原文入力:2010-03-28午後07:35:52(1666字)
←カン・ジュンマン全北大新聞放送学科教授
今日も35人が自殺する。最近の保健福祉家族部統計によればそうだ。韓国の自殺死亡率は経済協力開発機構(OECD) 30ヶ会員国中で1位だという。反面、結婚と出産は大幅に減っている。多くの人々によって結婚と出産はますます‘狂ったマネ’になりつつある。これをどのように見なければならないのだろうか? 政府の対策が至急必要なのか? どんな水準の対策が可能なのか? ひょっとして韓国の発展戦略、いや韓国社会を動かす根本原理の効用性が何らか限界に至ったということを示す信号ではないだろうか?
韓国の人口密度は1平方km当たり474人で世界3位だが、山岳地帯を除き平地中心に計算すれば世界1位だ。ソウルの人口密度は1万6181人で世界最高水準だ。他の都市もソウル モデルを踏襲している。こういう高密度社会は激しい競争を呼び起こす‘速度戦争’に駆け上がることになっている。
韓国は速度戦争の先端を走る国だ。世界で最も速い圧縮成長の神話を作った国ではないか。圧縮成長は‘超一極集中構造’とそれにともなう‘渦巻き型競争体制’下で成り立った。すべての行動は‘速く速く’と‘一糸不乱’の支配を受けた。‘多様性’よりは‘同質性’が支配エリートを構成する原理となった。‘民主的合意’の経験は短く‘所信と決断’の歴史は長い。
韓国社会の弊害に挙げられ注目を集める縁故主義もきちんと調べれば‘速度戦争’の産物だ。縁故主義は以心伝心という速度を崇拝するイデオロギーだ。学閥主義も同じだ。学閥主義は複雑な人間評価の過程を、学閥という‘看板’一つに変えることにより時間を減らそうと考える速度戦争だ。
韓国の近現代史は不確実性の桎梏で綴られた時代だったために、韓国人は本能的に不確実性に対する恐怖感を持っている。そのために不確実性を除去することを助ける宗教,位階秩序,身分証文化が発達した。看板は不確実性除去の表示なので、騒々しいほど好ましい。速度戦争の裏面には、まさにこの不確実性に対する恐怖が位置している。異なるものに対する恐怖は同質性を求めようとする試みにつながる。またこれが同じ看板を持つ人々の結束力を高めてくれるので、どうせなら良い看板を持たなければならない決定的な理由となる。
良い看板を持つ人々が感じる看板の優先的効用は安堵感だ。自己の確認だ。騒々しい看板を掲げた商人たちも同じ事を言う。看板は自己の存在証明だ。認定闘争だ。商売がうまくいけば良いが、そうでなくとも "私はここにいる" と知らせることを疎かにはできない。目と耳は遊ぼうとしない。いつでもどこでも自己の感情発散を自由に行う韓国人の大きな声が低くなることがあるだろうか? それが低くならないのに、視覚的な看板文化だけが単独で変わることはできそうにない。
選挙時期がくれば不法・違法・便法が乱舞し‘選挙亡国論’まで提起されるが、選挙のために国が栄えることもなく滅びることもない。選挙は候補らの自己存在証明のためのイベントであるに過ぎないからだ。すでに韓国のすべてのシステムが速度戦争中心に組まれている上に‘甲’と‘乙’の関係で代弁される権力至上主義構造が健在なためでもある。
この間、速度戦争の最大論拠だった‘国際競争力’は、自殺増加と結婚・出産減少の前で説得力を失っている。今や韓国人を窒息させる速度戦争の構造について語らなければならない時だ。だが理念の言語で接近すれば失敗するのが常だ。速度戦争は理念より更に大きく根本的な問題であるためだ。それを理念で狭小化させれば、問題の本質がわい曲され隠蔽される。問題は私たち皆が中毒している速度にある。
カン・ジュンマン全北(チョンブク)大新聞放送学科教授