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[ホン・セファ コラム] 天安艦の真実と‘北韓 主敵論’

原文入力:2010-06-20午後06:56:39(1760字)

ホン・セファ記者

←ホン・セファ企画委員

"論理で駄目なら人身を攻撃せよ" 古代ローマ時代の学者であり政治家のキケロが残した反語法修辞だ。国連安全保障理事会理事国に‘天安艦 イシューリポート’を送った参与連帯に向かって "どこの国の人か?" という反応を示したチョン・ウンチャン総理に相応しい言葉だ。一国の総理ならば天安艦のような国家的事件が発生した時、すべての真実を明らかにする権限と責任を持っており、正常国家の総理ならば当然そうしてこそ当然だ。しかし彼は参与連帯が書簡で指摘した調査結果の8ヶの疑問点と6ヶの問題点に関し、論理で反論する代わりに人身を攻撃する側を選んだ。彼自身、彼が仕える大統領、彼と仲間の守旧言論社主たちの一人でも兵役義務を済ませていたならば、彼の発言も少しは恥知らずを免じられただろうか?

天安艦事件は発生から調査結果の発表まですべて疑問だらけだ。だから疑問を提起しているのは参与連帯ばかりではなく、"0.001%の説得にもならない" という東洋学者キム・ヨンオク博士の話に共感する社会構成員が一人や二人でない。私もまた同じだ。<ハンギョレ21>最近号で、米国バージニア大物理学科イ・スンホン教授は「天安艦民軍合同調査団が出した吸着物質は爆発の結果とは見られない」「砂と塩しかない」と証言し、魚雷爆発の可能性を否定した。それでも真実を明らかにしようとする摸索と行動は消え政治工学と魔女狩りだけが乱舞する。韓国のいわゆる国の品格の水準がその程度に留まっているということだ。

参与連帯は「天安艦事件の徹底した調査と平和的解決」を要求しただけだ。しかし右翼団体らと守旧言論らの魔女狩りの標的となっている。今一度、プリモ レビーの話を再確認するのは気が重い。"怪物はいるだろう。しかしその数は多くなくそれほど危険ではない。実際に危険なのは疑問を抱かずに無条件に信じて行動する平凡な機械的人間たちだ。"

李明博政権後期に入り、極右反共主義と両極端的冷戦論理が猛威を振るい、国家保安法が今一度 大手を振って歩きだすのではないかと憂慮する人は私だけだろうか。すでに参与連帯だけでなく疑問を抱くすべての人に‘利敵行為’、‘売国奴’のレッテルを貼り、政治検察を今一度動員する態勢だ。特に‘北韓主敵論’を一層強化している。天安艦事件を通じてあらわれた政府と軍の総体的無能に対する批判を避けようとするものであり、6・2地方選挙で審判を受けた李明博政権の危機意識が彼らの無能と結合し、過去の安易な統治方式に執着させかねない。

多くの人々が嘆くとおり南北関係は20余年前に戻った。海洋と大陸に同時に出会う半島の地政学的位相において、大陸勢力と海洋勢力の分割線として分断を固着させる最悪の理論の一つである‘北韓主敵論’は事実上、韓国が交戦権を持っていないために具体性がない。ところが天安艦事件を契機に李明博政権と守旧勢力は‘北韓主敵論’を強化しつつ米国が持っている戦時作戦権還収時期をさらに延期することを主張する。‘北韓主敵論’は戦時作戦権を還収した時こそその具体性があるにも関わらず‘北韓主敵論’を強化する一方で戦時作戦権還収の延期を主張する矛盾が何を物語るのか、私たちは正確に識別しなければならない。それが北韓を中国大陸に押しやり北韓の中国従属を深化させるだけでなく、内部へ向けられた刃として作用するという点に注目しなければならないということだ。単に疑問を抱き真実を要求することだけで簡単に利敵行為に追い詰めることができる背景が他のところにある訳ではないのだ。

だからこそ、より一層天安艦の真実は明らかにしなければならない。真実は自ら語るというが、時には長い時間を待たなければならない。皆が真実探究に出なければならないが、チョン・ウンチャン総理に学者的良心に最後の訴えをしてみることは無望な期待だろうか。

ホン・セファ企画委員 hongsh@hani.co.kr

原文: https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/426538.html 訳J.S