原文入力:2010-10-18午前10:37:50(2686字)
譲渡税は持ち家保有率を高め
住宅価格のハードランディングを防ぐ安全弁の役割
公共賃貸住宅供給も増やずべき
[シンクタンク対面] 誤った不動産解決法 訂正
取引量減少による損失が15兆ウォンに及ぶという主張、多住宅者の譲渡所得税重課制を廃止すべきという主張、くつろぎの里住宅をもっと増やさなければならないという主張には同意しにくい。
最近、三星経済研究所が不動産市場大勢下落の可能性は低いという内容の報告書をだした。三星研は<不動産市場、大勢下落の可能性点検>という報告書で厳格な貸出規制、世帯数増加、低い持ち家保有率、相対的に健全な貸出資産などを根拠に不動産価格が急落する可能性は低いという意見を出した。
筆者もまた‘誇張されたハードランディング論’に対しては警戒心を持つ。誇張されたハードランディング論は意図とは関係なく政府の生半可な‘不動産浮揚策’を誘導しかねないためだ。最近1~2年間、言論らは誇張された‘未分譲住宅危機論’を流布してきた。負債が多い韓国土地住宅公社(LH)をして、それを大量に買いとるよう誘導し、最近では誇張された‘不動産価格暴落論’を流布し政府の無分別な金融規制緩和を引き出しもした。しかし取引量減少による経済的損失が15兆ウォンに及ぶという主張、取引活性化のために多住宅保有者の譲渡所得税重課制を廃止しなければならないという主張、公共賃貸住宅の代わりにくつろぎの里住宅をもっと増やさなければならないという主張には同意し難い。
同意できる部分から調べよう。厳格な貸出規制が市場のハードランディングを防いでくれるという主張は相当部分 根拠がある。1991年、日本の不動産バブルが最高潮に達した時、LTV(Loan To Value ratio,住宅価格対比貸出額比率)は100%を越えさえした。しかし2009年、我が国のLTVは平均34.4%(国民銀行の実態調査)程度だった。
1人世帯が増える現象が市場のハードランディングを助けるという主張も間違った話ではない。1人世帯が増えれば小型住宅の貸切価格と売買価格が影響を受けることになる。同時にソウル市居住空間の10%(35万世帯)を占める地下・半地下の閉鎖方針も小型住宅・低価格住宅市場に影響を与えるものと展望される。
低い持ち家保有率がソフトランディングを助けるという主張も冷徹に言えば間違った話ではない。ある人は住宅普及率が100%を越えたので不動産市場に‘深刻な供給過剰現象’が現れ、‘ハードランディング’を招くと主張する。しかしそれは誤解だ。住宅普及率は住宅の量だけを表す指標に過ぎず、住宅の質を表示するものではない。統計庁の人口住宅総調査によれば2005年ソウル市の総世帯数は331万世帯であり、アパート居住世帯は122万世帯であった。アパート以上の質の良い住宅で暮らしたい欲求を持っている限り、アパートに対する潜在的需要が消滅したと主張することはできない。
しかし、三星研の報告書は不動産市場に対する比較的物静かな分析とは別に納得し難い主張も含んでいる。2009年10月と2010年7月の間、不動産取引減少による経済的費用が何と15兆7000億ウォンに及ぶという主張が代表的だ。この期間の取引減少で消費者剰余が15兆7000億ウォン減少したとし声を高めた。‘消費者剰余’とは、ある商品に対し消費者が最大限支払っても良いと考える価格から実際に支払う価格を除いた差額をいう。需要曲線の下で価格線を上回る部分の面積を指す。
‘消費者剰余’を根拠に不動産取引量変化が持たらす経済的利益と損失を語るということ、それ自体がナンセンスだ。三星研の主張が正当であるのなら2006年に不動産価格が急騰し取引量が急増した時、経済的厚生もまた年間20兆ウォン以上発生したというあきれる主張も正当性を持つことになる。
投機性の強い市場の経済的効果を推定することは三星研が考えるほどに簡単でない。全国を賭博熱風に追い詰めた‘海物語’取り締まりは相当量の消費者剰余減少を持たらしただろう。しかし海物語取り締まりに反対する経済学者は誰もいない。取り締まりが持たらす経済的利益が損失より大きいためだ。不動産バブルが消える過程も同じだ。過度なハードランディングではないならば、それの経済的利益が損失よりはるかに大きいと言うことができる。
三星研は取引活性化のために多住宅保有者に対する譲渡所得税重課制を廃止すべきと主張する。非常に不適切だ。譲渡所得税は住宅価格急騰期には投資収益率を低め多住宅投機需要を抑制する機能を果たす。急落期には売却を遅延させハードランディングを防ぐ安全弁の役割をする。政府が多住宅保有者の売却を容易にすることはハードランディングを誘導しつつ同時に不労所得還収機会を自ら放棄することで非常に不適切だ。また、三星研は追加財政が投入されるくつろぎの里住宅供給拡大を主張した。持ち家保有率を高めるためにくつろぎの里住宅供給を拡大する必要があるという論理だ。持ち家保有率を高める最も良い方法は多住宅保有者に対する譲渡所得税率を高めることだ。多住宅保有者に対する譲渡所得税率が高まれば、住宅保有にともなう期待収益率が低くなり、期待収益率が低くなれば多住宅者保有者と彼らが保有する住宅数が大幅に減る。多住宅者保有者の数が大きく減れば、どんなことが起きるだろうか。大部分の住宅は1世帯1住宅保有者の手に戻り、持ち家保有率は自然に高まることになる。
最近では貸切価格が急騰し公共賃貸住宅供給を拡大しなければならないという専門家たちの注文が列をなす。政府財政支出には限界があるので、住宅福祉財政の大部分は優先的に公共賃貸住宅部門に投入されなければならないだろう。
ホン・ホノ市民経済社会研究所研究委員
‘シンクタンク対面’は韓国社会の課題に対する政策代案を悩む研究機関らの積極的な参加で作られます。多様な政策懸案に対する機関の研究成果を原稿用紙10枚分量の簡潔な文にして送って下さい。他の頭脳集団が出した提案や資料に対する問題提起と代案提示でも結構です。問い合わせと原稿はハンギョレ経済研究所(heri@hani.co.kr)に送って下さい。
原文: https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/444295.html 訳J.S