原文入力:2012/02/07 21:43(2638字)
←去る6日ソウル、合井洞(ハプチョンドン)のフマニタス事務室でパク・サンフン(右側)フマニタス代表とイ・スンウ(左)図書出版'キル'企画室長が学術出版の現況と展望について話を交わしている。 二人は学界に、より多くの自律性が与えられてこそ学術出版も持続可能だと口をそろえた。 イ・ジョンア記者 leej@hani.co.kr
人文・学術出版人の診断
出版界が経営困難ということは昨日今日の話ではないが、その中でも特に学術出版は明らかに限界に来ている。人文・社会科学分野で教養書はスター著者を基盤として着実に売れているが、本格的な学術書出版は人々のうわさになる間もなく無くなっているという危機意識が次第に強まっている。
去る6日、良質な社会科学書籍を出してきたフマニタス パク・サンフン代表と重厚な人文・学術書を主に出してきた図書出版キルのイ・スンウ企画室長にソウル、合井洞のフマニタス事務室で一緒に会い、国内人文・学術出版の現況と展望について話を聞いた。
二人は「出版社ごとに事情が違うので、私たちの話が出版界全体を代弁することはできない」としつつも、現在の状況と展望について比較的一致した見解を示した。
■本格的な学術書、1000部も印刷できない
二人は教養書とは区分される "国内学者が長期的な観点で内実のある研究をして出す学術書" の出版が、知識生産体系の好循環のために重要だという点を強調した。 しかし、すぐに両出版社にしても学術書を出す時は初版1000部程度刷るという暗黙的な基準が600~700部程度に急減する程に危険な状況だと口をそろえた。 学術書がますます‘出血出版’になっているという。
昨年、図書出版キルが出したキム・ユドン慶尚(キョンサン)大教授の文明史研究である<沖積世文明>は初版を600部刷ったという。再版部数も悩んだ挙句300部刷ったが、それでも殆ど出て行かない状況だ。 精魂込めて作った学術書の現実はほとんどのこのようだという。 フマニタスも去る一年間1000部以上販売した本が半分にもならない。この出版社の新刊の30%ほどが学術書である点を考慮すれば、学術書出版は元もとれない現実を示している。
初版1千部も売れずため息
スター級著者の教養書は売り切れ
その上、市中に出てくる本の学術的価値に対する憂慮が重なる。 イ室長は「90年代後半から韓国史、哲学などで大衆的文を書く若い筆者が現れたが、長い呼吸と長い観点で学術的研究を書いた本は少ない」と指摘した。すなわち知っている知識を大衆と分かち合う文を書くことに成功した有名筆者は、研究を通じて新しい知識を生産する学術的活動はおろそかにしているということだ。 ここ数年間、年末に各種メディアが発表する‘今年の本’目録だけ見ても、重厚な学術的成果を書いた本は見あたらないという。 イ室長は「学術書と教養書が共存しなければならないが、出版界がスター級著者を‘消耗’させながら、学術書出版は冷遇して教養書出版だけにぶら下がっている」と批判した。
■国家の前に行列を作らせる知識生産体系に問題
二人は「学術書を書いて出すだけの条件を備えた筆者も探すのは難しい」と残念がった。 学界でも自らの呼吸で長期的な研究を進め、それを本に書いて出せる余力を備えた学者が殆どいないということだ。 パク代表は「論文を見て斬新な問題意識とか新しい接近法に惹かれて‘本を書いてみなさい’と勧誘・提案した学者も多かったが、皆本を書く余力がないと言って断りました」と話した。
イ・スンウ‘図書出版キル’室長
"大学内 教授競争体制のために
叙述より論文優先"
単行本の著述よりも優先順位が高いものは何だろうか? 論文とプロジェクト、学会や研究所などでの行政業務などだと言う。 イ室長は「教授競争体制の導入などによる大学社会の急激な変化により計量的業績算定が優先席を占めた結果、著述がなくなってきている」と語った。 一言で言えば、著述より論文点数の方がより重要になったということ。 単行本著述や翻訳書があまり出てこない理由がここにあるという。 パク代表は「1年に16編の論文を書いて出す歴史学者に会ったこともある」と付け加える。 このようにして作られる論文とプロジェクトは基本的に出版につながり難い。 共同研究の結果などが時々‘編著’として出てくるけれども、複数の人の問題意識を混ぜて入れたという限界は免れがたいと言う。
出版人二人のこのような指摘は事実、以前からあった問題提起だ。 学界の一角ではすでに‘学振システム’という名前で、国家が主導する研究費支援を中心に知識生産がなされる現実を批判してきた。 今は出版人までがこのような現実批判に加勢している。 パク代表は「90年代以後、国家が予算や政策を通じて知識生産に及ぼした影響が大きい」として「学者自らの研究が難しくなり出版界にも意味ある‘インプット’が減っている」と解説した。
■出版文化が知識生産を主導すべき
二人は「70~80年代に出版文化が知識生産と社会運動すべてを主導した経験を再確認する必要がある」として‘長期的観点’と‘自律性’を強調した。 知識生産体系に自律性を強化し、長期的観点の研究を誘導する必要があるということだ。 それでこそ出版界もそれに呼応して学術出版に積極的に取り組めるという話だ。 また、商業出版に重点を置く大型出版社が本格的な学術出版にも乗り出さなければならない必要性を提起した。 英米圏では大学出版社がそういう役割を果たしているが、わが国の現実ではその機能を大型出版社が担う必要があるという主張だ。
パク・サンフン フマニタス代表
“国家主導研究費支援が
学者自律研究を困難にさせている”
書評と論争など学術討論の空間がより一層拡大する必要性と中小規模出版社の自己革新も重要な課題として提起された。 パク代表は「5000部から1万部程度売れる多様な学術書が教養書と一緒に共存することが最も望ましい姿ではないだろうか」と語った。
チェ・ウォンヒョン記者 circle@hani.co.kr
原文: https://www.hani.co.kr/arti/culture/religion/517971.html 訳J.S