米国による関税引き上げの脅威をかわすために訪米した韓国のキム・ジョングァン産業通商部長官が、ハワード・ラトニック商務長官に二度会って説得したが、目に見える成果なしに帰国した。両者は追加の協議を約束したが、ドナルド・トランプ大統領側が実際に関税引き上げを強行する可能性は依然としてあり、不確実性は続いている。
キム長官は29~30日(現地時間)、ワシントンでラトニック長官と会談し、31日に仁川空港を通じて帰国した。キム長官は空港で記者たちに対し、トランプ大統領が先月26日、韓国国会の対米投資特別法案処理の後れを理由に韓国商品に対する関税率を15%から25%に引き上げると警告したことについて「相互間の理解は非常に深まった」として「不必要な誤解は解消されたと考える」と明らかにした。
また「(韓国政府が)関税協定に対して履行しないとか遅らせる意図は全くないという点について十分に話した」とし、年末・年初に予算案処理と企画予算処長官候補者に対する聴聞会があり、韓国国会が特別法案を議論する余裕がなかった事情を説明したと伝えた。続けて「今後は特別法案が非常にスピーディーに進行され、米国側と理解を共にするという話をした」と述べた。これは、3500億ドル(約54兆円)の対米投資を裏付ける法案処理をわざと遅らせたわけではないという韓国政府の説明を、米国側がある程度は納得したという意味と解釈される。
しかし、「友好的解決を求める」ために訪米したキム長官は、関税引き上げ計画に対する撤回や留保の約束を受けることはできなかった。キム長官は「韓国の進展状況について、いま特別法案が国会で係留し続けているため、そのような部分に対して非常に残念がる部分があった」とし、米国側が韓国の対米投資関連法案の処理の遅れに強い不満を表現したことを示唆した。
続いてキム長官は、実際に米国は関税引き上げを準備しているのかという質問には「関税引き上げ措置はすでに始まっている」とし「官報掲載を準備し、制裁を準備している」と話した。続いて「互いに内部討論を経て、もう一度近いうちに韓国で(ラトニック長官と)テレビ会議を行う予定」と明らかにした。彼はオンラインプラットフォーム法や、ネット通販大手「クーパン」の個人情報流出事件が影響を及ぼすのではないかという質問には「(米国との協議で)一度も出てこなかったイシュー」だとして「それが関税に重要な影響を及ぼすほどではないと判断しているようだ」と答えた。
トランプ政権の要人たちの発言とキム長官の説明を総合すると、米国側は関税引き上げという圧迫カードはちらつかせたまま、速やかな法案通過と投資の執行を要求しているとみられる。したがってカギとなるのは、昨年11月末に国会に提出された「韓米戦略的投資管理のための特別法案」を早急に可決できるかどうかだ。これと関連してラトニック長官は28日、サムスン電子がワシントン国立アジア芸術博物館で開催した「イ・ゴンヒ・コレクション」の祝辞でも「韓国国会が貿易合意履行のための措置を取ることを期待する」と述べた。トランプ大統領は29日、「関税は非常に急だが、実際さらに急激に引き上げることもありうる」とし、韓国を含む貿易相手国を再び脅すような発言をした。
韓国政府は、特別法案が今月中に国会を通過することを期待するという立場だ。共に民主党のハン・ジョンエ政策委員会議長は1日、記者懇談会で「特別法案を早ければ今月末までに処理する」と明らかにした。ハン議長は「(国会財政経済企画委員会で)ひとまず上程して小委に回付すれば、財経委で対米投資特別法の議論が十分に可能になる」とし「2月末から3月初めに(本会議の処理は)可能ではないか。できるかぎりその日程を守れるよう努力する」と述べた。
ハン議長は、米国が関税引き上げの脅威を引っ込めなかったことについては、「(米国政府が)不必要な摩擦を作っているのではないかという思いはある」とし、「ある日突然、法案が早く(処理)されなかったために関税を再び引き上げるという方式の交渉が続くなら、韓米間で結んだ了解覚書(MOU)、ジョイント・ファクトシートなどの内容が『今後も守られるのか』という心配を抱かざるをえない。きわめて懸念が大きい」と述べた。
一方、先月30日に米国に到着した韓国のヨ・ハング産業部通商交渉本部長も、米政府と議会などを相手に関税および非関税障壁問題の協議を進めている。