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[インタビュー]映画『内部者たち』で新たな境地に挑む俳優イ・ビョンホン

登録:2015-11-05 00:40 修正:2015-11-07 15:28
「こんなに社会性の強い映画は初めて…私をどこに連れていくのか心配」
イ・ビョンホン氏 =ショーボックス提供 //ハンギョレ新聞社

 彼は緊張していた。2日、映画『内部者たち』試写会場に黒い服を着て現れた時も、インタビューでも緊張した様子を隠せなかった。 昨年、映画『内部者たち』撮影の真っ最中にさく烈した動画スキャンダルと告訴事態は現在も進行形だ。 今年彼が出演した『侠女、刀の記憶』と『ターミネーター:ジェネシス』が封切られたが、大衆の前に一切姿を見せなかった。 試写会で「映画『内部者たち』を前もって観ていたが、再び震える気持ちで来た」と言ったのはこうした事情があったためだ。 イ・ビョンホンに3日、ソウル鍾路(チョンノ)区昭格(ソギョク)洞のあるカフェで会った。

 「シナリオを初めて受け取った時、組織暴力団員アン・サングはあまりに単純な人間のようでつまらなく見えました。 卑劣で複雑な論説主幹イ・ガンヒ(ペク・ユンシク)のような役をやりたかったが、私に許された役ではありませんでした」。イ・ビョンホンは結局、映画『内部者たち』で暴力団員アン・サングを演じた。 イ・ガンヒの支援を受けて有力大統領候補や財閥会長と取引しようとしたが発覚する役だ。 単純無知だが、そのおかげで知識のある人々の意表を突いて権力を動揺させるキャラクターだ。

頭のてっぺんからつま先まで“80年代”
暴力団員アン・サングに完ぺきに変身
「人情味を出すためにアドリブ加味」
スキャンダルに関する質問には「責任感を持って生きる」

 「アン・サングは行動隊長で戦車のように暴れ回る役柄ですが、それだけでは観客が息をつぐ余裕がないと感じると思いました。それで生まれて初めてアドリブをたくさん入れてみました」。イ・ビョンホンが現場で提案を繰り返し、それを監督が受け入れたおかげでアン・サングはおかしくも素朴な“ファッションチンピラ”のキャラクターになった。“モルディブ”と“モヒート”をあべこべにしたり、モーテルの部屋にある内部が明るく照らされたガラス製トイレに座って用を足す場面などは彼が提案して作られたと話した。 また、チンピラであっても一時は演芸企画社を運営したことがあり“オールドシネマ”狂で李銀河(イ・ウナ)の歌「春の雨」を流しながら人を拷問するアン・サングのキャラクターのために、80年代風に髪を長くするなどチンピラ風ファッションに精魂を込めた。

 既得権層に深々と位置した内部者たちを通じて、韓国社会の腐敗作動メカニズムを暴く映画『内部者たち』は、彼が初めて挑戦する社会性の強い映画だ。「一時は銃を撃って暴れ回る香港映画が大勢だったが、『生き残るための3つの取引(原題「不当取り引き」)』のように今の映画は全て社会性のある方向に向かっているようです。意図したわけではなかったのですが映画人生20年間に一度もこのような映画に出演したことがありませんでした」。このような点から『内部者たち』はイ・ビョンホンの映画人生でもう一つの分岐点となる。「1995年の『誰が俺を狂わせるのか』でデビューしましたが映画が連続4本失敗しました。『共同警備区域JSA』が記録的な興行を果たして関心を集め、『甘い人生』でハリウッドに行くことになりました」。彼は「『内部者たち』が今度は私をどこに連れていくのか気になる」と話した。

 私生活は複雑だが、彼が俳優として屈したわけではない。 来年封切り予定作だけで2本ある。 しかし『内部者たち』の封切りが延ばされるなどイメージが重要な俳優が担わなければならない責任は重い。「謝罪すれば済むわけではないということも知っているし、今後は私生活でも映画関係者としてでも責任感を持って生きなければならないと思っています」。スキャンダルに関して尋ねた後、頭をしばらくうつむいてから言った言葉だ。

ナム・ウンジュ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/culture/movie/715964.html 韓国語原文入力:2015-11-04 19:03
訳J.S(1709字)