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【土曜版】体/ガンを呼ぶ交替勤務 夜を忘れた体、徐々に壊れていく体

登録:2014-01-15 22:03 修正:2014-01-16 06:56
交替勤務は夜間勤務を必要とする。夜間勤務はいくら日常的に繰り返しても、慣れることはなくきつい。地球の自転により生じる昼と夜の周期的な変化に体は自然に反応するのだ。クァク・ユンソプ先任記者 kwak1027@hani.co.kr

▶星の輝く夜に一人だけで働いたことがあると思います。24時間稼働の先端工場のような世の中では、私たちの体は夜をきちんと営めずにいます。 医学的に、日が昇っていない時刻に仕事をしたり、寝ないで起きていると、体が自分で反応するそうです。 癌、心血管系疾患、慢性疲労と過労死…。どれも知っている事ですが実践はやさしくありません。寝ましょう、もう夜は仕事をしないで眠らせてください。

 今、読者の皆さんがこの記事をいつ、どこで読んでいるか知りたいところだ。土曜版の記事だからのんびりと遅い朝食でもとりながら新聞をひろげて読んでいる人もいるだろうが、仕事でまんじりともせずに夜を明かし、ようやく眠ろうとする直前の布団の中で読んでいる人も確かにいるだろう。あるいは真夜中に勤務先でちょっと休憩しながら携帯電話を通して見ているとか。

 一体そんな人がどれほどいるだろうかと首をかしげてはいけない。 全労働者の5人に1人以上が実際に、夜通し働いている。 2011年6月、雇用労働部が「労働時間の実態調査」を通じて調査した交替勤務の現状を見ると、調査対象となった10人以上の企業の15.2%、製造業の22%が交替制を実施している。 自動車製造業は43.7%とほぼ半数が交替制を採用している。調査対象には軍人や警察、保健および社会福祉サービス業従事者など、相対的に交替勤務の可能性が高い職業群は含まれていない。 アルバイトや派遣などの雇用形態もほとんど抜けている。

交替勤務は他人のことだと考えている人もいるが、そうではない。

 「医学的には、午前7時前と午後7時以降の作業が含まれた勤務はすべて交替勤務と見なければなりません。」

 キム・イナ仁川(インチョン)労働者健康センター室長(延世(ヨンセ)大学保健大学院研究教授)の説明だ。交替勤務は一般的な勤務時間外にも作業をする必要のある際に採られる勤務形態だ。一般的でない勤務時間とは、午後7時から午前7時までのことで、この時間帯の周期的な作業のために労働時間を変形して配置すれば、すべて広い意味での交替勤務である。交替勤務は少なからず健康問題の原因となることが明らかになっているが、核心的な原因の一つとして夜間勤務が挙げられる。 交替勤務の問題は夜間勤務の問題と分離できない。

看護師の夜勤と乳がんの相関関係

 交替勤務が体に与える影響は大きく二つに分けられる。まず、夜間勤務自体の与える負担だ。夜に眠気を我慢して仕事をするのはそれ自体が苦痛である。事故の危険性も高い。問題は徹夜を日常的に行なっても、慣れることはなく、ずっと苦痛だということだ。これについては、韓国労働安全保健研究所と<緑の(ノクセク)病院>労働環境健康研究所、および全国金属労組が2011年に出版した「睡眠障害実態調査報告書」にその事例がよく出ている(韓国労働安全保健研究所のホームページ http://www.kilsh.or.kr/ で見ることができる)。 昼夜二交替制勤務14年目になる金属労働者のキム某さんは「交替勤務は絶対に慣れることができない」とはっきり言っている。 「夜間勤務には絶対に適応がありません。夜間勤務経歴20年だとしても、夜間勤務時に元気でぴんぴんしていて寝なくても大丈夫だとか、朝退勤して家に帰りぐっすり眠れるとか、そういうことはありません。 夜間勤務1年目であろうと10年目であろうと30年目であろうと、適応は絶対に不可能なのです。」(報告書10ページ)

 交替勤務の健康に及ぼすもう一つの影響は、不規則な勤務時間が引き起こす身体リズムの破壊だ。科学では生物の「概日リズム」の研究が活発だ。 概日リズムとは地球が自転してできる昼と夜の周期的な変化に体が反応することを指す。 体内ホルモンと機関の代謝活動がこの周期に緊密につながっているという事実が、生物学と医学の研究で続々と明らかになっている。 概日リズムが破壊されると健康も無視できない影響を受けるという事実も、共に明らかになっている。

労働者5人に1人が
深夜まんじりともせず働いている
医学的には午前7時前および
午後7時以降の作業を含む勤務は
すべて交替勤務に該当する

夜間勤務で 一日の周期が不規則に
がん・血管系疾患にさらされ
慢性疲労と睡眠不足に悩まされて
「夜勤1年目でも10年目でも
適応は絶対にできません」

 代表的なものが癌である。すでに国際癌研究機構(IARC)は2007年、交替勤務を発癌物質等級で2番目に高い2Aに上げた。 「今のところまだ人体についての資料は制限的だが、発癌物質である可能性が高い」いう意味だ。 原因としては、夜間作業中に当たった光が概日リズムを破壊するという点と、睡眠ホルモンであるメラトニンの生成を抑制するという点が挙げられた。 メラトニンが減少するとエストロゲン濃度が高まるなど、連鎖的なホルモン障害が起き、癌が発生する確率が高くなる。代表的な例が乳癌である。

