<レ・ミゼラブル>熱風だ。 映画にミュージカル、レコードから小説まで。 今冬、韓国人は‘貧しく哀れな人々’(レ・ミゼラブル)にはまった。
映画<レ・ミゼラブル>は封切後3週目の9日に観客440万人動員を越した。 週末をすぎればミュージカル映画としては国内最高興行作である<マンマミーア>(観客453万)の記録を更新し、来週中には500万観客突破も確実視される。 ミュージカル<レ・ミゼラブル>も7万余の観客を集めて興行している。 昨年11月、京畿道龍仁(ヨンイン)を経て現在は大邱(テグ)で公演中だが、4月にはソウルに‘上陸’する予定なので熱気が春まで続く展望だ。 ミュージカル製作会社(KCMI)側は映画が突風を巻き起こしソウル公演に対する問い合わせが相次いでいると伝えた。
原作小説も先月の映画封切後に15万部が売れた。 民音社の5巻<レ・ミゼラブル>が10万部、ペンギンクラシックコリアの5巻セットが5万部売れた。 先月25日に発売された映画のサウンドトラック音盤も2週間で2万枚余りが売れた。 音盤は1万枚を越しただけでも‘プラチナム’と言い‘大当たり’になるが、このレコードは2週間で‘ダブル プラチナム’記録を越えた。
革命が冷めた後、保守化された19C フランス
不平等が一層深刻化された私たちの現実がオーバーラップ
人間の本性に深く食い込んだ原作の力
メッセージがよく溶け込んだ音楽も興行に一役
人間臭さが漂う政治期待も加勢
映画は現在、米国・日本など世界でも1億8737万余ドルの売り上げを記録して興行中だが、中でも韓国観客の熱気がとりわけ熱い。 配給会社側は「人口とチケット価格などを考慮した時、我が国で人気が特に高い」と話した。 ヴィクトル・ユーゴーの原作小説はフランス大革命以後の19世紀前半期を背景とした貧しい人々と革命家の話だ。 今回の映画とミュージカルは原作を最大限に生かした‘版本’と評価される。 年末年始 韓国人はなぜ‘レ・ミゼラブル’に熱狂するのか、歴史・文学・音楽の側面から専門家たちの分析を聞いてみた。
■ 民主化以後 不平等が深刻化された韓国の現実と比較
チェ・カプス ソウル大西洋史学科教授(フランス史)はレ・ミゼラブル熱風の理由として 「大革命以後にも依然として貧困と不平等が広がった19世紀フランス社会と、民主化以後にも貧富格差と経済的不平等が解消されなかった現在の韓国社会の類似点」を指摘した。 チェ教授は「<レ・ミゼラブル>は革命をしたのに暮らしの根本的な変化がなかったという内容を含んでいる、未完の革命に関する話だ。 1848年2月革命以後に6月蜂起があったが、政府軍がパリ市民5000人を虐殺した。 ‘長期化した革命の時代’に最後の解決を見られないまま1871年にパリ コンミューンが崩壊した以後‘民衆のフランス’は撲滅され、パリは極めて保守化された」と説明した。 チェ教授は「我が国は4・19革命と1980年ソウルの春、5・18光州(クァンジュ)民主化運動、87年6月抗争等を通して一定水準民主化されたが社会的不平等はかえって悪化してきた」として「(観客が<レ・ミゼラブル>に感情移入するのは)このような現実になぞらえて見られる点があるため」と話した。
■ 多様な解釈生む原作の力
ペンギンクラシック版<レ・ミゼラブル>の翻訳者であるイ・ヒョンシク(67)ソウル大名誉教授(フランス語教育科)は「多様な人間群像と19世紀のパリの様子を忠実に描いた豊かな原作の力こそ<レ・ミゼラブル>が一部の階層に限定されず440万人を越える観客の心を泣かせた理由」と指摘した。
多くの観客がツイッター・フェイスブックを通じて映画<レ・ミゼラブル>で傷を癒され慰労を得たと吐露している。 こういう現象に対してイ教授は 「原作小説は人間存在の本性に残忍なほど露骨に食い込むので悲しみ、あるいは虚無を感じこそすれ原作小説自体を慰労のテキストとは見難い」と語った。 彼はしかし「原作には人間の生来的な、‘魂から出る人本主義’が流れている。 宗教やイデオロギーに限定されずに深く広いヒューマニズムのおかげで人々が各々の境遇により慰安の種を得る余地が明確にある」と付け加えた。
■ メッセージをうまく溶かした音楽
映画の人気の秘訣から音楽の力を見逃すことはできない。 ミュージカル<レ・ミゼラブル>韓国語版公演音楽を総括するキム・ムンジョン音楽監督は「ミュージカルと映画は主要テーマになる歌を伴奏とコーラスを通じて繰り返し観客の脳裏に植え付け、後に主要人物の歌を通じてさく烈させる方式で音楽を賢く展開している」として、ミュージカルとミュージカルを移した映画の音楽的成就を興行成功の要因として挙げた。 彼は「たとえば‘On my own’という歌は冒頭でジャンバルジャンが監獄から出る時にも出てきて、中間にもテーマ曲として流れ、エポニーヌの歌を通じて絶頂に達し、マリウスが同僚が死んだ後に一人で歌う‘エンプティ チェア’も作品序盤に主教が歌う歌であり、やはり伴奏として繰り返され最後に確実にもう一度歌う」としながら「この作品の音楽展開には反復を通じて観客の脳裏にメロディと歌詞を植え付ける戦略が使われている」と説明した。
キム監督は 「ミュージカルで音楽の役割はドラマをよく具現することだが、哀れで無念な人々、召命意識が強い原則主義者など多様な人間群像と善悪・貧富などの対比点を音楽が暖かく指摘するので観客が各々の状況に応じて共感し慰労を得る余地が豊富だ。 特に映画は俳優を通じて音楽をクローズアップし観客に伝えることに成功した」と話した。
ミュージカル評論家ウォン・ジョンウォン順天郷(スンチョンヒャン)大教授もやはり 「あたかも2時間を超える長い歌のように音楽が完ぺきなつながりを持っている。 その中にキャラクターと話がよく具現されている」と評した。 ウォン教授は「多くの観客が‘人’という要素に感動している点、革命自体でなく‘革命の中の人々’. 人のにおいのする政治が示唆点ではないだろうか」と<レ・ミゼラブル>熱風の意味を解釈した。
パク・ポミ記者 bomi@hani.co.kr