北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が「核保有国としての地位を認めること」を前提に朝米対話に臨む考えを示したことについて、ホワイトハウスは「トランプ大統領は特別な前提条件なしに金正恩と対話する意思がある」と明らかにした。トランプ大統領の3月末~4月初めの訪中を前に、北朝鮮と米国いずれもが対面を望んでいるというシグナルを発信している格好だ。
金委員長(朝鮮労働党総書記)は第9回党大会での演説で、米国を「主権国家に対して侵略と武力行使を繰り返す極めつけのならず者」と呼びつつも、「米国と良好な関係を築けない理由はない」と述べ、対話のシグナルを発信した。もちろん「責任ある核保有国、核武力の発展の高度化」を認めよという条件付きでだ。
ホワイトハウスの関係者は26日(現地時間)、ハンギョレの問い合わせに対し、「トランプ大統領は1期目に北朝鮮の指導者金正恩と3度の歴史的な首脳会談を行い、朝鮮半島を安定させた」とし、「トランプ大統領は依然としていかなる前提条件もつけることなしに金正恩との対話に対して開かれている」と述べた。ただし「米国の対北朝鮮政策に変更はない」と付け加えて、北朝鮮の「核保有国としての地位の承認」要求を受け入れる方向に転じたわけではないことを強調した。
トランプ大統領は3月31日から4月2日まで中国を訪問する予定となっている。トランプ大統領と金委員長はいずれも、2019年2月のベトナムのハノイでの会談と、同年6月の板門店(パンムンジョム)会談以来、7年ぶりに「再会」したいという意志を表明しているが、「非核化」という前提条件については意見が真っ向から対立している。核保有国の地位の承認が交渉の出発点だと北朝鮮が主張しても、米国にとってそれを受け入れるのは容易ではないとの見方が優勢だ。トランプ大統領の訪中は1カ月後に迫っているが、朝米の実務陣が接触している兆候は見られない。
米国を訪問中の韓国政府の高官はこの日、ワシントンで韓国の特派員団に対し、「(朝米の)実務接触のような新しいニュースはない」、「米国は『対話にオープン』な立場を維持してはいるものの、そのために『何かやらなければ』というレベルにまでは至っていないようだ」と述べた。
外交筋は、トランプ大統領の訪中を機に朝米首脳同士のコミュニケーションが模索される可能性に注目しているが、まだ米国政府内でそれに関する具体的な準備が進んでいるような動向は確認されていないと説明する。
まずトランプ大統領は、4月1日ごろに北京で行われる中国の習近平国家主席との首脳会談で成果をあげることに外交力を集中させている。またイランやウクライナ問題も、依然としてトランプ大統領にとって複雑な課題となっている。
このような状況にあって、11月に中間選挙を控えるトランプ大統領にとってあまり助けにならない金委員長との会談に米国が外交力を集中させ、ましてや北朝鮮を核保有国と認めてまで会談を推進する可能性は高くない、との分析が有力だ。
もちろん、トランプ大統領が世界の注目を集めるイベントとして金委員長との会談に関心を示す可能性はある。しかし中国の立場からみると、習主席とトランプ大統領の交渉が世界の注目を集めるべき状況に北朝鮮を引き込もうとする可能性は高くない。
韓国はこのような情勢を冷静に読み取りつつ、朝米対話に焦って期待を抱きすぎることなく、長期的な役割を築いていくべきだ、と専門家たちは強調する。
ソウル大学統一平和研究院のチャン・ヨンソク客員研究員は、「イベントに長けたトランプ大統領が『中国に来たついでに』金正恩と会うことに関心を向ける可能性はあるが、北朝鮮の核問題の解決に向けた準備にエネルギーを注ぐことはないだろう」とし、「金正恩も自らの地位と自信を示すためにトランプに会おうとする可能性はあるが、写真を撮るイベント以上の朝米交渉は不可能な局面」だと述べた。
慶南大学極東問題研究所のイ・ビョンチョル教授も「中間選挙を控えたトランプにとっては金正恩と会う要因も強くなく、イベント的に会ったとしても非核化に向かう意味ある議論をする可能性はない」とし、「金正恩は米国に、北朝鮮の核保有を認め、制裁を解除するよう要求しているが、米国最高裁の関税判決からもわかるように、トランプが北朝鮮の核を認めようとしても、制裁を解除するには米国議会の同意が必要だ」と指摘した。
イ教授は「金正恩は韓国を『米国の従属国家』と判断し、トランプとの直接取引で状況を変えれば韓国もついてくると考えている」として、「李在明(イ・ジェミョン)政権は、米国に独自の発言権を持っており、トランプが選ぶ北朝鮮についての選択肢に韓国の発言権が反映されざるを得ないことを巧妙に示すことで、金正恩の計算を変えなければならない」と強調した。