 2011年6月、米国疫学会誌にノルウェーの看護師4万9402人を17年間追跡調査した研究結果が発表された。韓国も同じだが、看護師は夜間勤務を連続して行なうケースが多い。研究の結果、夜間勤務を連続して行なう日数が長くなるほど、乳がんの発生リスクが高まった。5年以上勤務者の中で夜間勤務を4日連続で行った人は、乳がんの発生リスクが他の人より1.4倍高かったが、6日連続で行った場合には1.8倍へと大幅に跳ね上がった。

 心血管系疾患もよく言及される問題だ。 普通「過労死」と呼ばれている突然の死の中には、狭心症、心筋梗塞、脳出血、脳梗塞などの血管性疾患が多い。これらの疾患が勤務時間や勤務形態との関連が強いという意味だ。 現代自動車労組が2004年に労働者を対象として行なった調査結果を見ると、昼夜二交替制の労働者は昼間勤務の労働者に比べて、高血圧や脳血管疾患の診断を受けた割合が2~3倍高かった。 ファン・スンシク仁荷(イナ)大医学部教授(予防医学)は「夜起きているだけでなく反復的に労働をするので、体に無理が行き、結局自律神経に異常が生じて心臓血管系の症状が起こり得る」と述べた。

昨年3月、現代自動車は創立46年目にして徹夜勤務をなくし、昼間連続2交替制を施行した。施行当日、朝6時50分に勤務を開始した労働者たち。連合ニュース

24時間サービス業も危険だ

 もっと怖いのは慢性疲労と睡眠不足かもしれない。生活を徐々に破壊するからだ。先に言及した「睡眠障害実態調査報告書」では、ほとんどの労働者が深刻な不眠と疲労を訴えている。 「明るい昼間に眠ろうとするとなかなか寝付けないので、むしろ、へとへとになるくらいに夜間勤務が忙しい方がいい」といった言葉や、「疲労から、週末の昼間やたらと家族に癇癪気味になる自分に気付き苦痛だ」といった類の陳述もある。 家族関係をおろそかにし幸福感を低下させることを知りながらも、期限不明のままに反復し続けなければならない。 これこそ「現代版シジフォス」にほかならない交替勤務者が経験する最悪の苦痛ではないだろうか。

 幸い、最近小さいけれども意味ある変化が起きている。 昨年8月、産業安全保健法施行規則改正案が公表された。夜間作業従事者のいる事業場の雇い主に、当該労働者が毎年職業環境医学専門医に会って特殊健康診断を受けさせるよう義務付ける内容だ。 睡眠障害や心血管系疾患、乳がん、消化器疾患など交替勤務の代表的な健康問題を、問診と診察により確認し相談することができるので、生活の質はもちろん健康を守るのに役立つと予想される。 今年はまず300人以上の事業場を対象とし、3年にわたって徐々に拡大していく。

 交替勤務をできるだけ夜間勤務が含まれないように調整する方法もある。 昼夜2交替をしていた自動車部品メーカー トゥウォン精工は、2010年9月から昼間連続2交替に勤務形態を変えた。午前8時から午後4時まで働く組と午後4時から夜12時まで働く組とが交替で勤務する形だ。 午後7時から夜12時までの勤務が排除されず、余裕のない二交替制の形も相変わらずだが、それでも深夜と明け方の勤務は避けた次善の策だった。キム教授は「社会学者と医師等が中心となって労働者にインタビューした結果、家族生活や幸福度等も大きく改善されている」と述べた。

 ファン教授は「工場も問題だが、これからは24時間運営されるサービス業にも注意を向けるべきだ」として「やむを得ず夜間勤務をするとしても、3日以上連続ではしないよう日程を調整し、時間に逆行する(夜-夕方-午後-午前の順の)循環交替制よりは、時間順に沿った交替制を採用し、身体への被害を最小化すべきだ」と述べた。

 チャーリー・チャップリン主演の映画<モダン・タイムス>の有名な場面で、チャップリンは巨大な歯車を直しに入ったけれども、反対に歯車に巻き込まれていく。機械を掌握しようとしていた人間が、反対に機械にとらわれ、産業を思いのままに操ろうとしていた現代人が反対に産業に引きずり回される姿を、巧みに形象化した比喩だった。くるくる回転する歯車は、時計を喚起させもする。人類は時間までも魔術師のように手なずけようとし、結局、電気技術と精巧な交替制を発明し、ある程度成功したかに見えた。しかし、人類が忘れていることがある。夜を屈服させることには成功したかもしれないが、肝心のその夜を生きる我々の体は全く慣らすことができなかったということ。 今日も夜を徹して働いているあなたは、夜を支配するのではなく、夜の闇に少しずつ身体を蝕まれている。重厚なこの歯車から脱する方法を、皆で一緒に模索すべき時ではないか。

ユン・シニョン科学東亜記者

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/619269.html 韓国語原文入力:2014/01/11 16:44
訳A.K(4257字)

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