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[朝の陽射し] 北の脅威というファンタジー

原文入力:2011-04-18午後07:51:04(1931字)

←ハン・スンドン論説委員

弾道ミサイルに乗せられてくる敵国の核兵器を中間で撃ち落とす迎撃体制は、科学技術でもっともらしく包装されてはいるが、お話にならないような命中率が語っているように、非現実的である。 たとえ技術的完成度を画期的に高めるとしても、またそれをかく乱して破壊しようとするまた別の技術開発と天文学的軍事費投入を誘発する悪循環が軍備競争を加速化し、相互確証破壊の恐怖を倍加させるだけだ。

国防部が、失敗に終わったロナルド・レーガン米大統領時代の米国戦略防衛構想(SDI)のコピー版であるミサイル防御(MD)体制の韓国型システムを作ると言って、結局米国と共同研究約定なるものを結んだ。 解決法は核兵器自体をなくすことだと言ったミハイル・ゴルバチョフの論法によるならば、北の核とミサイルの脅威に迎撃体制など軍備強化で対応するのは、問題をさらにもつれさせるバカな行為だ。 対決構造の解体が正解である。

米中央情報局(CIA)のサイト、ワールドファクトブックを見れば、昨年韓国の国内総生産(GDP)は公式為替レート基準で9863億ドルだ。 実質購買力指数基準では1兆4670億ドル。 昨年の軍事費(国防費)が306億ドルだったというから、公式為替レート基準国内総生産の3%余りが軍事費に使われたわけだ。 北朝鮮の国内総生産は公式為替レート基準で280億ドル、実質購買力指数基準では400億ドル(2009年)であった。 北朝鮮の軍事費項目は“資料なし”となっているが、公式為替レート基準で南側のように軍事費を国内総生産対比3%程度を使ったとすれば8億ドル、20%を使ったとすれば50億ドルをちょっと越える額、国防研究院などの主張のとおり何と30%も使ったとしても、80億ドル余りだ。

日本の新しい“防衛計画大綱”と“中期防衛力整備計画”は、今後5年間に約23兆5000億円の軍事費を投じるとしている。 毎年500億ドルを越える額だ。 海外の軍事的役割を増やし、ミサイル防御と“北朝鮮の脅威”、防衛産業に、より一層力を入れる模様だ。 今回の大地震の波紋は、米-日同盟体制強化とともに、こうした傾向をさらに固めることになる可能性が大きい。

そこには日本の官僚と政治家たちの誤った冷戦意識が敷かれていて、その中心には「北朝鮮の脅威というひどい嘘(big lie)」が存在する、と、カレル・ヴァン・ウォルフレン アムステルダム大学名誉教授(比較政治経済)が最近『ジャパン フォーカス』に書いた文で指摘した。 ウォルフレンは核とミサイル開発に執着する北がちょっと問題ではあるが、それを致命的な脅威と誇張する日本の保守右派の主張はとんでもないものだと言う。 北が望むのは体制の認定と生存だ。 平壌(ピョンヤン)の統治者が自殺でもしようと決意しない限りは、中国もロシアも反対しているのに北の国内総生産より多い軍事費を使う韓国に対して戦争を敢行するだろうか。 しかもその後ろには年に500億ドル以上を軍事費に注ぎ込んでいる日本があり、またその後ろには韓国と日本に軍事基地を置いた米国が構えている。 昨年の米国国防費は何と6930億ドルで政府支出の42%も占めている。

北の脅威という“嘘”のファンタジーを作り出すのは米国の軍産複合体であって、それこそが米軍の東アジア駐留の名分であり、日本の右派はそのような論理を病的に追従する奴隷的・植民地的思考の水準に留まっている、とウォルフレンは批判する。 だが、日本の右派がそのような病的な関係を自ら進んで維持することによって得られる特典を楽しんでいるという可能性についてまで、ウォルフレンが考えてみたかどうかは分からない。

天文学的な国家の負債のために海外基地を土台に組まれた米帝国体制が動揺するだろうという展望が出てきているが、日本は在日米軍の駐留経費の70%を自国民の税金で提供している。 日本の保守右派には、韓民族にとっては最悪とも言える今の東アジア情勢構造の持続が、極右麻生太郎前総理がいつか言ったように、天佑(天佑神助)の局面でありうる。 問題は、韓国の保守主流の安保観が、北の脅威というファンタジーと対決構造とに依存している日本の右派のそれと別に違わないように見える点だ。 それが悲劇の出発点ではないか。

ハン・スンドン論説委員 sdhan@hani.co.kr

原文: https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/473602.html 訳A.K