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[特派員コラム] そんな‘(韓国)原子力安全委’をなぜ作るのか/チョン・ナムグ

原文入力:2011/09/01 19:17(1782字)


最も重要な条件は‘独立性’だ。しかし、そのような期待はすでに崩れた


←チョン・ナムグ東京特派員


人間が作った機械は欠陥を持っている。完全ではない人間がそれを動かせば、事故は避けられない。福島原子力発電所事故を見ながら今一度そのことを骨に凍みて悟る。振り返ってみれば大きな事故は偶然が重なった時に起きる。

福島原子力発電所に使われた米国ゼネラルエレクトリック(GE)の‘マーク1’原子炉は、誕生してまもなく会社の一部専門家たちが「全て撤去しなければならない」と主張し大きな論議をかもした機種だ。水素爆発が容易に起きうるということだった。しかし設置された原子炉は撤去されなかった。危険だと主張した人々が会社を去ることで欠点は埋ずめられた。

福島原子力発電所は非常用ディーゼル発電機が地下に設置されていた。津波が押し寄せた場合、一番最初に浸水被害にあうことになっていた。ハリケーンが多く発生する米国を基準とした設計図を日本でそのまま使ったためだ。東京電力は当初、海抜35mだった発電所の場所を25mも削り、海抜10mの高さに下げた。冷却用海水の引き込みにかかる費用を減らすためであった。去る3月11日、10mを越える津波が押し寄せ、非常用ディーゼル発電機は全て役に立たなくなった。


福島に大規模津波が押し寄せる恐れがあるという警告は多かった。一部の研究者は仙台平野の堆積層を調査し、869年に起きた規模8.3~8.6の貞観地震と同規模の地震が1000年周期で起きていたことを明らかにし、それに備えるよう警告していた。1933年宮城県の東方近海で起きた昭和三陸地震は規模が8.1であり津波の最高高さが28.7mであった。福島原子力発電所を運営した東京電力も大きな地震が起きれば10m以上の津波が押し寄せることを把握していた。しかし何の措置もとらなかった。


日本の原子力事故損害賠償制度は事故に備えて原発事業者と政府が保険に入るようになっている。大規模天災地変にともなう事故は政府が賠償するように定めている。電力会社にとって安全に投資するよりは収益極大化を追求するようにする構造だ。電力会社のモラルハザードを防がなければならない所がまさに原子力安全保安院のような機構であった。


だが、保安院はまともに作動しなかった。保安院は原子力産業を国策として推進してきた経済産業省の傘下にあった。保安院の幹部は経済産業省および電力会社と仲良く過ごしていれば後日、電力会社の役員になれるからと、きちんとした見張りの役割を果たすことが初めから困難だった。その上、保安院には電力会社を退職した人々が多かった。30年間使うように設計された原子力発電所が40年を超えて稼動し、地震・津波対応をおざなりにした原子力発電所が継続して動いていたのにはこういう問題があった。日本政府は福島原子力発電所事故後、こういう問題点を深く反省した。そして経済産業省傘下の原子力安全保安院と内閣府所属の原子力安全委員会を統廃合し原子力安全庁を作り、それを環境省の傘下に置くことにした。


我が国も今回、原子力安全委員会を大統領直属機構として新設し、10月にスタートさせる。日本の事例を見れば、この機構が本来の役割をする上で最も重要な条件は‘独立性’だ。しかし、そのような期待はすでに崩れた。政府は初代委員長(長官級)にカン・チャンスン ソウル大原子核工学科名誉教授を内定した。原発事業者である斗山(トゥサン)重工業の社外重役を務め、業界団体である韓国原子力産業会の副会長を務めた人物だ。彼は去る2004年、全北(チョンブク)、扶安(プアン)廃棄場問題の時は「ソウル大、冠岳(クァナク)キャンパスの地下岩盤に核廃棄物処理場を作ろう」と主張し、世の中を驚かせもした。すでにいくつかの原子力安全関連機構を置いている上に、業界を代弁することが明らかな原子力安全委をなぜまた作るのか、理解が出来ない。新しい働き口の創出か?  jeje@hani.co.kr

原文: https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/494461.html 訳J.S