた裸の巨人は、北側に向かって15度ほど頭を下げ、丁寧に挨拶している。23日の除幕式に先立ち、今月17日にグリーティングマンの作家のユ・ヨンホ氏(52)に玉女峰の現場で会った。

23日、漣川郡玉女峰の頂に彫刻像
高さ10メートルの「裸の巨人」が頭を下げる
「臨津江対岸に北朝鮮にも建てたい」
ドイツ留学中2000年にプロジェクトを構想
2012年にウルグアイの首都に初めて設置
「紛争が続く20カ所で和解の芽を植える計画」

 臨津江の郡南ダムと台風(テプン)展望台の間の国境地域にある玉女峰は海抜207メートルの低い峰だが、周辺に遮るものがなく開けているうえ、臨津江の流れを眺めることができ、三国時代の頃から朝鮮戦争まで、激しい争奪戦が繰り広げられた要衝でもある。当初、ユ氏は北の峰にも同じ大きさのグリーティングマンを立て、南北が互いに向き合って挨拶する作品を構想したが、南北関係が悪化したため北の設置作業は課題として残された。

 よりによって人里離れた場所に作品を作った理由を知りたかった。「ただ単に人が多く集まる場所より、長い間、作品の意味を感じとれる場所のほうが重要です。玉女峰を見た時はすぐ一目ぼれしてしまいました。作家なら誰でも作品を建てたい場所です」

 「挨拶する人」を意味するグリーティングマンは、彼が世界の紛争地域に疎通と和解のメッセージを伝えようと推進しているグローバルプロジェクトで、ここに先立ちウルグアイなど国内外の4カ所に高さ6メートルの作品を設置してきた。アルミニウム鋳物4.5トンを使用し、今まででもっとも大きい10メートルの高さで建てられた漣川のグリーティングマンは、今後、世界各地に建設されるグリーティングマンのメッカとして位置づけられる予定だ。

 ユ氏はソウル大彫塑科を卒業した後、ドイツに留学していた2000年からこのプロジェクトを始めた。制作費を工面できずに困難に直面し、2012年に地球の反対側にある南米ウルグアイの首都モンテビデオで初めて作品を披露した。「韓国と最も遠いところから始まり世界に広げたい気持ちでウルグアイを選びました。グリーティングマンを設置した当時は現地の反響はあまり大きくなかったけど、今は『大韓民国広場』と呼ばれて観光案内パンフレットの初章に掲載されるほどの地域の名物になりました」

 その後、朝鮮戦争の激戦地と分断の苦痛を経験した江原道楊口郡亥安面と済州道西帰浦に2、3号を設置。1月には太平洋と大西洋、北米と南米を結ぶ文明の通路の役割を果してきたパナマに4番目の作品を作った。パナマシティはグリーティングマンをランドマークにする方針で、無償で作品を寄贈したユ氏に感謝の意味で名誉市民証も与えた。

 グリーティングマンの人気の秘訣についてユ氏は「国ごとに形は違うけど、挨拶を受けるのは気持ちのいいことです。グリーティングマンが建てられた後、ウルグアイとパナマ国民から韓国人が挨拶していると感じられるようで、韓国のイメージがよくなったという話もよく聞きます」と話した。

 彼は今後も、戦争の苦痛を経験したり、歴史的に意味がある場所に、平和のメッセージを盛り込んだグリーティングマンを立てていく計画だ。少なくとも5年以内に海外20カ所に立てるのが目標だ。

 まず今年10月に、赤道が通るエクアドルの首都キトの赤道記念館前の広場にグリーティングマンを立てる予定だ。キトは南米の国連と呼ばれる南米諸国連合(UNASUR)の12カ国首脳会談が開かれる場所でもある。現在、すべての準備を終え、エクアドル政府の最終許可を待っている。また、欧州とアジア文化が融合したブラジルのヘシピと南米大陸の終着点であるアルゼンチンのウシュアイアでも建設を推進中だ。欧州のアフリカ植民地支配の関門の役割を果たしてきたジブラルタルとモロッコにも、大陸間の和解の象徴としてグリーティングマンを向かい合わせて建設する計画だ。

 アジアでは、今年解放戦争50周年を迎えたベトナムと、シルクロードの要衝地だったキルギスタンが対象地にあがっている。ユ氏は「ベトナム参戦兵士だった父親に代わり、今年はなんとしてもベトナム国民に謝罪のメッセージを伝えたかったが、様々な事情で実現しなかった」と悔やむ。また、地球温暖化で海水面が上昇し数十年以内に地図上から消えることになる南太平洋の島国キリバスにも立て、世界の人たちにグリーティングマンが沈んでいく姿を見せ、環境破壊の危険性を想起させる計画だ。

 ユ氏はグリーティングマンのプロジェクトを生涯の課題として一人ですべての作業を進めている。作品を無償で寄贈するので、一人で製作、運送、設置の費用を準備し、提案書を持参して大使館と現場を訪れ、現地政府の許可も取りつけなければならない。「幸いウルグアイやパナマの国民が喜んでくれ、3~4年前から徐々に提案してきた国家からも肯定的な反応が続いており勇気づけられる。これまでは別の作品の収益金を経費に充ててきたが、今後はさらに拡大するため、有意義な企業などの後援も期待する」と話した。

漣川/パク・ギョンマン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-04-21 19:34

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/740776.html 訳Y.B