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「不動産政治不敗」示したソウル市長選挙

登録:2026-06-11 02:54 修正:2026-06-13 07:46
ソウル市のオ・セフン市長が4日、ソウル市役所のロビーで花束を受け取り、喜んでいる=写真共同取材//ハンギョレ新聞社

 ソウル市長選挙は終わったが、その結果が残した問いは消えていない。今回の選挙を単に一人の候補の勝利とその他の候補の敗北としてのみ読み解こうというのは、一面的な解釈だ。地方選挙の結果から政界が読み取るべきシグナルとは、どのようなものだろうか。政権与党の民主党の立場から、そのシグナルを解釈してみよう。与党は京畿道と仁川市では相変わらず強かった。韓国の「スイングボーター(揺れる有権者)地域」の忠清道地域の広域自治体の首長を独占し、さらには厳しそうにみえた釜山(プサン)と蔚山(ウルサン)の市長選でも勝利した。さらには、人口と産業構造から保守色が極めて濃い大邱(テグ)や慶尚南道でも、惜敗したものの、かつてよりは多くの票を得た。

 では、笑うべきだろうか。しかし、これらすべての結果の感想を覆す決定的な事実が1つある。まさに、ソウル市長選挙での敗北だ。今回のソウル市長選は、弾劾後に行われた大統領選挙の興奮と熱気に一時隠れていた民主党の2つの弱点を、改めてさらけ出した。1つは20~30代の男性を軸とした世代間の亀裂であり、もう1つはソウルのマンションをめぐる不動産政治の復活だ。

■20~30代男性層が主導する世代間の亀裂

 まず、20~30代男性の問題をみてみよう。彼らが保守野党「国民の力」のオ・セフン候補に好意的であることそのものは、彼らの以前の投票傾向に照らせばそれほど驚くべきことではない。すでに2022年の大統領選挙で20代男性は自分の政治的好みを明確にしており、選挙結果を左右する集団として認められている。今回の結果がいっそうはっきりと示したのは、先の大統領選でイ・ジュンソク候補に熱狂し、最終的に尹錫悦(ユン・ソクヨル)を支持した20代男性の流れは、特定のコホートに内在する一時的な現象ではなく、若年男性全般の世代的特性であるということだ。このような特性は2025年の大統領選挙ではあまり目立たなかったが、今回のソウル市長選挙では顕在化した。これは、今回の地方選挙に出馬した改革新党のソウル市長候補が、前回の大統領選挙でのイ・ジュンソク候補のように20代の票を分散させうるような候補ではなかったことに起因している。実際に、昨年の大統領選挙でソウルでは李在明(イ・ジェミョン)候補が支持率で1位だったものの、彼の得票率はキム・ムンス候補とイ・ジュンソク候補の得票率の合計よりも低かった。保守と進歩が総結集して「真剣勝負」を繰り広げた2022年の大統領選でも、ソウルでの李在明候補の得票率は尹錫悦候補よりも低かった。むしろ、共に民主党のチョン・ウォノ候補の今回の得票率は、過去2回の大統領選での李在明候補のそれより高かった。彼が敗北したのは、彼の得票率が改革新党の候補とオ・セフン候補の得票率の合計に満たなかったからだ(正義党と民主党を合算しても結果は変わらない)。

 直近の4回の選挙のうち3回の選挙で、民主党候補の得票率は45~48%にとどまっており、保守と第三勢力の票が合流した瞬間に毎度過半数の壁に阻まれているという共通点がある。したがって、今のように「保守」対「進歩」の拮抗(きっこう)構図が続き、ソウルの年齢構造が現在のパターンを保つ限り、民主党のソウル市長奪還は容易ではない(逆に国民の力の立場からみると、保守の単一候補を立てている限り、ソウルでの選挙は有利にみえる)。ソウルには大学や大企業の雇用が集中しているため、有権者に占める20代の割合が高まり続けていることを考慮すると、今後のソウルにおける民主党の劣勢はむしろ構造的なものだと考えた方がよい。

 年齢構造が政治的意思決定に及ぼす影響は非常に長期的であるため、一度方向が決まってしまうと並大抵のことでは変わらない。これこそ、政治学者ロナルド・イングルハート(Ronald Inglehart)の語る「静かなる革命」概念の要だ。彼の論旨は、人は幼少期、青年期、社会初年期に基本的な価値観と規範を確立し、いったん固まってしまった価値観はその後ほとんど変わらないというものだ。したがって、社会全体の価値観の変化は、既存の世代が新たな価値観に説得された結果ではなく、年老いた世代がいなくなり、その空白を若い世代が埋めるという漸進的な変化の産物だというものだ。長江の上流の水が下流の水を押し流すのであって、上流の水と下流の水が混ざるわけではないということだ。ハーバード大学ケネディスクール教授で、晩年のイングルハートと共同研究をおこなったピッパ・ノリス(Pippa Norris)はまさに、この単純だがしばしば見過ごされる事実――政治的見解をはじめとする価値観の変化は「説得」ではなく「世代交代」によって実現し、一度定着した世代効果は長続きする――を強調しつつ、この過程をヘビに飲み込まれたネズミがヘビの体内をゆっくりと通り過ぎる様子(rat in a python)に例えている。また、このような理論的フレームは、政党が20代男女の有権者にアプローチする方法も示唆する。世代間の意見の相違は、その起源が経済的格差であっても、その持続は「自分たちの集団は他集団に比べて体制から不公正な扱いを受けている」という集団的アイデンティティの問題である可能性があるからだ。物質的な補償だけでは、体制に対する不信や「傷つけられた公正さと相対的な剥奪感」という心理的な傷を癒すには限界があることは明らかだ。それをどう扱うべきか、答は明確ではない。

