原文入力:20111115 20:17(1724字)
←カン・ヒョンチョル淑明(スンミョン)女子大メディア学部教授
放送は韓-米自由貿易協定(FTA)で損害が生ずる典型的な領域だ。 FTAの原則は両国のプログラムと事業者が相手国で同等な待遇を受けることだ。 しかし実状は米国の放送番組が今よりさらに一方的に輸入され、韓国の番組は今と同様ほとんど輸出できないということだ。 これまで維持してきた色々な保護措置が解除されるためだ。 映画とアニメーションなどの国内制作物編成義務は減らし、一つの国(すなわち米国)から輸入した番組編成比率は増やす。 地上波、報道、総合編成、ホームショッピングのチャンネルを除けば、いかなるチャンネルでも米国人が100%所有することができる。
これからは狭い韓国市場で徒に多額の金を使って番組作って結局赤字になるよりは、製作費は多くかかっているけれども価格は安いアメリカのものを編成する方がましだろう。 競争力がある分野はさらに育て、そうでない分野は相手に渡すということ(“比較優位論”)がFTAの精神ならば、放送産業を米国に手渡すのは自然な帰結だ。 しかしこれは情緒と創意性を共に渡してしまうことになる。 たとえ洋服を着てはいても、韓国人は共通の情緒と連帯感を守ってきた。 放送はこのようなアイデンティティ維持手段の一つであった。 (FTA以後)韓国の視聴者は、時間とともに水準が低くなる国産番組よりは「ミドゥ」(米国ドラマ)を一層見ることになるだろう。
はじめは放送は産業でなく文化として取り扱われ、自由貿易の対象ではなかった。 しかし1980~90年代に進行された多者間自由貿易交渉のウルグァイラウンドでは、放送を“サービス分野”に入れ込んだ。そして多くの国が一度に協定を結ぶ方式のウルグァイラウンドは進展が容易でなかったため、米国は小さい国を一つずつ選んで二者間交渉を妥結し、終局的にはこの協定内容を国際貿易交渉の“標準”にしていくFTAを推進するようになった。 こうして韓国の放送も“サービス産業”の一つとして米国に開放することになった。
開放そのものより心配なのは、放送の創意性と公正性を育てるための装置をFTA以後はもはや稼動させられなくなるという点だ。 言語と文化的な違いのために国際競争力が弱い韓国の放送は、今の開放水準でもむしろ保護・育成しなければならない状況だ。 したがって社会資産である電波を使う地上波放送に対し、より一層強度の義務と社会的支援を付与して他の放送会社の創意性と公正性を牽引する役割を担わせることが重要だ。 しかし不幸なことに社会的支援はFTAの原則に反する。協定文は世界的傾向を無視できずに公営放送受信料を当分維持することにしたものの(これを「未来留保」という)、それ以外の新しい支援は不可能だ。 あらかじめ挙げておいたものだけが例外として認められる“ネガティブ リスト方式”のためだ。 <文化放送>(MBC)とSBSは始めから支援対象から除外されており、付加チャンネルなど地上波に対するいかなる特典も不公正取り引き行為になるだろう。
以前は国内の私営多チャンネル事業者が公的価値を守ろうとする色々な措置に対し“抗議”するという水準だったが、これからは韓国に入ってくる米国事業者が不公正を“提訴”することになろう。 その他にも、放送全般に対する賢明な支援政策が浮び上がってもこれは協定違反になる可能性が大きい。皮肉な話だけれども、特定の放送が良いチャンネル番号を取得できるように政府が行政指導(?)をすることも不可能になろう。
放送分野でFTAの最大の問題点は、放送の商業化がさらに加速化されるということだ。 そして韓国の番組水準が次第に落ち米国の番組は増える一方という状況になっても、手足を縛られてしまった国家がやれることはもはやないという事実だ。
淑明(スンミョン)女子大メディア学部教授
原文: https://www.hani.co.kr/arti/society/media/505574.html 訳A.K