原文入力:2012/04/13 00:23(2853字)
朴露子(パク・ノジャ、Vladimir Tikhonov) ノルウェー、オスロ国立大教授・韓国学
昨日の総選挙を、遠くから惨憺たる心境で眺めていました。死票心理という少なからぬ負担、メディアからのほとんど絶対的な無視などといった多くの悪條件にもかかわらず、それでも「階級政治」への一心で進歩新党のために勇気を出して投票してくださった242,995人の方々に深く感謝するとともに、一面においては悲しい気持ちを抑え切れませんでした。進歩新党の労働者を優先する階級政治が大衆化できなかったことも残念ですが、極右主義者たちの圧勝、かつての民主労働党の得票結果よりわずかに増えた統合進歩党のやや残念な「成績」など、多くの面で私たち皆が歩んでいる「方向」に対する懸念が先走ります。わが進歩新党の「階級政治」のみがしくじったわけではないからです。1960~70年代の超高度成長と重商主義的な国家主導の資本主義に対する郷愁に直面し、自由主義的な右派も大敗を喫してしまったし、急進的な自由主義政党といえる統合進歩党も極めて制限的で周辺的な「隙間」のみを確保するに止まってしまいました。敗れたのは私たちだけではなく、大韓民国が少しでも変わったらと思ったすべての人々が各々それなりに敗北し、不振を避けられませんでした。一歩間違えればヒトラーや明治維新時代の藩閥政客たちを崇拜した独裁者の「姫様」が大統領になってもおかしくない私たちの昨今の状況が、いかに形作られたのか、私たちは果してどこに向かっているのか、一度冷静に考えてみましょう。
ほとんど自明なことですが、都会の富裕層と特定地方の(階級的な認識からは程遠い)「地域民」、中小企業人などをつなぐ巨大な極右集団としてのセヌリ党は、暗黙的にその仕組みがかなり似ている日本の自民党をベンチマーキングしています。次に、民主統合党の志向(事実上の新自由主義的路線の保持と福祉の部分的な拡充に関するレトリック、事実上のアメリカ帝国の覇権に対する承認と対朝政策の緩和に関する約束等々)と構成(韓国労総などの保守的な労働界の一角、都市中間階層、自由主義的な知識人と市民団体、特定地域の「地域民」)は、多くの面において名前さえも同じ日本の民主党(1998年結党)に似ているところがあります。つまり、日本では既に10余年前に定着した「二大保守政党」中心の保守的な両党制が、たった今国内で次第に根付いているのではないか、と思います。このシステムの原産地は左派政治の荒れ地として著名な(?)アメリカですが、アメリカでも日本でもこのシステムの枠内に労働界の主流が自由主義的な保守政党(日米の民主党)に取り込まれることにより、階級政治の動力がほとんど基本的に去勢されてしまいました。今や私たちも同じような道を辿っているのではないか、心配になります。
もちろん、日本には2009年の総選挙で全国的に7%を得票した共産党があるように、私たちにも今回約10%の政党得票率を獲得した統合進歩党があります。敢えて基本的な立場からすれば、日米同盟の破棄と日本の永世中立などを主張し長期的に自衛隊を解散させようとしている日本共産党に比べ、統合進歩党はあまりにも穏健すぎるほど穏健な政治組職です。また、長期にわたる闘争歴を誇る比較的多くの真性党員たちを全国津々浦々に確保し地域政治に活発に働きかけてきた共産党に比べれば、左翼ナショナリストたちと一部のかつての労働界の指導者、そして自由主義者たちの政治工学的な結合で作られた統合進歩党は、組職としては遥かに生命力が弱いかもしれません。背景と考え方の異なる人々同士の「一夜」、一回きりの選挙のために簡単に一緒になったように、また後には簡単に別れることもありうるからです。しかし、このような大きな違いにもかかわらず、実質的な政治においては双方の立場は多くの面で比較が可能です。両方とも社民主義に近い穏健左派思想と民族主義的な情緒(日本共産党は「北方領土」などの領土問題ではかなりの強硬派です)、そして一般的な自由主義的志向を交ぜ合わせた、言わば「盛り合わせ」で政治市場に出したわけです。保守化した日本社会の中で共産党が今まで機能してきたことを考えれば、かなり自由主義化した穏健左派は自分なりの「隙間」を確保してかなり長く生き延びることもありえます。しかし、最早1960年代末の「準革命的な雰囲気」で露呈された日本共産党の相対的な保守性などから見ても分かるように、そんな「隙間的な左派」はいかなる急進的な闘争もうまく導くことなどできないのです。その「隙間」に安住してしまったからです。
私たちに日本のような「二大保守政党+自由主義的な穏健左派政党」という構造が与えられた理由は何でしょうか。今ひどい風邪でほとんどこれ以上書くことが「身体的に」できないので、その理由に関する詳論については追々書くことにしたいと思いますが、とにかく簡単にいえば、これは日韓の資本主義の「相対的な優位」と関わっています。日本でも韓国でも、1990年代以降の新自由主義の導入によって格差が広がり、特に新興貧民層、準貧民層といえる非正規労働者層が巨大化したものの、日本や韓国の非正規労働者は同様の地域的な分業構造に取り込まれている中国の労働者に比べれば比較的高い生活水準を維持しており、メディアなどを通じて日韓の「比較的優位」を常に見せ付けられています。敢えてメディアに触れるまでもなく、それは日本や韓国へやってくるアジアの移民労働者たちを肉眼で見ても分かることです。そうすることにより、実際は次第にその生活が相対的に悪化している日韓の被抑圧大衆は日韓の資本主義の「成功神話」を信じるようになります。従来の保守化した労組などが非正規労働者たちを組織化することすらできない状況では、未組織の状態でただ生存をはかるのに必死になっている非正規労働者は、現状を悲観しつつも、いっそ「過去」へとその視線を向けやすくなります。簡単に正社員になり、毎年賃金が少しずつ上がった過去、 超高度成長時代、朴正煕時代……。そして「維新の姫様」をまもなく大統領として選ぶかもしれない無産者群が形成されていきます。いかなる前衛組職も無産者たちに未来への進歩的で社会主義志向のビジョンを示すことができなければ、無産者たちの視線は過去に向けられます。これは階級闘争の一種の法則ですが、この法則こそが現状から再確認されてしまいます。
「身体的」な理由で一応ここでまでにします。改めて、未来に向けて歩もうとしている少数政党に投票していただき、「階級政治」のビジョンにご声援くださった方々に心より感謝いたします。
原文: 訳J.S