■ソウル全域が「政治的江南化」の可能性

 2つ目の亀裂は不動産だ。チョン・ウォノ候補はソウルの多くの区で辛勝した。しかし、オ・セフン候補は江南(カンナム)3区や龍山(ヨンサン)などの「漢江ベルト」で圧勝し、それが選挙結果を分けた。これらの地域の結集は「マンション政治」の圧縮版だ。建て替えや再開発に対する期待、保有税の負担、融資規制に対する不満、住宅価格上昇の経験が入り混じり、ひとつの方向に非常に強く表出したかたちだ。ソウルのマンション価格の上昇と投票傾向の関係は、様々なデータによって認められる。

 行政洞単位でソウルの平均住宅公示価格と民主党、国民の力の得票率の差との関係を調査したロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のシン・スヒョン氏の分析によると、平均住宅公示価格が高い行政洞ほど、民主党の得票率は低く、国民の力の得票率は高かった。具体的には、行政洞の平均公示価格が1億ウォン上昇するごとに、民主党と国民の力の得票率が約3ポイント開く傾向が見られた。注目すべきは、この傾向が江南3区のような地域だけでなく、公示価格9億ウォン以下の地域でも一貫して見られるということだ(ただし、価格と票差の関係の説得力は落ちる)。これは、今後ソウルのマンションの「一強現象」が加速すればするほど、ソウル全域が「政治的江南」化していく可能性があることを意味する。

 まさにこの点から、今回の税制改革の過程で議論されるであろう総合不動産税(総不税)改革という難題が飛び出してくる。よく一般の人々は、総不税の対象となる階層は60代以上の高齢者に限られると認識しているが、現実はそうではない。朴槿恵(パク・クネ)政権発足時に5億2000万ウォン(約5500万円)だったソウルのマンションの平均価格は、現在では15億7000万ウォン(約1億6600万円)に達する。その結果、総不税の課税対象の半数ほどが40~50代だ。とどまることを知らない住宅価格の上昇は、まだ総不税の対象ではない40~50代の中産階級層、長期の住宅1軒保有者、共働きの高所得世帯もその影響から自由ではないと認識させる。

■総不税のジレンマとソウル市長選の意味

 総不税は次の2つの側面から、政策手段としては限界のある制度だ。住宅価格は税金よりも「銀行の利子」や「貸付限度」によっぽど敏感に反応する。しかし総不税は住宅価格の上下動のスピードにリアルタイムで追いつけないため、住宅市場を安定化させる手段としては限界がはっきりしている。実際に、総不税が価格上昇の抑制に効果があることを示す実証的根拠は限られている。だとすれば、残るは富裕税としての意義だが、これも現在の課税方式は資産価値ではなく「住宅数」によって課税基準が変わるため、公平性を達成するには限界がある。このように、政策効果は立証されていないにもかかわらず負担のかかる層は拡大しており、かといって現状を維持しようとすると市場の期待や中心支持層の要求と衝突する。総不税による解決が難しい理由もここにある。李在明大統領と民主党がこの難題をどのように突破するのかが注目される理由でもある。

 政治は構造のみで決まるわけではない。候補者の魅力、選挙構図、政権審判論、突発的な変数は、いつでも結果を揺るがしうる。しかし、与野党の支持率が超接近しているため、構造的な偏りを念頭に置かざるを得ない。ソウルはすでに次の選挙の問題用紙を広げて見せている。この難題に各政治勢力がどのように対応し、突破するかが、再来年の総選挙、そして次の大統領選挙の行方を決定づけるだろう。人口と資産の変動性、雇用と住宅に対する不安が凝縮され、その亀裂が最初に投票で爆発する都市。そのような面で、ソウルは単なる韓国政治の事後的反映体ではない。むしろその未来が最初に到来する場所だ。したがって今回のソウル市長選の結果は、今後の韓国政治を示す「すでにやって来た未来」なのだ。

チェ・ハンス|慶北大学教授(経済学) (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1262741.html韓国語原文入力:2026-06-10 05:00
訳D.K

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